26 番外編 支配人の仕事。
短め、おまけ的内容です。
銀行の豪華な部屋とは別に窓のない狭い部屋、牢屋のような場所に鬼人族の男が囚われていた。
格子の向こうで男が喘ぐ。ここに連れてこられた時に力づくで連れてこられたのだろうか。
「お客様、借りたものは期限内に返して頂かないと困ります」
「ちくしょーっ!もう少しで返せるんだ!時間をくれ時間を!」
鬼人族の男が呻きながら鉄格子を掴み抗議の言葉をあげる。
「それでしたら期限前に銀行の窓口に来ていただかないと困ります。それに樹海に逃げ込もうとされましたよね?」
先程、ボークに対しての対応とは真逆の彼の行動に、一瞬、同一人物だと思う者はいないかもしれない。山羊のような角が暗く光るように不気味に見え、彼は手から契約書を取り出し鬼人の前にかかげる。
「中庭街では攻撃等できないので銀行を甘く見ていましたか?確かに無理やり魂のポイントをむしり取ることはできません。三賢人の結界の中です。でも抜け道が有るんですよ」
「ぬ…抜け道だと!」
支配人は不適な笑みをうかべた。
「これは最初に契約した時の契約書です。期限内に返金できない場合は強制的に別の対価を支払うことに対しての承諾書にもなっています。知りませんでしたか?」
「だから何なんだ!俺に払える物なんて何もないぞ?!」
鬼人が怯えながらも怒鳴り散らす。
「おや、ありますよ。それでは、お支払い頂きますね」
支配人の瞳がガーネットのように赤く輝く。そして、魔法の言葉がその口から紡がれる。
『契約強制執行』
彼の手に持った契約書が下から徐々に燃え上がり、それと同時に檻の中の男がもがき苦しみだす。
「そんな…まさか…ぐっ!力が俺の力が…あっ悪魔め…っ」
突然、冷たい床石に倒れ気絶したかのように静かになる。
「凄いですね!よく私が悪魔だと分かりましたね。この回廊は基本種族寿命の有るものだけの回廊、悪魔や天使の魂は普通は流れてこない。悪魔は普通決められた寿命はないんので別の回廊に魂は流される。私はイレギュラーなんですよ!おや、気を失いましたか?仕方ないですね」
支配人の手に持った紙は燃え上がると綺麗な石に変化し彼の足元に転がる。それを広いあげ手持ちのハンカチで軽く汚れを落とす。
「ふむ…鑑定してみると、魂の記憶スキルの魔石ですね。対価には確かになります」
支配人の瞳は通常のグレーの瞳に戻る。
彼は契約魔法により鬼人の魂からスキルを抜き取り魔石に変換していた。
それをケースにしまい近くのベルを鳴らす。すると、全身毛だらけの熊のような男が無言で部屋に立ち入る。
「お客様はお帰りです。何処かに捨てて来てください」
「…………」
熊男は牢の中の鬼人を肩に担ぎ上げ、速やかに部屋から消える。
「今日は忙しい日でしたが営業終了です」
支配人も暗い狭い部屋からいなくなり、静かになった部屋で冷たい床石に落ちた少ない灰が小さく崩れ落ちた。




