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11 望まぬ再会。

 僕とレイブンは三賢人の噴水を離れ、生い茂る木々の中を進む。


 大トカゲとその背中に乗る黒い鳥。


 僕たちは、この森の中央にある街に向かっていた。


 僕の魂獣の姿がまさか!体の大きなトカゲだとは思わなかった。こんなことなら身軽な妖精姿の時に距離を稼げばよかったと、考えても仕方のないことをどうしても思ってしまう。だって、この巨体、移動速度がすこぶる遅い。

 しかも馬鹿デカイ森は迷わずとも、いっこうにぬけることができない。似たような景色ばかりで本当に前進しているのか不安になる。


 レイブンがたまに上空に飛翔し方向を確認してくれているから大丈夫なはずだけど、僕は不安な気持ちをまぎらわす為にレイブンについ話しかけてしまう。


 (レイブン、魂草や魂虫とは多くすれちがったり遠目で見かけるけど、人型の魂人はあまり目にしないね。何でだろう…)


 (ああ、魂人は街の付近で効率良く狩りをするか…中で商売してポイントを安全に貯める者が多いんだ。誰でも安全圏の近くで狩りをしたいものだろう? そうじゃない者は最初の門周辺で狩りをして、そのまま回廊に行き転生するコースだな)


 (へえ~商売してる人もいるんだね。僕もできるかな)


 (さぁ~ど~だろうな。商売に向いたスキルをおまえがもっているのか?)


 僕は自分の所持スキルを見てみる。



 名前 なし(僕)

 職業 なし

 種族 魂獣(獣の姿の魂)

 状態 呪い(無限回廊の中央にある中庭街につくまでレイブーン・フリューゲル・クローバー・ルルリヤに取得したポイントの半分を捧げる)

 魂pt 53pt

 スキル 念話(喋らなくても相手に思いが通じる)

     超視力(すごく目が良いでも疲れやすい)

     ステータス(簡単な自分を知れる)

     小さな幸せ(たまに少し良い事がある)


 称号 優柔不断な頑固者


 ポイントは少しづつ貯まってきたけど、新しいスキルを取得するような余分なポイントはない。下手にポイントでスキルを取得したら今の状態から石になるってレイが言っていたし。


 (商売に使えるスキルって、ちなみに何があるの?)


 僕は自分のステータスでは、どうにもならないのでアドバイスを求めた。


 (そうだな…料理 、歌、計算、楽器演奏、酒創造、服飾偽装、植物育成とかかな? 街では娯楽を求める職種が稼げる。食事も酒も本来必要がないがあれば喜ばれるものだからな。まあ、俺ももってないが俺は狩りを専門にポイントを稼ぐからいいだよ) 


 僕もレイも商売に向いたスキルないんだな、僕とレイブンの数少ない共通点だ。何だかちょっと嬉しい。




 そんな時だった。

 木の上に何か大きな影がさす。


 大きな獣のような気配。とっさに、その木から離れるが所詮は大トカゲ動きは鈍い。


 バサバサとレイブンが黒い羽を広げ飛び立つ。そのタイミングて何か白いものがビュッとレイブンにおおいかぶさった。


 僕がその場から離れ振り返って見ると蜘蛛の糸のようなものに黒い鳥が身動きを封じられていた。


 バサバサと逃れようと必死にもがくレイブン。

 

 僕の目にはネットのような蜘蛛の巣、それによって地面に縫い付けられたように身動きができないレイブンの姿が見えた。


 地面に力なくとらわれた黒い鳥。


 (レイ!動けないの?)


 逃げてその場から何とか離れていた僕は、心配になり戻るような素振りをする。


 「来るな!!」


 えっ!レイブンって喋れたの?!それどころではないのに頭の中でふと思った。そしてレイブンが叫んだと同時に木の上から、何かが重い音をバサリとたてて降りてきた。


 大きな蜘蛛?違う!!


 それには蜘蛛の胴体の上に人間の女が生えていた。


 不気味な青白い肌。人間のそれとは違う。蜘蛛の部分は黒く禍々しい。蜘蛛の頭部にも別に口がありキシキシと鳴き声をあげている。


 凄く気持ち悪い。


 無限回廊という名の、あの世にきて険悪感を抱く魂に会うのは、これが初めてかもしれない。


 僕はガタガタとトカゲの巨体をふるわした。


 相手の大きさは僕より少し大きいくらいだ。でも   小さなレイブンにとっては踏み潰されたら終わりだろう。


 蜘蛛女はニヤニヤ笑いながらレイブンにゆっくりと近付いてくる。


 「ふーん。糸にかかったのは小さな方なのね。魂獣二体か…まあ、贅沢は言ってられないわね。さっさと始末しちゃいましょうね」


 蜘蛛女が笑いながら、レイブンにとどめを刺そうと歩み寄る。


 「ストック・リリー・クローバー!?何でお前がここに?死んだのか…だとしたら魔王様は?」


 レイブンは知ってる魂なのか蜘蛛女に話しかける。蜘蛛女は怪訝な表情でレイブンに問いかけた。


 「なあに~カラス!私の名を知っているお前も同じ世界から来たのかしら?悪いけど配下のカラスなどいちいち覚えていないわ。そうね~魔王様直轄のクローバー隊は全滅したわよ。カラスがどの時点で死んだかはわからないけど…最初の勇者が四天王のレイブーン・クローバーを殺して、その後に私達がその勇者を殺したけど。私を含めて残りの四天王の3人も魔王様と共に後からきた勇者に殺されたわ。あれはないわよ~!本当に腹が、たつわ!」


 「後からきた勇者??」


 レイブンがもがきながら蜘蛛女に問いかける。


 「そうよー!人間って本当にずる賢いわよね。だって、あの後、勇者が4人も来たのよ!信じられないでしょー?化け物みたいな力を持つ勇者が後から4人よ!人間の国が協力して同時に各国がそれぞれ1人の勇者を呼んだのよ。まさか魔王領の周辺、5ヶ国が協力して同時に勇者召還をしているなんて…思わないわよね! 弱い人間の癖に姑息な手段に出るなんて。まあ~いっぱい喋ったけど、そういう事よ。魔王様も私たち四天王も今は全滅…。折角、邪魔なレイブン・クローバーが罠にかかって死んだのに残念だわ。でも良いの、私もっと強い魔王様が納める世界を探して転生することにしたから」


 蜘蛛女はニタリと笑い長々とした話に終わりを告げた。


 「さあ、カラスもトカゲも、私の新しい出発の糧になりなさい!」


 もう話すことは何もないと言わんばかりに、レイブンに蜘蛛女はとどめを刺そうと本体の蜘蛛の口で噛みつこうと前のめりになる。


 それを見た僕は必死だった。


 ここまで一緒に行動していた。仲間だったレイブンがやられる。


 何としても助けたい!!


 兎に角レイブンを助けたい、その事で頭がいっぱいになった。それと同時に胸の奥が非常に熱くなる。


 自分の体の様子が何だかおかしいけどレイブンを助けたい思いで力一杯、蜘蛛女を睨み付けた!


 次の瞬間!!

 

 僕の口が自然と開き高まった熱が身体から放出された。


 ごおおおおおおおおおおおおおおぉーー。


 大トカゲが口から炎を吐く!


 それは瞬く間に蜘蛛女を包む炎となった。


 ぎゃぁぁぁぁーーーーー!!!


 恐ろしい叫び声をあげ蜘蛛女は炎にのまれながら火を消そうと地面の上を暴れ回る。だが効果はなく火の勢いは止まらない。しばらくすると、それは動かなくなり突然の光と共に物言わぬ魂石とかした。

 

 辺りには焦げ臭いにおいが漂う。

 

 炎を吐いた大トカゲ事、僕も。糸にとらわれていた黒い鳥のレイブンも。そして一瞬にして炎により魂石に変じた蜘蛛女も自分たちのおかれている状況を理解していなかった。



 「お前、ただのトカゲじゃなかったんだな…」


 レイブンが熱で少し溶けた蜘蛛の糸を払いながら言う。


  (えっ、僕?大トカゲじゃなかったの?)


 「知らねえよ~。数多の世界、数多の種族がいる。だけど多分だが、お前は精霊かもしれない。ずいぶん規格外のデカイ、サラマンダーだがな! 普通サラマンダーと言えば手のひらサイズが基本だ。だが、お前の多色性の瞳、それは精霊が持つものに似ている…つまり信じられないが!バカデカイ、火の精霊サラマンダーだな!」


 僕はレイブンに歩み寄る。すると黒い鳥事レイブンも僕も突然、光だした。


 ランクアップだ!!


 僕とレイブンは蜘蛛女を撃退した事でランクアップの光に包まれる。

 

 僕の身体は本人の意思とは関係なく、大トカゲの身体が小さく細くなり人型に変化した。

 人間とあまり変わらない形、160cm位の身長になる。緑の瞳はオパールのように輝き、それに長めのコバルトブルーの前髪がかかり美しい瞳の色が隠される。肩につくか、つかないかの長さの髪と中性的な顔立ちは被ったフード付きポンチョに隠されて性別をあやふやにしていた。


 一方、レイブンは黒い鳥の体から光が大きく膨らみ、今までの小さな体から180cm位の体に様変わりし、飴のように光る琥珀色の瞳、サラサラの黒髪はセミロングで片方の耳元に一本細く筒状の髪飾りで束ねている。それに二束ほどの金色の髪が混ざっている。


 なんとも言えない艶やかさを持つ男になった。そして、やや細めだが筋肉質のしっかりとした体躯、アンシンメトリーの濃いワインレッドの服の上から見ても健康的な成人男性を思わせる筋肉。服の背中上部にあたる布地がやたら少なく、開放的なデザインで肩甲骨が空気に触れてやや寒そうに見えた。

 

 今までの姿かたちとは、あからさまに変貌した二人。

 お互いがお互いをみやり、しばし黙認する。


 「レイブンだよね? 何か細マッチョの男が見えるけど。僕を知らないうちに言葉巧みに呪っちゃってるレイブンだよね」


 フード付きポンチョを被った僕は、長い前髪の隙間からレイブンらしき男に確認のため問いかけた。


 「なんだ、まさか気づいていたのか。てっきり呑気なお前だから、あの問いかけがスキルによる呪いだと、わかっていないと思っていた。まあ、安心しろ、呪いと言う制約だが無限回廊の中央街までは必ず連れていく。あれは他者にリスクが大きいが制約には変わらない。俺の()()というスキルだが…俺が得するように制約が出来るスキルだ。まあ、分かったからといっても魂のポイントは約束通り、これまでと同じく貰う…ちゃんと案内もする」


 「だから安心しな」


 艶やかな黒い髪に琥珀の瞳の男、青年と呼べば良いのだろうか?そんな男が鋭い目付きに相反して、口角を上げニヤリと微笑む。


 「絶対、ちゃんと道案内してよね」


 僕は念を押すようにムッとして、レイブンらしき青年に言った。それに軽く頷くレイブン。


 「あ~りょーかい、りょーかい。それにしても前髪も長いから、よく顔が分からない。お前?何か弱そうだな…華奢で腕も細いし簡単に骨が折れそうな見た目だ」


 「余計なおせわだよ!レイこそ!後ろから見ると服の面積が少ないよね。寒そうだよ」


 まさか、いいか返されると思っては、いなかったのか彼は少し顔をしかめた。そして黒髪の長身のレイブンが僕の顔を覗きこむように体をかがめた。


 小柄な僕はレイブンに覗き込まれ、しばらく前髪越しに見詰め合い、やや気恥ずかしい気持ちになる。僕は慌てて話をそらした。


 「何? そういえば、さっきの蜘蛛の女の人、魂獣?は知り合いだったの?」


 「あ~? あれか…ちょっとした生前の知り合いだな…あれは魂獣じゃない。所持ポイントも多かっただろう?簡単に言うと言葉を話す魂は基本的に魂人だ。念話は例外だぞ、言葉を話すとは違うからな…。勿論、所持するポイントも101以上だから、お陰で俺たちは二人で一緒にヒトガタ、魂人になれた。喜べ!これで中央街に直ぐに行けるぞ!」


 レイブンが背中に黒い大きな羽を一瞬で出して、バサバサと広げ体の調子をみている。羽って出し入れ自由なんだね。レイブンはランクアップしても、やっぱり歩きたくないようで、羽を使ってない状態でも地面からわずかに浮いている。浮遊スキルだ。

 

 何処までいっても地に足をつけない男、レイブン。


 「えっ、ちょっと待ってよ。魂獣でもレイブンは口から声をだして話せたよね。だったら、あれは?」


「俺は元々喋るれる獣だっただけだ。あくまでも基本的にだ。区分が複雑で、だから考えても無駄だぞ。とにかく直立多足歩行ぽい言葉を話す者は魂人だと思え!!つまり高ランクだ。これからは、そう認識して注意しろ!」

 

 「うーん。よくわからないけど、何となくわかったよ」



 つまり、レイブンは九官鳥みたいな鳥だったんだね。

 僕は人知れず納得し頷いた。

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