ドブネズミの歌.2
マフィア“特殊”構成員カイが、廃拠点“ファラリス”にてケヴィンをかくまい始めてからそれから事件の終わりにかけての約一か月のその中で、二週間、ちょうど中間にあたるころ、ひとつの事件が巻き起こる。
6年後の未来、ロムが語り部としてかたる今では、あとから振り返るロム氏が周辺にかたったこといわく、その展開がその後を左右し、あの結末を導き出す根拠となったのだ。という。
――6年後。
「ふう……」
とりのこされた現在のナナシの街の、旧クロー拠点跡地にて闇医者ロムが一人さびしく、仕事に取り掛かるとき、ケヴィン少年とそのときのことは、結末と出会いの初めほどには明瞭に想いだせる、それはきっと一連の出来事のきっかけを与えた事態だからだろう、その時の事を言い表すのにロム医師は苦心する。彼はいまでも、時にカイと手紙をときたま交わすとき、こう回想に注釈をいれる。
「そこですでに問題はおこっていた」
耳の奥を剣戟の刃物と鉄との鋭いぶつかり合うような高音がとどろいたかと思えば、怒号にもにた、しかし厚みと重みのある男たちリズムをたもった呼吸と鼓動とかこだまする。
ロム意思の追憶……そのあたりの誘拐事件の事でロムが思い出せること。それは丁度二週間後、カイとエスピミィアに関する事と舞い込んできた一連の事件にもうひとつ新しい展開が加わり、新たな騒動に発展したという事実だ。
ケヴィンが廃拠点“ファラリス”で共に暮らしていた5人の人達、カイ、ベルノルト、エメ、ケヴィン、ロム医師、誘拐から二週間もたったころに、唐突に夕方、二人のそれも中心人物の2人が、ケヴィンとジルが行方をくらましたという事。
姿を消したのは、それは事件に巻き込まれた当の本人のケヴィンとエメだった、その誘拐の件に関して、カイは取り返しがつかない事をしたと落ち込んだものだが……それはまたあとの話。もちろん誘拐犯はクローファミリーの構成員だった。だからまずは、その大きな一つの事件を取り扱う。
その事件において名目的にも実質的にもクローファミリーの下っ端構成員から付け狙われているケヴィンだったが、そのかくまわれている最中で、丁度ケヴィンはエメとうちとけてきて、安心したころだった。そこでそんな事件が起こる。
「じゃあ、ケヴィンと街にでかけてくるから」
「ああ、護衛は?」
「ベルノルトもたまには休養が必要だから」
肌寒くなる冬と秋との変わり目に、そういって、東地区の、廃拠点ファラリスから近くの街に買い出しにいく、といってでかけたケヴィンとエメの二人はそのまま帰ってこなかった。姿を消してしまったという事だった。
それからロムの脳裏には、二人の捜索、そして二人の狂った戦士たちの戦いを思い出せる。クローファミリーとの幾度にもわたる衝突がおきた。一度の衝突のさなかでさえ、それで何か重大な結末が双方またはどちらかにもたらされるのではないかというほどの、すさまじい銃撃戦が繰り広げられた。その銃声と噴煙、怒号が思いださせられる。東区のある洞窟での出来事だった。それは、誘拐から12日目にアデルというジンクスファミリーのボスが、廃拠点を訪れてからの事だ。いずれの事柄も、この後の事件の発展とクライマックスによって、やっとロムの脳裏に思い出される。悲しいのはその結末と、彼らの行く末だ。今でも考えるとひどく悲しい思いにかられる。ケヴィンとエメの誘拐事件に関してはもちろんその後、カイというファミリー内で“対サイボーグ構成員”と呼ばれている彼の活躍によって、二人は助けられるのだが……。それも、今となっては謎も多い。それもまだ、ロム医師のこの段階の思考ではまだ早い回想だ。
話は遡り、6年前—— ・東区の《ユロン》にて
子供の身長ほどの高さできつい色の赤い何かがゆれた。それはキャップだった。少年たちは、廃工場につみあげられた不法投棄のゴミの山をうろつき、あてもないような挙動不審なしぐさであたりを散策し、時に足で何かをかき分けて探し物をしている。やがて日はくらみはじめ、二人分の影も曖昧な境界を写した。廃品のガラクタに壊れた家電や部品。何者かの生活者に使い果たしてしまった家具ら、溜息まじりにそれらをまさぐる少年たち。やがて空はもくもくと黒い影をもつ雨雲、風もよってきて、景色は徐々に暗くうつりかわりはじめる。
もくもくと何かを探す少年たち。白いゴミだまりと遠くひかる雨雲のない空のコントラスト、廃工場の片隅だった。そのかたすみで湿気のでてきた午後の空気、不法投棄物は何かと生活臭をためこんで、それらによるによって佇む影たちにゴミ山の生臭い匂い、鉄骨のさびた匂い、雨雲がはこびこんだ湿り気を帯びた風が吹き溜まりからよどんだ湿気とともに強烈な生臭さをもつ空気を少年らのもとへ運んだ。その場所は、違法廃棄物が放棄されたゴミの山だった。わりかし鉄や家電製品などのゴミが多かった。その頂点に彼らはたって、あたりを見回したりゴミに目線を写したりしていた。どうやら物色していたようだ。
一人の少年は左ひざにあざをつくって、赤い帽子をかぶっていた。
「ここでは何でも手に入る、人はゴミ箱というが、ここには可能性がたくさんある」
くちびるはカサカサで下は厚いラテン系を思わせる顔立ちと堀の深いつぶらな瞳。その少年がつぶやくと、東洋系でもう一人の小柄な眼鏡の、猫背でクセのつよく硬質な髪の毛をもつ少年は眼鏡をひからせて、白い腕で髪の毛をかいて赤キャップの少年の言葉に応答する。
「そうだね」
ほどなく赤子のものと聞き違えるほどの細かな足音がぽとぽと雨音にまざって、廃墟群の合間をぬってかけぬけてきた。やがて呼吸音のような
音がたち、それらは呼吸を荒立てた野犬らしき犬の群れだった。それらが近づいてきても、
「フーフーフー!!」
やがてゴミの山の頂点にいた彼らをらがかこった、どれも野犬にみえる。一頭だけ首もとに赤いスカーフをまいているようだ。鼻息の新い野犬の群れをみて、眼鏡を付けた少年の方は野犬のむれにあとずさりをして、両掌を顔をおおうように上げおろおろとした様子によって恐れる様子をみせていたが、ひとつには赤キャップの少年の上げた右上の合図によって、その後に続く口笛によって、総じてしかし彼らは、犬たちをてなづけている様子があっり、落ち着いた様子を見せ始めていた。眼鏡の少年が、それにほっとあんどしたように胸をなでおろした。赤キャップの少年のほうは、相方の一連の動作についてはきにもとめていなかったようで、ポケットからとりだしたころころとしたコーティングのある丸く赤いガムを左手のひらから右手のひらにころんとうつして、ひとさしゆびでまるをつくり、上からおやゆびでおさえ、勢いをつけてひとさしゆびをはじいて、その上にのせたガムが上空にとんだのをみてがぶりとかぶりついた。
「けどさあ、もはや、クローさんの加護などなきにひとしい、俺たち、出頭すべきじゃないか」
「警察にいってどうなる、この東区じゃ、マフィアや裏社会とずぶずぶだよ」
「俺のおやじはもういねえ、それでも、生きて行かなくちゃならないんだ、別のマフィアにでも囲ってもらうさ」
「ジンクスファミリーか」
赤キャップの少年は、言葉なく、うなづいた。そのうち天空から湿気とともに小雨がふりそそぎ視界がぼやけるほどに小さな雨がふりそそいでいた。勢いは強いが小さな雨粒たちで、防ぐつもりのい少年たちはただ額を掌でかくしてしのぐ様子だった。赤キャップの少年がぼやく。
(オイルくせえ)
そういって、頬をパーカーの袖でぬぐう。もう片方の少年が、ゴミ山の中の何かにゆびさして、一度緑色のバンドが刺繍されたシャツの裾からハンカチを出して手を拭いていた、すでにオイルまみれだった。やがて何かに気づき、ゴミ山の中からその廃棄物のひとつを拾いだして、片方の手、左手の中でころがした。
「これは、こんなもの、どうして捨ててあるんだ」
「……」
沈黙で返答するがしかし、赤キャップの少年の想いもこの少年とまた同じだった。彼らはふと、機械天使の像をもった。するとたちまちその視界と思想の中にはこの国に息づく何ともいえない信仰と国民性の住み家が、彼らの脳裏をかすめる。
「機械天使の物語、この像をばかにするやつは、ここでは暮らしていけねえ」
誰もが裏切ることのできない象徴とアイコン。どんな貧乏な暮らしをしていようと、優れた地位を手に入れていようともこのパンドラにいて避けられない思想。きっとだれもが、サイボーグ化する事を夢見て、そんな国を支える神話とサイボーグの産業構造と工業の隷従に何かしら携わろうとしている。
雨雲はさらに湿気と強い雨風をふらせる。はっと少年たちは我にかえる。
「クゥーン、クゥーン」
いつからそうしていたのか、一匹の犬を二匹の犬がおいこんで、喧嘩をしていた、喧嘩をする犬たちをみて、赤井キャップを深くかぶり、クマだらけの眼がふしめがちにそちらにめをやす。犬たちは彼をリーだーとみとめ、赤い帽子に恐れおののき頭を低くして周囲をぐるりとかこんでゆったりと歩き回る。その首筋あたりを赤キャップの少年がなでた。すると犬たちは、くぅーんと弱い声をあげておちついたようだった。
「喧嘩をするな、わかったな」
「リーダー……あんた、“チーム犬飼”のリーダーだよ、やっぱり」
そう、彼らは、チーム犬飼というカラーギャングの一味だった。そして赤キャップは、そのリーダーだったのだ。
今朝早く、5時ごろだった。ファラリス早朝の出来事、また珍しく朝早くおきていたケヴィンは聞えない筈の歌声を聞いて目を覚ました。
「はっ!!」
目が覚めてあたりをみまわす、そこは一階の暖炉、ではなく廊下と壁をへだてて対面に位置する座敷部屋の一角で、敷布団にくるまりねころんでいた。玄関ぐちで人のモノと思われた物音がしていたので、一度顔を洗うためにも廊下にでた。廊下から玄関を左手に首をよじってみるとそこには人影があった。既にロムは起きていてどこかへ出掛けるため車のカギをじゃらじゃらと玄関口いじっていたらしいのだった。小声で彼からよびかけがあった。
(よお、おきてたか)
ロム医師はこっちへこいと、声は小さく小声でゆびでちょんちょんと手まねきをしていた。
「小僧、今日は俺はいないからな、今から出かけるところで、だが……」
沈黙に耐えかねて小柄な猫背の意思がふたたびでのひらでこいこいとてまねきをした。
「そうだ小僧、少しトレーニングの結果をみてやろう」
少年は、カイについてのあれこれをロムにぶつけた、それはひとつは、彼が対サイボーグマフィアである以上、彼はサイボーグでなくてはありえないという事だ。その件に関して、ロム医師から返答はなかったが、彼が、カイがハンサムで、かつ知的な人物であることには、ロム医師は同調した。
「だが小僧、あいつを目指してはいけないぞ、あいつはなあ、あいつは、ありえない存在なんだ、あいつは矛盾を抱えている、それをお前にだまっているだろう」
それはともかく大きな音をだせないので、こうして玄関口で、ケヴィンの小さな身長を補い蔽うようにして、ロムがその拳銃のかまえをみた。しかし拳銃にはセーフティ・ロックをつけたままだった。
「カイさんからは拳銃をおおうように、こうやって持てといわれたんですが」
ケヴィンは添えた左手をくいこませるように拳銃のグリップつよくにぎった。
「けれど僕はこっちのほうがなじんで、左手はほとんどそえるだけにします、こっちのほうが見た感じの都合のよさと自分の中の直感との差をかんじます、こっちのほうが、カイさんがいうよりも自分に合うと思う、それをとらえて行こうと勝手に思っているんですが」
「うむ」
ロムのほうはやはり、少年は知的だと感じていたが指裁きをみてさらに感慨深げにうーんとうなっていた。少年はその沈黙の間に少し不安を感じていた。
その少年の想いとは裏腹に、カイがとりつけた練習の本質は、その姿勢と自分にあったくせを見出す事こそが肝心だった。それを医師もしっていたので、ロムはそのために小さなうなり声をたてて、少年に言葉をかけていた。
「お前は筋道がいい、あいつに近づけるかもしれない、しかし—―しかしな……」
口どもる彼の意図を少年なり少しくんだ、つまりは少し気にかかる事でもあるのだろう、それは先ほど彼自身が、ロム医師自身が発した言葉に関連する、彼の言葉を裏付ける何かなのだろう。
「一件無意味にも思えること、合理的でないものごと、そこにこそ人間の本質はやどる。しかし体感できるものと、最も合理的な事とは少し違う事がある。たとえばお前にとっての愛情が、人にとっては憎悪に見られたりする事もある。その意味でお前の洞察力は確かだと、俺は認める。だからお前は、その体感と、合理的な事とのズレを、幼いながら理解したという事だ。だがあいつは、つきつめて何かを追い求める、それはあいつの過去経験した出来事そのものがはらむ矛盾なのかもしれない、やつはそれに近寄ろう近寄ろうとしすぎて、時々人間離れした技をみせるんだ、そんなだからあいつは、回りの人間をまきこみ、ときに自分自身にさえ、深い傷をおうのだ」
「深い傷……」
そうロム医師にいわれて思い出せるのは、彼の、カイの額にきざまれた傷痕だ、あれは彼のハンサムな印象をよわめて、見るものにいかつい印象をもたせてしまう。
「おっと忘れ物だ」
早朝に起きているのは珍しいロム医師、まだ眠気がつよく、まるでゆめうつつ、まるで夢の中のできごと。そんな事を想いながら、老人は、彼の寝室である和室へと向かう、リビングにおいてある拳銃をみてふと感づいた、それがだれのものであるか、少年が見抜いているかはわからないが、その銃身は少し左にまがっている。普通ならば直すが何を隠そうほんの半年前その修理をある人間に依頼されたのだ。
「カイ……」
それをもって少年に銃身とともにみせつけた。
「これを見ろ、少年」
「……!?」
玄関口で仁王立ちで惚けた顔をしてなぜだか、玄関へ戻るロムの姿をぼーっと眠そうに追っていたケヴィンのもとへ、医師がかえってきて再び廊下から玄関へのそのそろとおりて、土産物をもってきた、その拳銃—―その拳銃は—―銃身が曲がっている、弾丸は撃てるのだろうか?その言葉は簡単に口をついて疑問の形式で少年の口から出た。
「これは、拳銃なのですか?」
「なあ、あの時、初めて拳銃を使ったとき、お前はその弾丸の軌道をみたか?俺はな、これの修理を依頼された身だからいうが、これはせいぜい一発しか弾はだせない、お前、小鳥が死んだと俺に相談したが、本当にそう思うか?俺はな、冗談じみた事をいうが、あいつのまとう、裏社会で生きのびてきた闘志、あいつがもつ格闘術の精神、気迫、それだけで鳥が落ちたんだと思うよ。あいつはエスピィミア、常人には知る事のできない気迫や気配のようなものを備えているのだと、俺は思うよ」
そういって、じゃらりとマガジンを取り出すと、そこにはいくつか弾はこめられてはいたが、そのいくつかは弾丸は木のつまった薬莢で、いわゆる空砲というもので、マガジンから出てきた最後のひとつに、弾頭がこめられていた。
同じくファラリスでその後、少したったころ。午前7時、二階一室の、ドアから一番遠い壁に向かい合って設置された化粧台の前でアパート管理人、エメが身支度をととのえていた。きしきしと軋む木像の屋根板は、かろうじて雨漏りをふせぐだけのその場しのぎの修復をされたあとがあるだけでボロボロの構造だった。その上に瓦がならぶが、そのひとつふたつは強いかぜでいくらふきとんでもおかしくはない。早朝、静かな室内に人気のない無音があった。
化粧台の前にはエメだけがいて、その表情は自分自身ですらよみとれないほど、力ないものだった、ただその美貌と、丸みを帯びた肢体だけが、彼女自身の若さをまだ際立たせていた。ぼさぼさの髪は、こういう事はなれっことでもいうように、まるでOLかキャリアウーマンであるかのようにぴっちりと左右にわけられていた。そんな髪型もよく似合う女性だった。
「ジル」
そう発した言葉は、かつてカイにつげた、本当の自分の名前。それまで、エスピィミアに拾われるまえでずっと一人で、名前を変えて身よりもなく、苦しく切なく、犯罪を犯しては、素性を変えてすり抜けて来た。けれどその名前は手放さなかった。大事な人に与えられた名前だ。それはエスピィミアの大事な人だった。
胸元でペンダントがゆれた、いつもは服の下にかくしてある。ロケットペンダントで、チャームをひらけばいつでも形にきりとられた写真が見える。
「なぜ、どうして、これ以上深くかかわる事ができないのかしら、カイ」
エメ自身は、昔のような関係に戻りたいとは思っていた、だがしかし、曖昧としてまるで手が届きそうで届かない所にある結論のように漠然としたものだった。あの日、あの時のエスピィミアには大きな心の傷がのこっていて、それが未だに癒えずにいる自分自身や彼の心境には、その言葉は、よりをもどす、それに相応する言葉はふさわしくないだろうと思われた。いくら考えても、ロケットを隠したままのカイの心はかわらないだろう。そう思いつつもよりをとりもどせないでいた。
拠点11日目、アデルの登場は、ケヴィンは、遅れて登場せざるをえなかった、午前の練習のあとでつかれきっていて、二人分の窓辺のソファでよこになりねむりこけていたからだ。
「どうも初めまして」
だがとても簡素な挨拶ですべてが打ち解けたようにおもえた。彼はこんな風にものをいった。
「君のことは、アデルにまかせているから、彼の責任で、君の安全を保障するよ」
そこに含まれる意味合いを、ケヴィンは推測するにいたらなかったが、ひかれた赤いカーテンが、玄関から奥の黒くて長い高級な車両に続いているのをみると、彼は不思議と、ただ彼の威光を信じざるをえなかった。彼は地位ある人物なのだろう、そう思った。
「彼がうちのファミリー、ジンクス・ファミリーのボス、クローなんだよ、ケヴィン、握手を」
「はい、お噂は聞いています、とてもその、紳士的な人だと」
それからケヴィンは、大人だけで話があるから二階へ、と追い払われてしまった。時折階下を見下ろしたり、聞き耳をたてたが誰も廊下に見張りをおかず、ボディーガードさえ、車のそばにたっていて、遠く車が来た玄関からみて真正面奥の方向をみているだけで、だれもこちらをみようとはしなかった。だからケヴィンは、談笑の様子をうかがい知る事ができたのだが、それは本当に、会社の同僚がわきあいあいと話しをするように、くだけた様子でしかなかった、だからケヴィンはそこに大人たちのかかわり方の新しい可能性を感じたのだった。しかし、なぜだかどっとつかれていて、昨日からお腹の調子を崩していたので、ベルノルトに断って、ベッドで眠ると、そのまま夕方まで起きてはこなかったが、あとあとアデルから、また丁寧に知らされた。
「裏社会のマフィア・ファミリーのくだらない抗争と、私たちの、不始末の騒動にまきこんでしまってすまない」
という伝言を預かったと、ベルノルトに言い渡されたのだった。




