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22 自己紹介をしよう!

 湖に落ちたホウロウと竜羽(りゅうば)の虎。


 ポポナは直ぐに落ちた場所まで移動し湖に飛び込もうとする。しかし、それを止める者がいた。

 

 ホウロウの隣で釣りをしていた糸目の男が蝙蝠のような黒い羽を出し空を飛びポポナの側までくると無理やり泉の方に引っ張り戻そうとする。


 (危ないですよ。安らぎの泉まで一旦戻りましょう)


 糸目の男が焦った様子で念話でポポナに話しかける。


 「ポポナ、ホウロウ、助ける、邪魔!」


 ポポナは糸目の男を麻痺毒の触手でペチペチと叩く。


 (痛ッ、叩かないでください。私、人より丈夫な体なので麻痺毒とか効きませんから…このままだと危ないですよ)


 ポポナは強引に安らぎの泉の安全地帯まで力ずくで運ばれて行く。


 「ホウロウーーー!!!」


 ポポナが泉から湖めがけて叫んだ。


 次の瞬間、湖面の全体がポコボコと不気味に波がたちはじめる。


 ボコボコボコ。


 音は治まるどころか激しくなり、今度は煮えたっぎった鍋の湯のように熱を発する。まるで地獄絵図の一部のような不気味な光景。


 ジュージュー!ボコボコボコ!


 あっという間に広い湖の水が全て蒸発するという奇妙な現象が二人の目の前で起きた。


 「ホウロウ?!」


 ポポナが目で湖の底を探る。


 (まだ、近づかないでください)


 糸目の男が声をあげると今度は湖の底がバリバリバリバリと音をたて物凄い速さで凍りはじめた。


 底にはさっきまで魂獣(さかな)だったものたちの魂石がジャリジャリと転がっている。その中で1つふらりと動く影がある。


 コバルトブルーの髪が何故か、いつもより濃く見え濡れた髪も熱で蒸発したのか?サラサラと風になびいていた。それはゆっくり湖だった場所からはい上がり視線は二人がいる安らぎの泉を通り過ぎで何処か森の奥へと向く。右手の肘から下がじゅうじゅうと音をたて少しづつ再生しはじめ、それを気にすること無くゆっくり歩く。


 オパールの瞳は未だ何も見ていないように鈍く光っている。


 「ホウロウ、ホウロウ、大丈夫?」


 ポポナが声をかけるとそれは足を止める。


 「ホウロウ…ホウロウ…大丈夫…」


 それの口から同じ言葉が繰り返される。


 バキッ!


 地面に投げ出された釣竿を踏み潰した音が鳴った。それを多色性の緑の瞳が確認する。


 「釣竿…」


 その瞳に一瞬虹色の交際が宿る。


 「あれ?何で…釣竿が折れちゃったの?僕が踏んでる」


 僕は目をパチパチとさせて言った。


 (あっ大丈夫そうですね。良かったです。もう側に行っても良いですよ)


 ポポナが僕に走りよる。


 「ホウロウ、敵に襲われた、大丈夫?」


 「タンポポちゃん、僕は大丈夫っじゃないかも、右腕が食べられちゃったから」


 僕は恐る恐る自分の右腕の先を見た。


 「あれ?腕がある…どうして」


 「ホウロウ、ランクダウンしてない、魂、馴染んだ形に戻る、普通のこと」


 タンポポちゃんが僕を安らぎの泉の安全地帯内まで引っ張っていく。僕はほっとして、そのまま泉の縁にぐったりと座った。

 

 「怪我しても元に戻るんだね。流石、あの世だ」


 そして、僕達三人はここで初めて自己紹介をすることになる。


 糸目の茶髪癖っ毛さんは僕に名刺をくれた。


【チャイ・ガ・スキー 

 南国リゾート風世界No114の管理人】


 (私、こういう者です。無限回廊の数多の扉の1つを担当し管理しているものです。No114とは南国リゾート風世界の中で114番目に出来た世界でして、まあ、似たような世界はいっぱいあるのでナンバーがついていて分かりやすくしているだけですが…。それよりも、昔、回廊でお話をしたことがありましたよね?私、何処かでお会いしたと思っていたら思いだしました)


 チャイ・ガ・スキーさんは相変わらず口を閉めたまま念話で会話してくる。これは、つっこんで聞いた方が良いのか?ふれないでおけば良いのか…。


 「タンポポちゃん、チャイ・ガ・スキーさんは無限回廊の管理人の1人なんだって、恥ずかしい話なのですが僕は魂の記憶スキルをさっきとったばかりなので、昔にお会いしていても覚えていないんです」


 (あっ、チャイガと呼んでください。スキー一族は無限回廊にいっぱいいるので、それと魂の記憶スキルは取ってない方も多いので大丈夫ですよ)


 タンポポちゃんはチャイガさんと僕の間に立って話の成り行きをじっと聞いている。


 「僕はボーク・ホウロウという名前みたいです。知らないうちに、そうなりまして…。こっちの彼女はポポナ・フルールさんです。僕はタンポポちゃんと呼んでますが」


 僕がタンポポちゃんを紹介すると彼女は嬉しそうにニコニコする。


 (なるほど、魂のスキルを取得するとよく呼ばれる名が名前になることはあります。珍しくないですね。変更したければ中庭街に偽装屋がありますから勿論料金はとられますけど)


 チャイガさんは釣具を空間収納的な場所に片付けてスーツの上着を着て辺りを見回す。


 (しばらく、ここでは釣りは、できなさそうですね)


 湖を見ると何故か水がなく湖の底が凍っている。


 不思議だ。

 さっきまでいた竜の羽がついた虎はいないけどチャイガさんが何かして倒してくれたのだと思う。僕は気を失っていたからわからないけど。


 (それにしても、無限回廊の住人と呼ばれるほど、回廊を何百、何千年もさ迷っている魂の放浪者が回廊にいないで、中庭にいるとは珍しいですね。私、ビックリしました。とうとう何処かの扉を選んで生まれ変わったのでしょうか?それとも、回廊に飽きて森に降りただけですか?)


 「僕、その放浪者とは違うと思う思いますが…」


 「ホウロウ、無限回廊、ずっとずっといる。ポポナ、回廊で話した、魂のコインいっぱいくれた。ポポナ、ホウロウ間違わない」


 「うっ…僕、その放浪者って言われている人なの?本当に?」


 僕とタンポポちゃんの会話を聞き、チャイガさんがうんうん頷いている。


 (なるぼど、記憶がないから信じられないのですよね、でも大丈夫です。私、無限回廊の放浪者が放浪者になる前、三賢人の1人として中庭に街を作ったの知っていますから、なにぶん、私もスキー一族なもので管理人歴が長いんです。そういった情報も自然と耳に入ります)


 チャイガさんが泉の石像を指差して言った。


 えっチャイガさん、今、何て言いました?!


 僕が無限回廊の魂の放浪者で、その放浪者は三賢人の1人?


 僕=魂の放浪者 


 魂の放浪者=三賢人の1人


 答えは僕=三賢人


 えっ?どういうこと。


 僕は安らぎの泉の三賢人の石像を超視力スキルで観察する。

 右の石像は本を持った魔法使い風の男、こちらはフードを被っていないので顔が見えるが僕に似ていない。左には、ほぼ上半身裸で筋肉質な男が立っている、これも僕には似ていない。


 最後に真ん中の細身の石像、フード付きポンチョをかぶった半ズボンにロングブーツの女。髪は肩ぐらいだろうか?僕と同じ長さ。あれ?服そうが似ているかも…よく見ると細かいブーツの装飾が同じような気がする。いや、全く同じだ。




 あれ僕じゃん。


 僕って三賢人の1人だったみたいです。

 

 


 



 


 



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