↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友だと思った男友達が女だった件  作者: 桜空大佐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/8

距離感って大事だよね


 ソファから身を起こすと、玲央がそばに立っていた。

 もしかして寝顔を見られていたのか?


「お、おはよう。玲央は早起きだな。いつからそこにいたんだ?」

「おはよう! さっき起きたところだよ。朝ごはんができるから、顔を洗ってくるといいよ」


 俺は、立ち上がると洗面所で顔を洗う。ちょっと髭が伸びかけている。

 そういえばカミソリって持ってないよな。


 俺は顔を洗い終えてリビングに戻ると、玲央はすでに制服に着替えて優雅に紅茶を飲んでいる。

 朝はトーストとハムエッグと紅茶か。


「朝比奈様はコーヒーと紅茶どっちがよろしいですか?」


 家政婦の落合さんがエプロンで手を拭きながらキッチンから出てきて言った。


「コーヒーをブラックでお願いしていいですか?」

「かしこまりました。ブラックって素敵ですね」

 

 え……? 俺のことなんでも褒めてくれる作戦なのか?


 俺は髭剃りのことを思い出すと、玲央に切り出した。

 ちょっと他人の髭剃りを借りるのは少し気まずい。


「玲央、ちょっと頼みがあるんだけど……髭剃り、貸してくれない?」


 俺は伸びかけている髭を隠すように両手で顎を抑えて言った。

 玲央は紅茶のカップを置いて、きょとんと首を傾げた。


「……あっムダ毛処理のことだね?」

「え? いや、髭を剃るための……」


 玲央はすぐに立ち上がった。


「わかった! 顔のムダ毛処理だよね。ちょっと待ってて。取ってくる」

 玲央は洗面所の方へ行って、すぐに何かを持って戻ってきた。


「これでいい? 顔や首筋の細かいムダ毛を剃るやつだよ。肌に優しいし、ぼくもたまに使うから」


 玲央が差し出したのは、ピンク色の女性用の電動ムダ毛処理シェーバーだった。


「……これで剃れるの?」

「うん。ムダ毛処理用のシェーバー。ちゃんと剃れるよ?」

「いや、待って! 俺が欲しいのはT字のカミソリ!」


玲央はシェーバーを握ったまま、首を傾げた。


「そっか、ごめん、カミソリでいいんだね。ぼくは永久脱毛してるから新しいカミソリはないかもしれないから、探してみるよ」


 玲央は髭を永久脱毛しているのか。さすが美意識高い系男子だな、脱毛サロンは金がかかるのに。

 とりあえず、カミソリがあるようなので貸してもらう。


 玲央は洗面所に引っ込んで探し、ムダ毛処理用のカミソリを探し出してきた。


「これでどう? 親が持ってたものだけど……」


 これって眉毛を剃ったりする顔剃り用のカミソリだけど、たぶん髭も剃れるはず。


「ありがとう。助かるよ」

「そんな、気にしなくてもいいよ。男役でもムダ毛処理は大切だよね。でもこんなカミソリで大丈夫なの? シェーバーの方が肌に優しいよ」


 俺は、玲央に大丈夫だと伝えるとカミソリだけ受け取ると洗面所に戻り髭を剃った。

 バイトしてお金が入ったら永久脱毛しようかな……。


 朝食の後、俺たちは区役所に向かった。

 身分証を発行してもらうためだ。玲央の親が政府関係者ですぐに手配をしてくれたらしく、即日受け取れるらしい。

 もっと数週間はかかるものだと思っていたけど、さすが上流階級の人たちは区役所でさえ特別扱いなんだな。

 なぜか、男役か女役かと聞かれたが、聞かなくても見てわかるだろう。

 俺ってどう見ても男顔だよな。なぜ男役か女役かを聞かれるのか不思議でならない。

 おそらく、マニュアル的な質問をしているだけなんだろう。


 ところで、周りを見回してみるとスーツを着た男性も中性的な顔をしているし、みんなスラッとして美男子っぽい。

 中にはゴツい人もいるけど、それでも肌が異様に綺麗だったりして岡山県って美意識高いのだろうか。


 身分証のマイナンバーカードの申請はスムーズに終わった。

 さっき男役か女役かを聞かれたのに、申請書には性別欄がない。

最近は多様性の時代だし、性別を記載しない流れなのかな。

 政府の特別措置で仮身分証を受け取ると、次は学校へ向かうことにした。


 タクシーに二人で乗り込む。並んで座ると肩が密着する。

 柔らかい感触がするし、玲央って華奢なんだな。

 さらにふわっと良い香りがする。


「なんか女の子の匂いがする」

「え……。ぼくの香水かな? もしかして好きではない香りだった? 」

「そんなことないよ。良い香りがしてるなって思っただけ」


 玲央の横顔は鼻筋が通っていて、目が切れ長でまつ毛も長くて美男子だ。ふっと笑う仕草も見ていてため息が出そうな色気を感じた。

  いかん、俺はなんで男に見とれてるんだ?


 しばらくタクシーで走ると、あれが校舎だよと玲央が指さす。大きな建物が見えてくる。


「玲央が通っている学校って、国立だっけ?」

「そうだよ。白峰学園(しらみねがくえん)って言うんだけど、聞いたことない?」

「聞いたことないけど、名門なんだろう? 俺が転入してもいいのかな?」

「大丈夫だよ、すでに許可をもらっているって親から連絡もらってるから、すぐに受理されると思うよ」


 タクシーを降りると玲央は迷うことなく学園の正門の横にある勝手口から入る。

 すでに授業は始まっていて門は閉められていたのだ。


「もしかして、今日は学校を休んで俺につきあってくれてる?」

「そうだよ。でも大丈夫、ぼくはこう見えても優秀だからね。一日休んでも何も問題がないよ」


 さらっと自慢された気がするが、ツッコミ入れるのも悪い気がしてスルーする。


「その顔は信じていない顔だね。キミは他の子と反応が違うからとても新鮮だ」

「信じていないわけじゃない。こう見えてもってどこをどう見ても玲央は優秀にしか見えないからね。あえて突っ込まなかっただけだ」

「そう思ってくれているのならよかったよ」


 玲央はうれしそうに笑顔を向けると、髪をかきあげる。

 さらさらと風に流れる髪が、キラキラのエフェクトを発しているように見えた。

 イケメンのオーラ半端ないな。


 白峰学園は、巨大な八階建てのビルだった。入口にあった学校案内のパンフレットをひとつ抜き取るとパラパラとめくって見る。

 国の研究機関との連携もあって、かなり専門的な勉強をする課もあるようだった。医療系なのか、ざっと見た限り俺が通っていた高校とは雲泥の差で理系って感じだ。

 ここでやっていけるのかなと、不安になってしまう。落ちこぼれ確定だな、これは。


「蒼ってもしかして緊張してる?」

「いや、こんな立派な学校に入ってついていけるのか不安になってきただけだ」

「大丈夫だよ。教師はみんな教え方がうまいから、すぐになれると思うよ」

「それだといいんだけど……。ところで、俺のクラスは玲央とは別になるのか?」

「同じクラスだよ。だから安心してくれていい。分からないことがあったらなんでも聞いてよ」


 ニコリとこちらを見る玲央にキラキラのエフェクトが現れたような気がする。親切で金持ちで顔が良くて、性格もいいなんて神様は不公平だろ! と思ったものの今の俺は玲央に頼りまくりなのでぐっと言葉を飲み込んだ。


「お手続きは以上です。この後は制服採寸して受け取ってください。教科書はこちらの紙袋に入れております」


 メガネをかけた小太りの事務のお姉さんが生徒手帳代わりのカードと紙袋を手渡してくれた。カードはクレジットカードのサイズで教室やロッカーの鍵にもなっているらしい。

 しかも学食でも決済に使えるそうだ。俺は銀行口座も無くなってしまったので、玲央の親から引き落とされるらしいので気軽には使えないんだけどね。


「制服の採寸だね。ぼくも入学の時以来だから懐かしいな」

「この学校の制服は高そうだけどいいのか?」

「そんなことに気にしなくていいよ。国からの支給だからお金を払うわけでもないから二セットずつ貰っていけばいいよ」


 国の支給だって? マジか、なんて不公平なんだ。俺が通っていた高校なんて十万円以上払った気がする。

 国立って優遇されてるんだな。すでに特権階級としか思えない。それでも、俺はありがたく貰いますけどね。


 男性の係の人が俺を立たせるとメジャーで肩幅を測り始める。手の長さや股下など、手際よくテキパキと測っていくので、あっという間に採寸が終わった。


「肩幅が広くて男役らしい体ですね。しかも背も高くて腕も太いし、ガッチリしてて素晴らしいです!」

「いやいや、そんな褒められるほどではないです。普通ですから。サッカーしてたからかな? 」


 男性はよく見ると男物のスーツを着ているが化粧していて、美男子だった。やたら体を褒められる。

 腕が太いねえー! 背が高くて肩幅も広くて凄いわ!

 なんていちいち触ってくる。オネエ系の言葉遣いもあって、そんなもんかと諦めて早く終わることを願った。

 

 そっと離れると玲央の横に移動する。玲央は部屋の壁側の椅子に座ってニコニコと笑顔で見ていたが、俺が困ってることを察知したのだろう。助け舟を出してくれた。


「採寸が終わったのなら制服を受け取って帰りますので、貰っていいですか?」


 ちょっと怒り気味に玲央が言うと、係の男性はハッと我に返ったように離れると、クイっと眼鏡を上げ、すぐにお持ちしますと商品棚へ向かった。


「玲央、ありがとうな。あんなに触られるとさすがの俺も気持ち悪くなってしまうよ」

「キミはスキンシップは好まないんだね。ぼくもキミに触ってみたかったけどやめておこう」

「……え? 男同士で身体を触り合うって普通なの?」

「え、おかしいかな?」

「おかしくはないけど、親しくない人には触られたくないかな」

「じゃあ、ぼくは?」

 

玲央が俺の顔を覗き込むように言う。


「いや、お前は別だよ」


そう言った瞬間、玲央の顔がぱっと明るくなる。


うっ、なんでそんなに嬉しそうなんだ?


「続きが読みたい」

「気になる」

「頑張って書いて!」

と応援してもらえる方は評価をお願いします。

励みにして頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。