佐原誓7
金曜日、佐原と一緒に夕食をとった。そこまではいい。お酒を飲んで、心地良かった。久しぶりに楽しいお酒だったはずだ。そのせいか?はめを外し過ぎたらしい。眼を覚ましたらそこは知らない部屋だった。狭いベッドに俺に抱きつくようにして隣に佐原が眠っていた。しかも、裸で。
――記憶にない。
俺は何をしているのだろう。そう思いながら、俺は動けずにいた。腕枕をしっかりしているから、俺が動き出したら眠っている佐原が起きるだろう。そうしたら、考える時間さえ無くなる。今は昨日何があったのか思い返す必要があった。
昨日の夜、洒落た居酒屋へ行った。佐原に誘われなければ絶対に入らないような店だ。恋人率が高かった。そこで慣れないカクテルを飲んだ。それは甘くはなく、だけれど、結構アルコール率は高かったと思う。佐原は女性らしく華やかな色の甘いカクテルを飲んでいた。会話は弾んだはずだ。桃香の話しを俺が楽しんでしていた記憶がある。それを、嫌な顔をせず佐原はにこやかに聞いてくれていた。だから、調子に乗った。お酒も進んだ。
「陸ってお酒、強いんだね。わたし酔ってきちゃった」
そんな風に言って隣に座っていた佐原は俺に凭れかかってきた。俺も完全に酔っていたから、まんざらでもないように、恥ずかしげもなく肩を抱いた。それは覚えている。俺らしくない行動だったから。そして、それは続いた。そのまま、俺の手は佐原の頬を撫でたり、耳を弄ったりしながら、楽しんでいた。
ここから失敗だったのだろう。佐原がその気になってきたのか、俺の脚の上に手を乗せ、撫でるように動かしたことも覚えている。きっとそこで我を失ったんだ。覚えていない。覚えているのは、目覚めた時、柔らかな陽射しが俺を包んでいて、俺の部屋では考えられない緑色のかわいらしいリーフ柄のカーテンが視界に入ったと言うこと。そして、この状態を認識して、頭を抱えている。これは最悪だ。覚えていないってどういうことだ?きちんと優しくしてあげられたのだろうか。自分の知らないところで、乱暴な事をしていたらそれこそ最低だ。過去が過去なだけに、俺は誠意ある対応ができたのか、それだけが心配だった。
艶めかしい声が聞こえ、俺は佐原を見た。もぞもぞと動き、佐原の眼が開いた。
「おはよう」
甘っとろい口調で、ドキッとする。
「ねえ、俺、誓にひどいことしていないよな?」
「もしかして覚えていないの?」
そっちの方がひどい、と呟くように佐原が言った。その表情はわざと不貞腐れているように見せていて、膨らんだ頬を俺は突いてあげた。
「じゃあ、もう一度やる?」
俺は何となく楽しくなって言った。なんだか覚えていないのが悔しかったのだ。佐原は戸惑うことも躊躇うこともなく、俺に抱きついてきた。だから、俺は佐原と唇を重ね、舌を絡め、すでにむき出しになっている、柔らかな胸に触れた。
陸君のおいた話でした。
次回はちょっと時間が進みます。
今回短かったので、もう一話同時更新!
お付き合いください。




