13 厄介な敵からの逃・飛・行。
森の木々の中を二人の魂が移動する。一人は地面から少し浮き上がりながら移動して、もう一人はそれに付き従うように歩く。
一方は長身の黒髪の魂人。もう一方は少し細身のコバルトブルーの髪の華奢な魂人。
二人は森のなかを話ながら移動していく。
「レイブン、方向はあっているの?」
小さい方が上を向き相手に問いかける。すると、相方の背の高い男は何かを振り払うように手を振り上げる。
ブーン、ブーン、ブーン、チクッ!!
「くそ!やられた」
悔しそうに男は体を無造作にバタつかせる。それを不思議そうに相方は見ていた。
「あれ?何か虫!蚊みたいなのが飛んでるけど。レイブン、刺された?」
「小さい魂虫だ!ポイントを吸われた。小さいし素早いから、どうにもならん。痛いっ、また取られた」
僕の案内役のレイブンは小さな虫、魂虫に魂のポイントを地味に取られている模様。
僕は目が良いからかレイブンの回りに飛び交う黒い影を目で追えているが彼は見えてないようだ。
「レイブン!大丈夫?」
煩わしそうにする彼を見て僕が問いかけると、レイブンは突然、僕を抱きはあげて空へと飛び立つ。
無限回廊の森の木が次々に後ろに過ぎていく。目にはいるのは空と森。
彼の背に立派な黒い翼が二つ現れて、それにより物凄い速さでその場所を移動しているようだ。
とにかく早い。
ある程度の距離を進むとレイブンはスピードをおさえる。息も吸うのもやっとの速さが一息できるものになった。
「レイブン、いきなり飛び立つとビックリするよ」
僕は抱えられているので彼の腕を軽く叩いた。
「すまん。小さい魂虫にイライラした。鬱陶しくて、あの場を離れたかったんだ。チマチマとポイント吸われるし、本当にイラつく。なんだよあの魂虫はっ!」
レイブンが僕を抱きかかえ森の上を移動しながら言い訳をするように言った。彼には珍しく素直な謝罪だ。
どうやら彼は小さく俊敏に動く敵は苦手らしい。それにしても、さっきの魂虫は蚊のように小さく素早かった。森の中でしとめるのは難しいだろう。
「ちょうど良いから、このまま抱えて中庭街まで行くぞ!思っていたより、お前は重くないみたいだから俺が抱えて飛ぶのも問題ないようだ。それに体の肉が柔らかいな?もしかしたらと思ったがお前、魂人は女型だな?胸があるぞ」
「…………」
僕は非難の眼差しでレイブンを見つめた。
その間もレイブンは気にせず僕を運んで空を移動する。
そう、気のせいだと思いたかった。
実は僕の上半身にはランクアップ後、柔らかい肉がついていた。それと同時に下半身にはあったはずのものがない。もしかしたら…と思っていたが気のせいでは?と考えないようにしていた。
ああ…僕、多分、女の人になっちゃった?!
ガクッとうなだれる僕。
「なんだ、何か問題でもあるのか?」
レイブンは不思議に僕の顔を見る。
「元男の僕が女になったかも知れないんだよ。問題だよ。レイブンは女になったことがないから、わからないんだ!」
僕はムカッとしたのでレイブンに八つ当たりをした。
「なんだかよくわからないが女になら、なったことぐらいあるぞ。何回も転生してるんだから、ずっと人型の男でいる方が稀だと思うが」
「えっ、レイブンは女になったことあるの?」
「ああ、お前も知ってると思うが俺は、レイブーン・フリューゲル・クローバー・ルルリヤだろ?」
「うん」
「生前はレイブーンだった。魔王に気に入られ四天王にスカウトされクローバーの名が4人に与えられた。それで、レイブーン・クローバーになった。その前はフリューゲル、そしてその前はルルリヤって名前で女の人生だった」
「そうなの?それじゃー3回生まれ変わってる?」
レイブンに僕の疑問をぶつける。
「いや、もっと沢山だな。名前は魂に馴染まないと刻まれない。本人が認めない名前や虫や草には名前がないだろう。だから馴染んだ名だけが残って、魂の記憶スキルの効果で刻まれる」
「へえー、僕の名前がないのは魂の記憶スキルを持ってないからなんだ…やっぱりポイント貯めたら一番に取らないとだめか、はぁ~っ」
「まぁー頑張れ」
レイブンはこの話題に飽きたのか投げやりに言って前を向き飛行速度をあげた。
樹海の上空を飛び移動する、そんな二人の様子を青い目の角兎が木の影から見つめていた。
彼らと無限回廊の森で最初にあった戦闘でやられた魂。それが彼らの行く先を眺め、けして見失わないように静かに…見つめていた。




