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39 スタート地点の壱の門。

 一方その頃、無限回廊の壱の門が鬼人族の門番2人によりギィ~という鈍い音を立てて開け放たれた。


 中から魂獣と魂虫達がワラワラと出てくる。

 その後を魂人が数人ゆっくりと門から出てくる。


 獣と虫は森の方へ、人の殆どが左右に別れ門をくぐって、弐の門(左)か参の門(右)を通り回廊に進んで行く。


 その中で2人の魂人が話をしながら、のんびりと門の前で立ち止まる。

 すると、大きな門は音を立てて閉まった。



「ここがあの世というものか…」


 2つの魂人のうち体を鎧で固められた、いかにも武将ですといった感じの魂人が呟く。


「えっ、おっさん、魂の記憶なしー?そんなんじゃ!この森で他の魂に、あっという間に食われちまうね!」


 武将姿の魂人に、金髪で猿系のしっぽを持つ女の魂人が話かける。


「魂の記憶、それがないと森に入れぬのか!」


「はぁ~、そういう訳じゃないけど、それがないとねぇ~右も左も分からない赤子同然だよ。ステータスとか鑑定とかのスキルは?持っていたら心の中で念じればわかるわよ」


「ふむ、何も分からぬ」


 武将は苦い顔をして答えた。


「おっさん、意外と若い魂だったんだね。それじゃ、安全の為にあっちの弐の門か参の門を通って回廊に行き、さっさと適当な世界に生まれ変わるか!最低でもステータスのスキルはとっとけば…おっと!早速、鴨が葱を背負ってやってきた!うわ~、地からはヤバそうな魂獣と空からは複数の魂虫に囲まれてるじゃない!!これじゃー私の獲物のとり分は残らないわ」


 どうやら金髪女は門の前で獲物を物色していたようだ。


 武将は彼女の視線の先、森の入口に向け目を細める。

 そこには背に針の山が生えたライオンが小柄な人を獲物と定め狙いをつけていた。

 よく見るとその人の手にはキツネがぶら下がっている。

 空中には無数の得たいの知れない大きな虫がハイエナのように獲物のおこぼれがもらえないかと飛んでいた。


「あの獣と虫たちは哀れだな…相手の力を見誤っている」


 武将はそれを見て金髪女とは違う見解を言った。


「そんな分けないでしょ!おっさん、目が悪いのね」


「見ていればわかる」


 彼女は武将の意見に納得がいかないまま、魂戦の様子を門のセーフティゾーン内で、じっと見ていることにした。


 観戦者がいることに気がつくこともなく、魂戦当事者たちの戦いは開始された。


 背に針の生えたライオンは唸り声と共に魂人に飛びかかかる。その先は獲物の頭、大口を開けて牙をむき出しにし、かぶりつき引きちぎらんと飛びかかる。


 がぁぁぁーー!


 がぁ?

 ぎゃぁーうぁんっ!


 ボッ、メラメラメラメラ、じゅじゅうううぅーーーーパリバリパリン。


 どこから放たれたのか?

 謎な青い炎が大口を開けた獣をこんがりと丸焼きにし身動きできなくさせていた。すると今度は、その獣の体が突然、氷に包まれパリパリと音を立てた。

 それに追従するように、無数の羽虫も一瞬に燃え上がり落ちながら凍りついた。


 最後に全部が淡い光を放ち魂石と化す。



「なっ、何あれ?!」


「お前が言った通り森は恐ろしい所だな、あのような者がいるとは…助言に従い、スキルとやらを早々に取るべきか?ふむ、あの者がこっちに来る、二人で相手をしても勝てんぞ、逃げなくてもいいのか?」


 金髪女は少し狼狽したあと我に返る。

 その顔は青く冷や汗が流れていた。


「いいや!門の前の石畳がある部分、今、私達がいる場所は戦闘不可の安全地帯。逃げるより、ここの方が安全!不安なら石畳状から外れないように無限回廊に入ればいいけど!あんなヤバそうな奴とは、かかわり合いたくない。おっさん、私は先に回廊に行かせてもらうよ!!」


 彼女はそう言うと石畳の上を滑るように走り去ってしまう。

 その姿は身軽な獣そのものだった。


「さて、俺はどうしたものか…」



 しばらくして、戦闘を終えた者が門にたどり着く。

 強者は一度立ち止まり、手に持っていたキツネをどうするか迷った末に優しく地面に置いていた。

 すると獣は一目散に森の中へと消えていく。



「こんにちは、ずっと門の前に立ったままで、どうかしたんですか?」


 先ほどの恐ろしい戦いをした者とは思えないような、柔らかい口調!この強者は意外と好戦的ではないのかもしれない。情報をくれそうな軽薄そうな女も今はいない、俺は新たな情報提供者に話しかける。


「すまぬが俺は魂の記憶スキルというものがない。それがないと森は危険だと他の者に言われて、どうするべきか悩んでいる」


「ああっ…」


 強者は俺の言葉に共感し、少し緊張していた顔の表情を緩めた。

 鎧姿に警戒心を持っていたのかもしれない腰には剣もぶら下げているしな。


 俺は何故か強者と弱者を見分けることができた。それで、死ぬ前は幾多の戦場を生き延び、ついには軍の指揮を任されるまでになったが…とうとう運もつき死にいたり、ここに来た。


 

「僕も前にここに来た時、魂の記憶スキルが無くて凄く困って、その時は偶然レイブンに会えたから良かったけど、あっレイブンっていう目立つ魂がいたんだけどね。ああ、それより魂のポイントの余裕があればスキルを取った方がいいよ。それがないと記憶を保てなくて、どんどん生前の記憶も忘れていっちゃうんだよ。僕なんて名前を忘れちゃったしね」


「名前か、それは困るな。俺はドゥールスだ」


「忘れてなくて良かったね。でも魂の記憶スキルは早めには取った方がいいよ。僕も色々と、ここでの記憶が無くて大変だったから。あっ、僕は色々あって今の名前はボーク・ホウロウ・ルチルね、好きに呼んで!」


「ではルチルと呼ぼう。ルチルは魔法の使い手か?先程の多勢に無勢の状況をあっという間に勝利に変えたようだが」


「えっ、見ていたの?恥ずかしい!魔法かどうかは分からないけど…最近になって青い炎とかを自由に出せるようになって便利なんで使ってるんだ」


 ルチルが髪を手で整えながら言った。

 その髪に銀の髪止めが煌めく。


「なるほど、あの世とは不思議な場所だ」




 俺は、あの世の常識を把握すべく、もうしばらくルチルという強者から情報を貰うことにした。


 


 

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