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親友だと思った男友達が女だった件  作者: 桜空大佐


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3/8

居候生活初日

「えっと……、 何か忘れ物ですか??」

 

 ドアの隙間から覗いている美穂さんに話しかけると、慌てた様子でドアを閉め、パタパタとスリッパの音が遠のく。

 なんだ? 俺の着替えを見たかったのか……いや、それはありえないか。

 俺は気を取り直し風呂に入る。

 

 湯船に浸かりながら、俺は突然に岡山県まで飛ばされたこと、親や友だち連絡先がわからなくなり俺の存在したことさえ消えたことに疑問をもったりしたが、いくら考えても答えは出てこない。

 明日にはなにか分かるかもしれないし……と俺は前向きに考えることにしたのだった。 


 玲央が使っているシャンプーやボディソープを手に取る。どれも見たことがない高級そうな物だ。

 

 しかもどれも同じ香りに統一されている。俺なんて香りまで統一しようと思ったことがない。

 

 イケメンってそんなことまで気をつかってるんだな。

 そういえば、ひげ剃りをもってなかった。他人のシェーバーはあまり使いたくないし、たぶん玲央も使われたくないだろう。

 後でカミソリでも借りるとするか。


 ◆ ◆


「……え? 胸がない……」

 

  落合美穂は、ドアの隙間からシャツを脱ぐ朝比奈蒼を見て驚いた。自分たちとはどこか体格というか骨格が違っている気がして、覗きのようなことをしてしまった。

 

 あっさり見つかって声をかけられ、驚いて走り去ってしまったことよりも、筋肉質な背中と振り向いたときにチラッと見えた胸に衝撃を受けたのだ。


 慌てた様子でリビングに入ってきた家政婦の落合美穂を見て、神代玲央は声をかけた。


「美穂さん、どうしたの?」


「あ、あの……、うっかり朝比奈さんの裸を見てしまったのですが……」

「裸を見たくらいでそんな慌てなくてもいいのに」

「いえ、裸は自分のも玲央様さんのも見慣れていますが」

「えっ、ぼくのも見慣れてるの?」

「いえ、たまにですが玲央さんの入浴のときに……、そうではなくて、朝比奈さんはとても筋肉質で、引き締まってるんですよ」


 目を輝かせて、どこか興奮気味の様子に玲央は可笑しくて吹き出してしまう。


「そんなに凄かったの? じゃあ、ぼくも見せてもらおうかな?」


 頬を赤らめて落合美穂は、ほぅと息を吐く。


「あそこまで男役がぴったりの人は初めてです」

「そうだね。蒼って不思議な感じでなぜか放っておけないんだよ。今日も、コーヒーの飲み方がカッコよくてさ、ぼくも今度から真似してみようと思ったんだ」

 

 二人は浴室の方に視線を向けると、蒼が出てくるのを待った。


 ◆ ◆


「お風呂を借してくれてありがとう!広くて驚いたよ」

 

 俺は用意された下着とスウェットの上下を着ると、リビングにいる玲央に声をかけた。


「いいんだよ、ここにいる間は気軽に風呂も使ってくれていいからさ。うん、そのスウェットはキミにはピッタリみたいだね」

「借りてよかったのか? べつに下着だけでも俺はいいんだけど……」

 でも落合さんがいるからそれはマズイか。

 

「なんで下着だけで寝るんだよ。面白いことを言うね。それは買っただけで大きすぎたから着てなかったんだよ。だからキミに使ってもらえて嬉しいよ」


 満足そうにうなづいた玲央は、食事にしようと一声かけると立ち上がったので、俺も後に続い食卓に向かった。

 

 既に食卓には焼き魚に、芋を煮た小鉢、味噌汁などが並んでいた。玲央はセレブっぽいのに庶民的な夜ごはんで安心した。ナイフとフォークでディナーとか想像してたんだけどね。

 テーブマナーも自信がないので、これはありがたい。


「おいしそう! 遠慮なくいただきます」


 俺は、エプロン姿の落合さんに声をかけると、玲央にもいただきますと声をかけて小鉢の小芋を口に入れる。

 ホクホクとして和風だしの効いた小芋が口の中で綻んでいく。


「うまい! 落合さんは料理のプロですか?」

「あら、お世辞でもうれしいです。お口に合いましたか?  」

「はい、最近はコンビニ弁当続きだったので、これほどまともな料理は久しぶりなんです」


 そんな話をしながら和やかに食卓を囲む。

 家政婦さんの落合さんも一緒に食べるので、なんだか久しぶりに賑やかな夕飯になった。


 ふと、玲央の視線を感じて玲央を見るとあわてて目を逸らされた。なんかおかしなことしただろうか?


 

 あまりのおいしさにお茶碗二杯分を食べて、大満足。しかし、居候の身で食べすぎたことに気がついた。

 さっきの玲央の視線はもしかしたら,食べ過ぎを非難する視線だったのかな?


「ごめん、つい美味すぎて食べすぎたよ」

「そんなことは気にしなくてもいいよ! あまりの食べっぷりに驚いちゃったけどね」


 紙ナプキンで口を拭く玲央を見ると、紙ナプキンが少し色づいて見えた。

 もしかして色の付いたリップを塗ってるのか? 男でもメイクする人がいるけど、さすがイケメンは美意識高いんだな。

 俺は感心して見ていると、玲央と目が合った。

 

 気まずさに何か言わなければと咄嗟にさっき気になっていたことを聞くことにした。


「そういえば、さっきご主人様とか聞こえてきたけど、お父さんのこと?」

「え? お父さん?」

「さっきご主人様って言ってたからさ」

 

 俺の言葉に落合さんが

 

「ご主人様はご主人様ですが……」

「あ、ごめんなさい。変なこと聞いちゃったかな?」


 怪訝な顔をした落合さんと玲央を見て、きっとお父さんは亡くなったとか離婚したとか,そんなふうに感じた。

 

 また、変なことを聞いてしまったかもしれない。


「蒼って変な言い方するよね」

「そうかな?」


 どこが変なのかわからないが、地雷を踏みそうな気がしたので話題を変えることにした。


「ところで落合さんは、なんか用事があったんじゃないですか?」

「いえ、とくに用事ってわけではなかったのですが……。あの、とても肩幅が広くて筋肉もすごいですよね。何か特別な訓練を受けていたのですか?」


 落合さんは、両手で湯呑みを持つと目を輝かせてオレを食い入るように見た。

 ヤバい、めちゃ見られてる。なんか面白いことを言わないといけないのかな?

 

「訓練というか、普通に部活で」

「部活動してるんだ!何やってたの?」


 やや食いぎみに玲央が身を乗り出す。


「サッカー部だ」

「凄いなキミは!サッカーは足が早くないとできないよね! 」

「そんなことないけど……五十メートル走は六秒ジャストだから普通かな」


「「六秒!」」


玲央と落合さんがハモって、思わず吹き出してしまった。そんなに驚くことかな?


 二人から足が早いとか筋肉がすごいとか持ち上げられて気分が良くなってしまった。イケメンの玲央に言われて嫌味に聞こえないどころか、ちょっと嬉しい気持ちになってる自分に驚く。イケメンってそばに居るだけで幸福度が上がるって聞いたけど本当なんだな。


 落合さんは食事の後片付けを始めたので、俺はリビングルームに移動する。そういえばこの家にはテレビがないんだ。

 

 確かに俺も最近はテレビを見なくなったけど、テレビがないと静かすぎて落ち着かないから、付けるだけは付けているだけど。

 

 食器を洗う音が聞こえてくる。玲央は風呂に入ると言っていたので、スマホを取りだしてニュースサイトを見る。


 あれ? 官房長官って女性だったっけ? 総理大臣がよく変わるイメージなので、また変わったのかな。

 

 その他のニュースはとくに気になるタイトルはないので、スマホを閉じた。SNSのアカウントもなくなったので、また作り直そうと新規登録をすすめた。

 

 あれ?普通なら男性、女性のチェック欄があったが無い。最近は男性と女性の二種類だけでなくその中間も認知されつつあるみたいだから、性別を入力することをやめたのかもしれない。

 

 登録ができると、さっそくおすすめのタイムラインを見た。 

 普段と変わらない可愛い女の子が踊っていたり、ハプニング動画やら、動物の赤ちゃん動画が流れてくる。

 そんな動画を見ていると、玲央が風呂から上がったようだ。


 

 

 

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