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24 僕、街に戻る。

 安らぎの泉で僕とタンポポちゃんも片づけを始めた。


 折れた釣竿もきちんと拾いバケツと一緒に髪飾りにしまってもらう。環境破壊は駄目だからね。

 辺りを見回し問題ない事を確認しているとチャイガさんが何か思いついたとばかりに空間収納から、1つの釣竿を差し出す。


 「あの~これは?」


 (はい、私が昔使っていた釣竿でよろしければ使ってください。今、もう使っていませんので)


 僕はチャイガさんの顔を見る。


 「いやー悪いですし、ただでもらうわけには!」


 僕が日本人特有の遠慮を全面にだして断ろうとする。すると、細い目をより一層細くして彼が微笑む。


 (あっ、でしたら魂Pコイン1枚と交換してもらえますか?)


 「えっ、こんなに立派な釣竿をコイン1枚でいいんですか?」


 (ええ、ホウロウさんの魂Pコインが欲しいですね)


 「はぁ、よく分からないですがいいですよ」


 僕は手のひらに1枚コインを出してチャイガさんに渡し、中古とはいえ最初に使っていた粗雑な釣竿よりも立派な釣竿を手に入れた。それをタンポポちゃんが受けとり収納する。


 「ホウロウ、準備できた、街戻る?」


 僕が頷くとタンポポちゃんは僕の手を握りオレンジがかった金髪の中の触手をフワフワとさせて飛ぶ準備をする。


 「チャイガさん、それでは僕達帰りますので」


 タンポポちゃんは僕がそう言い終わると魔法の言葉を発する。


 『遊覧飛行』


 僕とタンポポちゃんはフヨフヨと上へ上へと上昇する。

 下にいたチャイガさんも背中に大きな黒い羽を広げ、凄い速さで何処かに飛んで行ってしまった。

 たぶん無限回廊にでも戻って仕事の続きをするのかもしれない。だって中庭街がある方向とは真逆に真っ直ぐ飛んで行ったから。



※※※※※※※※



 私、少し得した気分です。


 久しぶりに安らぎの泉がある穴場の釣りスポットに足をはこんでみれば、無限回廊の放浪者が釣りをしている場面に偶然出会うではありませんか!私、驚きました。


 一時危ない感じにもなり私、焦りましたが背後に安全地帯もありましたし問題ないですね。


 そうそう、昔、放浪者…いえホウロウさんから魂Pコインを沢山貰っていた魂を回廊でお見かけしたことがありまして、()()床に落ちてたのを1枚拾ったんですがね。いえ、転がって来たコインをたまたま踏みつけて拾い上げたので決して()()()()のではありません。それでこの時のコインが何故か中庭街の情報屋で高値で売れましてね。だから、これも街に行く時まで魂に取り込まないで保管しておきます。


 新しい釣竿を買う時の足しになるとよいのですが…。私、この後、空色の扉の控えの間で使用後の釣竿の手入れという大事な仕事があります。

 さっさと帰りますか。


 

※※※※※※※※



 僕とタンポポちゃんが街を出た時から、どれぐらい時間が経過しているか分からないけど、のんびりフヨフヨ移動し途中で休憩を入れながら門の前に二人でたどり着いた。

 門は複数あるけど、道具を買った通りのある出たのと同じ門に戻ってきた。


 街にいると鐘の音があるから時間の概念がある、でも森だと流れる時間がゆったりで街でのどれぐらいの日数、外に出ていたのかは?感覚的にも全く分からない、だって昼も夜もないから。


 帰りは僕も油断せず周囲を警戒したので不意討ちをくらうこともなく無事に戻ることができ、本当に良かった。


 街に戻ってからする事を考える。


 実は僕、知らないうちに魂のポイントが7()8()6()7()ptになっていた!


 意味が分からない。


 そんなに魂獣(さかな)を釣った覚えがないのに!これだけ魂のポイントが有れば仕事探しも必要ないよね。それで、したいことは二つ。


 一つは、タンポポちゃんが持っているみたいな空間収納付きの装飾品を絶対に買う。


 もう一つは、地図に銀行が書いてあるから保険の為に少しコインを預けたい。


 さて、どっちを先にしようかな?




 僕達はゆっくりと門から街中に入る。


 結局、無駄遣いする前に銀行に行くことに決めた。


 「タンポポちゃん、貯まったポイントを少し預けたいから銀行に行くけどタンポポちゃんはどうする?」


 「ポポナ、ホウロウ、ついてく」


 「タンポポちゃんは銀行に行ったことある?」


 「銀行、前通るする、中無い」



  ヒューーーーッポン。



 僕とタンポポちゃんが門を通りすぎた直ぐ後に、後ろから音がした。何だろうと振り返ると空に向かい門の脇から白い煙が線を書くようにモクモクと上がっている。


 あれって何だろう?花火とは違うみたいだけど?僕は危険な物ではなかったので、まあいいかと前を向き歩く。


 門の前の道の真ん中にマップ売りのエルフはいない、時間的に2の鐘の後なのかと辺りをぐるりと見回せば、道のすみにマップ売りエルフが紅茶を飲んでいるではないか、僕がマップ売りを見ると何故か慌てて目をそらされた。

 あれ、この反応は知ってる。たまに街で僕を見た人が驚いて直ぐに視線を反らすあれだ。


 何だろう?エルフも流石に道の真ん中で堂々とお茶をしながら地図を売るのは、迷惑だとやっと気がついたのかな?それとも、三賢人の1人に似てるから驚いたのかも…どうしよう!街中で似たような態度をされると僕の心にダメージがたまる。


 そうだ!


 僕はフード付きポンチョを脱いで左腕にかける。これで、安らぎの泉の真ん中の人っぽさが薄れたんじゃないだろうか?肩までの髪を手ぐしで簡単に整える。


 身近な問題が解決したので僕はポケットから折り畳んだ地図をだす。

 銀行は買った地図を見ると街の中央にある。遠いけど街を散策しながら進む、中央には高い塔が3つあるから分かりやすい目印になるね。


 雑貨や装飾品が売られているメイン通りをタンポポちゃんと歩く。帰りに寄りたい店を軽く物色しながら、釣竿やバケツもこの通りで買ったんだったけ?いつまでもタンポポちゃんに荷物を預けているわけにもいかないし、早く自分の空間収納付きの装飾品が欲しい。


 「タンポポちゃんが髪飾りを買った店って、覚えてる?」


 「髪飾り店、もうない」


 タンポポちゃんが申し訳なさそうにシュンとする。


 「ああ、大丈夫だから一緒に空間収納付きの装飾品を探してもらえる?」


 「ポポナ、探す、頑張る」


 タンポポちゃんがビシッとした顔をして自分に気合いをいれていた。可愛い。片言の喋り方も彼女らしさがあふれていた。


 「タンポポちゃんは喋るの苦手?」


 僕は気になったので何となしに聞いてみる。


 「空中クラゲ獣人、普段、喋らない。触手、近付けて会話、口あまり音出さない、喋る難しい」


 「ああ…そうなんだ」


 あれだ!空中クラゲ獣人という種族全体が基本無口なんだ。タンポポちゃんは頑張って会話してくれていたんだ。もしかして、チャイガさんも口であまり喋らない種族なのかも!?最初から最後まで念話だったし、はぁ、色んな種族がいるんだなぁ。


 しばらく歩いて、やっと中央の部分に来れた。他の魂人とぶつからないように歩くのに神経を使い、意外と遠かった。さっき昼の鐘もなってしまったし、銀行はいつまでもやってないよね。


 開いてるかな?


 


 



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