15 飲み込まれた俺のつれ(レイブン視点)
後半は少し僕視点です。
俺はやってしまったと思った。
抱えていたアイツを落としてしまったから。目の前の黒い大きな魂獣は満足そうに動きを止め、喉からゴクンゴクンと大きな音をならしている。
後方から切り離した体が追いついて、それと結合する。元の塊になると今度は狙いを俺に定めたのか?こちらに6個のつぶらな瞳を向けている。
くそ、どうする?俺は短い時間で頭を回転させて考える。
戦うか?
勝てるか?
逃げるか?
アイツをあの足手まといを助ける価値があるのか、逃げれば多分だけと逃げきれる。助けるか?丸飲みされたから、まだポイントを吸収されてないかもしれない。勝てるのか?あのでかい魂獣に…いや負けないだろう。
俺には称号、空の王者(空中にいる限り攻撃では致命傷を負わない、だが地に落ちた者に安息はなし)がある。
空中戦は昔から得意だ。
生前、死んだのも仲間の四天王の裏切りにあい、ストック・リリー・クローバーの蜘蛛の糸に地面に縫い付けられた所を勇者の介入で勇者に殺されたのだから、一対一、空中戦。
負ける気がしない。
あれだ。アイツとは言霊のスキルの契約もある。俺に有利な契約だが一方的に破棄するとなると俺に不利益が生じる。契約により譲渡されたスキルポイントがアイツに戻り俺がランクダウンするだろう。アイツから流込んだ魂ポイントはいくつだったか?!くそ、覚えてないぞ。
まあいい戦うか…アイツが魂石状態でも拾って、中庭街に持っていけば最悪でも言霊の契約は完了するはず。
俺は短時間でそれらの決断をする。
戦うと決まれば早い、服のポケットから戦闘用の真っ黒な手袋を取り出す。手袋の表面にはキラキラとした魔石のビーズがあしらわれ何か意味のある魔方陣が刻まれていた。それを手にはめて、レイブンが左の拳を握ると手の中に鞘に入ったレイピアが出現する。
右手でその剣を抜くと鞘が自然に消滅した。
長く鋭い剣先が主人に呼ばれ嬉しそうに煌めく。
よし、戦闘準備は整った。
俺はレイピアを構える。
そこから俺と大きな黒い魂獣の激しい戦いが繰り広げられる。
そのはずだった。
今、俺の前にある現実は違うものになっていた。
現実は残酷だ。
そう、それは突然だった。俺と黒い大きな毛の塊がお互いを敵と認識し向かい合った、その瞬間にそれは起こった。
ボッ、メラメラメラ。
ぐギャー~~ん!!!
俺の目の前で青い炎に包まれた魂獣。
最初は敵のスキル能力だと思った。
だが苦し気にのたうち回り雄叫びをあげ、空中で体をくねらせて苦しむ相手。
どう見ても本人の意図しない何かに、それは苦しめられていた。
次第に敵は力を失くし、しぼむように燃えて森に落ちていく。
ぼんやりとそれを見ていた俺はハッとして、急いで落下する敵を追いかけた。
地面の上には、燃えかすになった魂獣の塊がなぜが凍りついていた。自分で目の前の現象に理解が追いつかない。
なんだよこれ何が起きた!!
バリバリバリ、パリン、コツン。
氷の黒い塊が二つに割れ中から何か異様な禍々しい者が這い出してくる。
それはむくりと起き上がりぼんやりと何処か遠くを見つめていた。
アイツだ。いつも俺に搾取されている。弱々しいアイツだ。
ヤバイ、あれは駄目だ。目がおかしい、視点が俺を見ていない。いつものアイツからは感じない禍々しい力がアイツから無尽蔵に垂れ流されている。
気を抜いたら殺られる。
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
アイツの魂人になった時のオパールのような瞳は、いつもより暗く青みが増している。光にキラキラしていた美しい緑の色彩はそこには無かった。
あれは誰だ、本当に同じ魂なのか?姿が同じだが全く同じに見えない。
一種のトランス状態なのか。
そして、アイツは俺を気にする事もなく、ゆっくりと何処かに歩いて行こうとする。
その足元には青い炎がくすぶり地面を焼いていく、そのそばから焼けた後がパリパリと凍りつく。
恐ろしく不気味な光景。
くそ、行ってしまうぞ、どうする?
トランス状態を解くには魂に刻まれた名前を呼ぶのが一番だが…アイツの魂を鑑定した時に名前は無かった。
トランス状態を解く程のキーがない。何か、アイツがこだわったキーになる言葉。それを言霊スキルで言葉に力をのせれば…もしかしたら。
俺は一か八かの行動にでる。アイツを追いかけて、その背中に言霊で声をかけた。
「おい!ボク、お前は男なんだよな」
アイツはピタリと止まりぐるんとこちらに顔を向ける。
「ボク、オトコ」
小さく口から声がもれる。レイブンはすかさず言霊のスキルを使う。
「俺はレイブン、俺と中庭街まで一緒にいくのだろう」
「レイブン、中庭街、一緒に行く…」
アイツの多色性の瞳が明るく煌めく。
「あれ、レイブン?どうしたの?剣なんてもって怖い顔して何かあった?!そういえば、あの1両編成の黒い魂獣は???」
不思議そうに俺を見る目は、いつものアイツの明るい瞳。
俺はホッとしてため息を吐いた。今まで出会った魂の中でもこいつが一番ヤバイ事に変わらないが呑気なアイツの態度に毒気を抜かれ体の力を抜いた。
「もう、大丈夫そうだな」
「えっ、何が?もう敵がいないってこと?」
「ああそうだ、俺たちに敵はいない」
俺は噛み締めるように呟く。
「お前は名前がないだろう、いつも自分の事を僕といっている。つまりだ、俺がお前に名前をつける」
「えっ、レイブンが僕に」
これは魂に無理やり刻む力業だが仕方ない。さっきのような暴走に俺が次に巻き込まれたら、同じようにはあれから逃れられないかもしれない。
何事にも保険は必要だ。
「俺、レイブーン・フリューゲル・クローバー・ルルリヤは命名する。お前の名前はボークだ」
「えっ?僕がボーク?!」
「返事は!」
レイブンの強制的な力のこもった言葉。前にもこんなことがあったような、勢いにのまれて僕は口を開く。
「あっ、はい」
レイブンはニッコリと笑い軽く頷く。僕とレイブンが小さな光に包まれる。あれ?これ、またなんか呪われちゃった。
名前 ボーク※(強制的に名付けられた)new
職業 なし
種族 死の精霊※(魂人、出会う魂により希望にも絶望にもなる)
状態 呪い(無限回廊の中央にある中庭街につくまでレイブーン・フリューゲル・クローバー・ルルリヤに取得したポイントの半分を捧げる)
魂pt 193pt
スキル 念話
超視力
ステータス
小さな幸せ
称号 優柔不断な頑固者
新たに呪われては、いなかったが何か不吉な文が並んでる。
僕はそれを見なかったことにした。




