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16 マップ売りのエルフ。

 長い長い樹海が途切れ木が1本もない原っぱにでる。その真ん中に別世界のような街が広がっていた。


 僕とレイブンは上空からその街を見下ろす。


 何処かの国で有名な巨大な屋根付き市場を彷彿させる街並み。中央に3つの高い塔が並び、そこを中心に四方八方にクモの巣状に伸びた長い屋根。屋根の延長上に門があり壁の中に入る入口となっていた。


 空いてる隙間には建物がびっしりと、ひしめき合っているので地面らしきものがわずかにしか見えず。もし雨が降ったなら絶対に傘が必要ない、そんな完成された街が目の前にあった。


 すごい、パッと見て何だか全体の形が五稜郭みたいだ。昔、旅行で行った時に見たのに似ている。


 死んで無限回廊にきて建物らしい建物といったら門と長い回廊のみ。人間、不思議なもので自然の中にいると知らないうちに建物に飢えてしまうらしい。


 当時の三賢人のひとりが建物をここに作りたくなったのも何となく頷ける。

 僕はそんなことを考えながら近付く街を見下ろしていた。



 幾つもの門の中でレイブンが一番近い門の前に降りた。そして僕の足がやっと地面につく。


 何だかホッとする。


 振り返るとレイブンから落ちたのは3度目になる。1度は意図的に落とされ、2度目は浮遊中に何かに攻撃されて、3度目は手が滑ったからだけど、できればこれ以上は無しの方向でお願いしたい。

  

 レイブンと空は僕にとって鬼門だ。



 僕とレイブンは門に近付く。開け放たれた門の側には特に門番らしき者は存在しなかった。どうやら最初の壱の門とは違って常時開放されているみたいだ。


 「勝手に入って大丈夫かな」


 「ああ、門があるのは、ここから安全地帯だと魂に分かりやすくする為のものだから出入りは自由だ」

 

 「へえ~そうなんだ」


 「外敵が攻めてくることもないから壁も低いだろ? 中と外を区別している結界の指標だな」


 二人で話ながら門をくぐる。特別何かを感じる事も抵抗感もなく入ることができた。


 あっさり通れるとなんか拍子抜けする。


 門の入口から5.6メートル入った道のど真ん中で、洒落たテーブルと椅子に座りお茶を飲んでいる人物がいた。


 道の真ん中で呑気に茶を飲んでいるエルフ、そうエルフだ。整った顔の長髪の男が邪魔になる場所でさも当然のことのように茶を飲む。


 テーブルの上には茶とお茶菓子まである。


 「レイブン、エルフが道の真ん中でお茶してるよ」


 「ああ、丁度良かった」


 レイブンはズカズカと前に進み、お茶する男エルフに近付く。僕もレイブンについていく。


 「おい、マップ売りだろ? いくらだ。あと、のっている情報の詳細だな」


 カチャリ


 男エルフはカップを置き口を白い布で拭き口を開いた。


 「街の簡単な案内は2魂P(こんぴー)、酒場、食堂、情報屋、宿屋、偽装屋などの細かい記載があるものは5魂Pだな買うか?」


 男エルフは長い耳に髪をかけレイブンの返事を待つ。

 

 「ふん、高いな。細かい方で3魂Pなら払うぞ」


 「それは無理だな、最新の全部の情報屋の場所がわかる地図だぞ他では買えない。よくて4魂Pだ」


 「ちっ、仕方ない久しぶりの無限回廊だ。前回と街並みも変わってるだろうから、それで手を打つ」


 レイブンが手の平を上に向けると、そこにコインが4枚現れた。それを男エルフに渡す。


 「確かに間違いないな、これが細かい方の地図だ」


 男エルフは何か紙のような物をスキルで生成しレイブンに渡した。


 「確かに良くできた地図だ」


 レイブンは頷き、男エルフから離れた。


 僕の目の前で速やかに行われた値切り交渉。中庭街の地図を門の中で売ってるのにも驚いたが何かコインみたいな通貨を渡していた。あれ、何だろう?


 「レイブン、あのコインは?」


 レイブンは地図を見ながら質問に答える。


 「ステータスで見える魂ポイントを念じれば具現化できる。但し使う分だけ念じる、自分のステータスの数字も減るからな気を付けろよ。相手からもらったコインも魂に吸収できるから中庭街のような魂戦できないエリアでは、魂ポイントを具現化したコイン、魂P(こんぴー)が通貨として使われている」


 レイブンは一通り地図を眺めてから顔をあげて言う。


 「それじゃ~中庭街についたし契約完了だから俺はもう行くぞ。お前…ボークも、まあ頑張れよ!」


 「あっ、えっ!」


 「じゃーな、()()()()()!!」


 レイブンは地図を片手に持ち、そのまま門の前から離れて行ってしまった。


 レイブンの背中を見つめて立ち尽くす僕。何だろう凄いあっさり別れてしまった。色々あったけど、ここまで連れてきてくれたし感謝の言葉のひとつも言えなかった。


 「また、どこかで会うかな…」


 「あの、お嬢さんは地図どうします?」


 そんなふうに思っていると後ろから声がした。


 「あっ、中庭街の地図ですよね」


 「さっきの交渉を聞かれているから、あの人と同じ金額で売るけど、どうする?」


 ゴーーーン、ゴーーーン。


 その時、街のどこかから鐘の音が響く。


 「さて、昼の鐘ですね」


 男エルフは鐘の音を聞くとテーブルと椅子をどこかの空間にしまい、片付けを始めた。


 「私は店じまいです。買わないのなら、もう行きます。もし地図が欲しいなら1の鐘から2の鐘までの間なら、また、ここで地図を売っているから」


 男エルフが帰り支度を始めて僕は焦った。まだ買うか買わないか決めていない。


 「あのー、1の鐘って何ですか?」


 「ああ、中庭街では3度鐘がなるんだよ。1回なったら1の鐘2回なったら2の鐘、そして3回なったら夜を知らせる3の鐘だね。まあ、夜と言っても、ここでは暗くならないけどね」


 男エルフが説明を終えて、その場を立ち去ってしまう。



 門の近くでポツンと一人残された僕。


 地面にはテーブルと椅子の跡が空しく残っていた。


 


 


 


 


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