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勇者1「転生①」

英樹視点です

 〜時はかなり遡る〜


 俺の名前は佐藤 英樹。そこら辺を探せば普通にいる高校生だ。ちょっと両親が特殊だが、俺自身は普通の高校生だった。

 ……そう、だった。幼馴染の龍輝と早紀と話していたら急に体が崩れ始めた。その後、世界神さんと言う人に世界を救って欲しいと頼まれた。そして現在俺は世界神に転生させてもらっている。


 しばらく待っていると今まであやふやだった感覚がハッキリとし、一面真っ白だった視界が今度は真っ黒になった。目が閉じていたらしく目を開くと、目の前にはメイド服の青髪で髪色と同じ色の目を持つ美女がいた。


「あ、あうっ。あああぁぁぁぁぁ!」


 次の瞬間俺は泣き叫んだ。

 目の前の美女は泣き叫んだ俺を見てニコリと笑い、隣にいた金髪碧眼の美女へ俺を渡した。その人は先程の青髪の人とは違い、俺を見ると微笑ましげに、まるで我が子を見るような表情で見ていた。


 ……誰だこの人?というかここはどこだ?そしてどうして俺は泣いているんだ?体が上手く動かさない。意識はあるのにまるで俺の体じゃないみたいだ。

 ……もしかしてこれが世界神さんの言っていた転生というやつか?龍輝がいてくれたら教えてくれそうだけど今はどうやら周りにはこの二人しかいないらしい……。どうしよう……。


「おぉっ、生まれたかカーラ!どっちが生まれた!?男の子か?それとも女の子か?」


 俺が混乱していると扉が開いて豪華な服を着た40代半ばの赤髪の男が出てきた。その男は俺を抱いている女性をカーラと呼びながら近づいてきた。


「落ち着いてあなた。元気な男の子が生まれたわ。それよりも見て、この子私たちにそっくりよ。髪の色は私で目つきは貴方にそっくりよ」


「おぉっ、男の子が生まれたか!それは良かった。……ふむ、確かに似ているな。将来この子は良い王になるな」


「ふふっ、そうですね」


「うむ、ウィリアムの方も今日産まれるので余はそちらに行ってくるぞ」


 俺が訳が分からず混乱している内に二人は話を進め男方はどこかへ行ってしまった。カーラと呼ばれた女性は先程の青髪のメイド服の人に俺を預けると何かを頼んだ。

 青髪の人は俺を抱えたまま部屋を出て移動し始めた。しばらくなされるがままに運ばれているとある一つの部屋に運ばれてそこにある大きな籠に俺を入れて青髪の人はどこかへ行ってしまった。


 さて、どうするか。まずは現在の俺の状況を確認していくか。多分俺は世界神さんの言っていた通り転生したんだろう。……とりあえず世界神にもらったと言う『鑑定』を試してみようか。それを使えばある程度分かると言っていたし……。


 __________________


 種族:ヒューマン


 名前:ジーク・フォン・ガルシア(佐藤 英樹)


 レベル:1


 スキル:『鑑定Lv1』 『神剣Lv1』


 称号:『勇者』『王子』

 __________________


 ……なんだこれ、ゲームみたいだな。やっぱり龍輝がいてくれたらこういうのも分かるんだろうなぁ。……いないものは仕方ないし自分で調べていくか。

 えぇと、俺の種族はヒューマンみたいだな。……当たり前か。次にレベルは1なのか。これって2になったりするのかな?スキルは『鑑定』と『神剣』というものがあるんだな。これもレベル1だな……。

 称号は『勇者』と『王子』か。あれ、これって文字通りの意味なのか?王子って王様の息子だろ?俺がそれなわけがないよな。……もしそうならもっと調べていかないとな。さっきの豪華な服を着た男と金髪碧眼の女の人とかな。あれ、だんだん眠くなってきたな。うぅ、逆らえない。どうしようこのままじゃあ、ね…ちゃ……う………。


 それを最後に俺の瞼は完全に閉じて俺の意識はなくなった。


 __________________


 〜3時間後〜


 ……どうやら俺はあのまま眠ってしまったらしい。いくら体が赤ん坊だとしても恥ずかしいな。あとは今の俺の状況も恥ずかしい。


 現在俺はカーラと呼ばれた女性の抱えられている。……その豊満な胸の前で。そう、今は授乳の時間である。まだ全力で拒否できているが力がないためグイグイと押し付けられているのだ。


 どうしよう。本当にどうしよう。まだ拒否できてるけどこの人意外と力が強いからいつか無理やり飲まされそうだ。早く諦めてくれ……。頼む、凄く恥ずかしいんだよ。


「あら、この子本当に飲まないわね。どうしましょう、困ったわ」


 困ったのはこっちですよ!早く離してくれよぉ。


「あぅ、あぁ」


「私のが嫌なのかしら。仕方ないわね、ほらジークこっちならどう?牛のミルクよ」


 カーラはそう言うと先程メイドが持ってきたまだほのかに湯気が昇っている白い液体を俺の方に寄せてきた。俺は今度は抵抗せずにそれを飲んだ。

 それはホットミルクに砂糖を入れたような甘ったるい味がし、そのあと謎の力が体に溢れた。


「これは飲むのね……。私の何が嫌なのかしら?」


 カーラは俺がカーラのは拒否し、ウシのミルクは抵抗せずに飲んだことに疑問を覚えて首を傾げた。


 ……ふぅ、何とかなったな。カーラさんには悪い気がしなくもないけれど、これからはこの牛乳のような液体を飲んでいくか。俺の精神の為にな。


 俺が牛のミルクを飲み終わったことを確認したカーラはむき出しになっている自分のメロンをしまい俺を抱き抱えてまた俺が寝てしまった籠へと戻した。


「あうぁ、あうぅ」


「ふふ、ジークはここで待っていてね。私はあの人と少しやらなくちゃいけないことがあるのよ」


 カーラは俺の小さな手を握ると離れていきどこかへ行ってしまった。しばらくするとあの青髪のメイド服の人が来て、俺の事を一度見ると微笑み扉の傍で待機した。


 さて、どうしようか。何とか危機は脱したけどまだ何も出来ないよな。……しばらくはどうしようもなさそうだし会話から情報を集めていこうかな。




 俺がこの世界で生まれてから約一週間経った。その間食べて寝てを繰り返していたけど、周りの人達の会話から情報を集めてある程度分かったことがある。まずはこの世界が魔法やら魔物やら冒険者やらが溢れたファンタジーな世界だということ、次に俺が王子だということ、それから最近魔族に近くの国が攻められているということだ。

 まずは俺が王子だということは最早諦めている。だって周りの人達の様子がただの赤ん坊に接する態度じゃないんだもん。前世でも見たことがないような煌びやかな装飾をされた豪華な籠と、まるで雲のように白くてふわふわな毛布。メイド服を着た女の人はそこら中にいるし、その人たちはまるで俺を宝石のように扱うからな。

 ……はぁ、はぁ、なんか疲れたな。一旦この話は止めよう。次に魔法や魔物についてはあまり分からなかった。存在自体は世界中の人が知ってるみたいだ。ずっと室内だから分からないけど……。ただ魔法については魔物よりも分かった。どうやらこの世界の人達には魔力というものが存在しており、それを使って魔法を放つんだとか。

 それと近くの国が襲われたことだけど詳しいことは分からないし、確証もない。メイド服の人達の噂として話されていた程度だ。まだ分からないことが沢山あるのでこれからも会話などから調べていこうと思う。




 俺が生まれてから一ケ月経った。あまり情報は得られなかったけど、新しいスキルを獲得した。えぇと、『魔力感知』と『聴覚強化』というのを獲得したらしい。お陰で多くの情報を一度に得られるようになったけど新しいものはなかった。新しく分かったことと言えばメイド服の人は本当にメイドで、王様……俺の父親の名前がアーノルド・フォン・ガルシアだということくらいだ。後は俺が生まれた日に公爵家にも女の子が生まれたらしい。俺とは従妹だな。

 新しく獲得したスキルとかを試しつつこれからも調べていこうと思う。




 生まれてから三ヶ月経った。現在、俺はなんと会話ができるようになった!……喋らずに。ずっと一人で情報の整理をしてて近くにいた青髪のメイドさんにどうにか会話出来ないかな〜、と考えていたら何故か『念話』というスキルを獲得してメイドさんと会話できるようになった。最初はメイドさんも頭に直接響く声にビックリしてカーラさん(ちなみに俺の母親で王妃らしい)に報告しようとしていたがなんとか説得し色々教えてもらった。

 魔法は『魔力感知』『魔力操作』というスキルがないと扱えないこと、魔法を使うためには才能が7割ほど必要だということ。現在人族と魔族で戦争中だということ。スキルや称号は熟練度というものを溜めたり、条件を満たせば獲得するということ、通貨などについて教えてもらった。

 逆に俺からは俺が前世の記憶を持ってること、俺が勇者だということ、後は俺がこれからやりたいことを伝えた。勇者だと伝えた時にも驚いて報告しようとしていたが慌てて引き止めた。

 メイドさんのお陰でかなり沢山のことが分かったな。これからはメイドさんとも協力してこの世界の情報を集めていこう。




 生まれてから五ヶ月経った。メイドさんから聞いた話だと、今日は公爵家の人達と会うことになっている。今まで似たような服を着て同じ日々を繰り返していかけれど、今日は赤ん坊に着せるような服じゃないと一目で分かる程に豪華な装飾が施された服を着替えさせられた。その後久しぶりに会ったアーノルドさんと一緒に来たカーラさんに抱えられて初めて外へ出た。だけど、外に出たのは一瞬で直ぐにこれまた豪華な装飾が施された馬車に乗って移動し始めた。一時間程移動すると馬車が城と言うには少し小さいけれどそれぐらい大きな屋敷の前で止まった。

 門前にいた騎士さんが迎えに来てアーノルドさんと何かを話すと門を開き始めて俺たちを迎え入れてくれた。またしばらく馬車が進んだが、直ぐに止まりアーノルドさんとカーラさんは馬車から降りた。カーラさんに抱えられている俺も必然的に降りることになり、その後は抱えられたまま屋敷の中に入った。アーノルドさんは弟に会いに行くと言ってどこかに行き、カーラさんは了承した後移動するとある一つの部屋の中に入った。中にはカーラさんと同じくらい綺麗な人と俺と同じくらいの年齢の赤ん坊がいた。


 ん?なんかこの子凄い俺の事見るな。……あれ、なんかこの子のこと見たことある気がするなぁ。どこだ?……今世で会ったのはメイドさん達とかだから前世しかいないな。すると俺のクラスメイトか。……鑑定してみよう。俺みたいに名前が出てくるだろ。


 俺は少し考えた後どこかで会った気がする赤ん坊を鑑定した。

 __________________


 種族:ヒューマン


 名前:ラス・フォン・ガルシア(鈴木 早紀)


 レベル:1


 スキル:『鑑定Lv2』『色欲Lv1』


 称号:『勇者』『公爵令嬢』


 __________________



 え……?なんでここに早紀がいるんだよ……。

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