23 対策会議を開きましょう。
ボークとポポナは出てきません。
時間はさかのぼるが僕とポポナが狩りをするために街を出た。その直後、中庭街の1つの建物に真剣な顔の者達が集まり、皆、会議の始まりを今か今かと待っていた。
集まったメンバーは、情報屋グループ幹部、マップ売り協会長と部下、ドワーフ技術開発連盟の皆さんで各席で手元の資料に目を通して静かにその時を待っていた。
「それでは皆さん、お忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。私、マップ売り協会の協会長のビューと申します。早速ですがお手元の資料を見てもらいながら説明をさせて頂きますわ」
マップ売り協会長の編み込みエルフ、ビューが話し始める。
「皆さんにお集まり頂いたのは無限回廊の住人こと魂の放浪者が今現在、無限回廊にいないことについてです。では情報屋さんお願いします」
黒豹獣人が口を開く。
「俺は情報屋をまとめている玄だ。最近、無限回廊で放浪者を見ないという情報があった。その後、マップ売り協会のエルフの1人が門で放浪らしい魂人にマップを売ったという話が上がってきた。その後、千里眼スキルの者に依頼をして無限回廊を一通り見てもらい、回廊部に放浪者がいないことを確認した。そこで、このマップを買った魂が本当に放浪なのか?をこれから確認したい。ドワーフ技術開発連盟の方に銀行でも使われている魂選別機のアレンジ番を持ってきてもらった。これから、それで判別をしたい」
ドワーフの中で機械を抱えている者が机にそれを置く。そして長らしき者が話し始める。
「わしは連盟の代表をしているウハウノじゃ、緊急の要請により魂選別機を持参した。これは魂Pコインを二ヵ所にのせてもらう必要がある。右の窪みと左の窪みにコインを乗せてコインから発せられる魂の波動を読み取る機械じゃ。同じ魂ならランプがつく仕様になっている」
エルフのビューが手元から魂P コインを出し皆に見せるようにして機械の窪みにはめる。
「今、私が置いたコインはマップ売りの部下エルフから預かって来たコイン。放浪らしき魂からマップの支払い時に渡されたもので魂に取り込んでいないので、その時の客の魂の波動がわかるはずよ」
次に黒豹獣人の玄が機械に近寄る。
「この俺の持っているコインも昔、無限回廊の放浪者から譲り受けた者から買い取ったコインだ。何かに役立つと思い保管していた。放浪者の魂Pコインだ」
コトッ。玄は鋭い爪で器用にコインを掴み皆に見せたあとに窪みに置く。
「それでは機械のスイッチを押すぞ」
皆の視線が集まる中、ウハウノがカチリとスイッチを入れる。
すると、直ぐに青いランプが点灯する。
「これは同一魂じゃな」
「なるほど、やはり放浪者は中庭街に来ているのか…それでは、次に対策の話を進める。ドワーフから新しい機械の詳細の紙があるので、それを見てくれ!説明を頼む」
玄がドワーフのウハウノに話を促す。回りの者は配られた紙の中から、その内容が記載されているものに目を向ける。
「前もって放浪者が中庭街にいた場合を想定し作って欲しいと言われた機械の仕様がこれじゃ。コインにより魂の波動は確認できた。この波動を感知した場合にのみ、2種類の狼煙を自動で上げるシステムになっておる。中庭街に放浪が入って来たら白い狼煙をまた中庭街から放浪が出ていったら赤い狼煙が上がる。どうじゃ?問題があるか?」
エルフのビューの隣に座る部下らしき者が手を挙げて発言をする。
「あの~!放浪者が中庭街にいると、そこまで対応しないといけないのでしょうか?無限回廊でただすれ違うだけの魂ですよね!!」
「あら、あなた無限回廊滞在時間が短いタイプの魂かしら」
エルフのビューが顎に手をあてて小首を傾げる。
「はい、いつも直ぐに転生の扉に行くので…」
「そう、それでは知らなくても仕方ないわね。放浪者が無限回廊に居る分には無害なのよ。気分で魂Pを気に入った相手にあげたりする事もあるらしいから喜び感謝する者もいるらしいわ、では…これは知ってるかしら?放浪者は三賢人の1人なのよ」
「はい、三賢人の1人なのは聞いたことがあります。三賢人は結界の賢人シール・ドハルと建築の賢人ブロック・モ・スキー、最後に救済の賢人、魂の放浪者ですよね」
エルフの部下が模範解答を言うようにハキハキと答える。
「そうね、放浪が二人の賢人に多くの魂のポイントを譲りスキルを取らせて、ここ中庭街を作ったと書物には書かれているわね」
「はい、自分の所持している魂のポイントを無償で譲渡する。身を削るような行為から救済の賢人と呼ばれていたと」
「では、その膨大な数の魂のポイントはどこから手に入れたのかしらね。無限回廊でも魂のポイントを放出していたみたいだし不思議に思わない?」
「それは…」
二人の会話を黙って聞いていた情報屋の玄が口を挟む。
「おいおい、部下をあまりいじめるなよ。それについては俺が話そう。これからの作業に全員が知っていないと困る、認識の違いがあるとミスにつながるからな。まず昔の話だ。中庭街ができる前、三賢人が出会う前の昔に無限回廊には悪魔がいた。この事はあまり知られていない。知っているのは、それに遭遇した魂ぐらいだ。中には遭遇しても自分に何が起きたのか、誰に攻撃的されたのか分からないまま魂石にされる魂もいるらしい」
「悪魔?」
「樹海の悪魔と呼ばれた恐ろしく強く禍々しい魂がいて、その悪魔の通った後には焼かれた跡のある焦げた凍った魂石がゴロゴロと転がっていたらしい。その悪魔が三賢人が出会い中庭街を作り始めた時から突然、消えた。この事は図書館にある古い書物に記載されている。そして、過去に悪魔に実際に出会い魂石にされた魂の証言もある」
「それって放浪者が樹海の悪魔ですか…」
「そうだ。これで緊急の対策が必要なことがわかっただろう」
黒豹獣人の玄が静かに諭すように言った。
「さて、話し合いは終わったかな?この結果をふまえ、わしは早急に自動狼煙打ち上げ機をドワーフ技術開発連盟の皆で門の数だけ作成するが…」
ドワーフのウハウノは情報屋とマップ売り協会の陣営を睨む。
「わしらの負担が大きい材料費と依頼料は、そちらさんで出してもらわんとな!わしらは基本、街から出ずに魂P を稼いでいる。樹海にも早々出ないから樹海の悪魔など気にせんのじゃ!作らんでも良いのだぞ」
「あらあら、強気なドワーフだこと。そんなにいきり立たなくとも良いのでは?悪魔に魂人が刈られまくると中庭街の顧客が減って困るのはドワーフ技術開発連盟じゃないかしら?」
協会長のビューが挑発するように微笑む。
「何だと!マップ売り協会など、新参組織がでかい顔をして!!」
ドワーフ陣営の他のドワーフがそう言って騒ぎ出す。
黒豹獣人の玄がタメ息を吐き2陣営をなだめる。
「7割方、情報屋が料金を出す、残りはマップ売り協会の負担にする。それでいいか?」
「情報屋さんは、これから狼煙の情報を売って荒稼ぎするのよね?その自動狼煙打ち上げ機が完成したらマップ売り協会のエルフが各門に配置するわ。操作方法を取りに行ったエルフに教えてくれれば良いから機械ができたら連絡を頂戴、そこまでするんだから負担を下げてほしいわ」
「ちっ、仕方ない8割持つ。その代わり確りと動いてもらうぞ!」
「交渉成立ね」
エルフのビューは席を立つと玄が言う。
「ああ、連絡関係はこっちでする会議は終了だ。出来るだけ早く各門に設置が出来るように頼む。それでは、ひとまず解散だ!」
玄達も立ち上がり、それに続くように全員が席を立ち部屋の資料を片づけ始める。
「おお、忘れるところじゃった。これは必要だから1つ貰うぞ」
ドワーフのウハウノが機械に乗ったコインを1つ手に取り大事そうに小さな袋にしまった。そして、其々が自分のすべきことをしに部屋を後にした。




