43 気づいた時には…同行者。
無限回廊の床に転がっている男に近づいた僕は、その肩に触れて声をかけてみる。
「大丈夫ですか?」
「うっ…ううんっ…」
男は体を揺らしながら体制を立て直し、ゆっくりと床に座る。
「うっ、酷い目あったわ」
「何があったんですか?!」
男が僕の方にふりかえり言う。
「見ての通りよ、私の担当する世界がもの凄い速さで滅んだの…部屋から逃げ出す時間も無かったわ!瞬時に部屋が消えて私が自動的に吐き出されたわけ!」
「あの、あなたは管理人さん?」
僕は話の内容から相手の素性を読みとり気になったことを聞く。
「そうよ!緑が多く美しい花が咲き乱れる世界、淡いピンクの扉の管理人だったわ!折角、お気に入りの世界の担当になったのに滅んだ原因は何だったのかしら?悔しい~!」
見た感じ男の元管理人、服装はエルフの特徴的な耳に3つもピアスをしている。しかも、左右両方にしている為、合計6つ。その両腕には細い腕輪がジャラジュラとついており動くと音がする。爪は長く整えられていてネイルが塗られたように艶がある。
エルフの森感が全くない姿に色んなエルフがいるんだなと改めて思う。
きっと世界の数だけ色んなエルフがいるんだ。
「僕は、この扉に入って行く紫の妖精を見たんですけど、滅んでしまった世界に転生したんですよね?」
「ああ、あのせっかちな妖精ちゃんね。私の担当していた世界は妖精界隈では人気の世界だったから、さっさと生まれ変わって行ったわよ。それがどうしたの?」
「えっ!それなら転生して直ぐに赤ちゃんで死んじゃったという事?あまり知らない妖精だけど、少し気の毒だと思って…」
「あらあら優しいのね。でも、回廊と各世界の時間の流れが各々違うから、それはないと思うわよ」
「流れが違う?」
「そうねぇ~、転生してから短い時間で世界が消滅したけど多分、赤ちゃんじゃないわね。あの世界の時間の流れから計算すると10年ぐらいは時間が流れていたと思うから」
「10年!えっ?ここと転生先って、そんなに時間の流れが違うの?!」
「そういうこと。まあ、あのせっかち妖精さんは運が無かったようだけど、あなたは滅びそうな世界を選ばないようにね」
話が終わるとパンパンと埃を落とし男は立ち上がる。勿論、ジャラジュラとアクセサリーのすれる音と一緒に。
僕は彼のアドバイスを聞き考える。
今の話が本当ならレイブンとか、たんぽぽちゃんが生まれ変わっていたら転生先で、もう100年ぐらい過ぎていてもおかしくない。
無限回廊のことは生まれ変わると忘れてしまう仕様だけど、二人のことだからきっと人生を楽しんでいるはず。
僕だけここに取り残された感がある。
早く生まれ変わる世界を決めたい。
でも興味のある世界の扉はない。
正確にはあるんだけど…黒ずんだ滅ぶ世界の扉に生まれ変わるわけにはいかないから…。
ああ…やっと見つけた興味のある魅力的な世界が滅ぶ世界だなんて何だか滑稽だ。
「ふふ…」
口から自虐的な笑が漏れる。
そのあと僕は元管理人さんと別れ、回廊を歩きだす。行きたい世界、興味の持つ世界が本当に見つかるのかと不安に思いながら。
その足どりは重い。
たまに前から来る魂人にすれ違う。色々な色の扉を眺めたり樹海の変わらない景色を眺めながら歩く。
ジャラジュラ。
僕はふと足を止める。
何か音がしたような?
そして、また歩く。
ジャラジュラ。
「???」
また、足を止める。
あれ…後ろから誰かついてきていない?
これって、あの元管理人さんが僕の後をついてきているような気がする。
でも、ここは無限回廊だから行くか引き返すか、しかない一本道。紫妖精と同じ勘違いを僕がしちゃいけない。
たまたま方向が同じだけだ。
絶対にについて来ないでなんて言ってはいけない。
うっ、今なら、あの紫妖精が勘違いをしたのも分かる。静かな回廊だから音が響くし一度気になると凄く気になる。
そういうことって生活していると度々あるよね。たまたま人通りの少ない夜道で、方向が同じなのかずっとついてくる人がいて、あれ?ついてきてない?と思った次の瞬間に近くの家に「ただいま!」とか言って入って行くのを見て、心の中で、うわー勘違いじゃん!!!と叫ぶこととかね。
僕は後から聞こえるジャラジュラという音を聞きながらも、気にしないように気にしないようにと自分に何度も言いきかせる。
立ち止まり凄く後を振り向きたい!
心の中で、そんな葛藤をしながら回廊を歩いた。
※※※※※※※※
ひとつ気になる扉の前で僕は足を止める。
紫を帯びた濃い赤い色。赤ワインのような色の扉。
「レイブンの服の色と近いかも!」
僕は、やっと別の気になる扉を発見した。
これって少し前に進んだことになるよね?
ここにいないブロックモに心の中で問いかける。
僕が扉に向き合い思考していると、それにならうように影も近づく。
「ワインレッドの扉ね。この赤はマグマとかを表すものではないから、ドラゴンや精霊が住みそうな高い山はないわよ」
「…………」
あれ?
この人、確実に僕について来ているよね。もうこれは間違いないよね。勘違いじゃないよね。だって扉の解説を始めちゃったし。
「はぁ~っ」
「あら、お疲れなの…生まれ変わる世界を探すのって大変よね?」
この元管理人のエルフは聞いてもいないのにペラペラと喋り続ける。
「私は管理人が仕事でしょう?ポイントを稼ぐには…管理人がいない部屋の扉を探さないといけないのよ!困ったわ~何処かに良い扉がないかしら」
彼?彼女?は全然、困って無さそうに見えるけど気のせいかな。
「私はメデルノ・ガダイ・スキーよ!独りで扉を探してると退屈でしょう?」
「えっそんなことは…」
僕は押しの強いメデルノ・ガダイ・スキーさんにながされる。
「これから短い間だけど、よろしくね」
「はぁ」
この魂人、グイグイくるタイプだ。しかもスキー族だね。
僕は気がついたら、メデルノ・ガダイ・スキーさんと一緒に行動することになっていた。




