勇者2「転生②」
短いです
早紀がいた。前世でのクラスメイトであり、二人の幼馴染でもある鈴木早紀がいた。
え……?なんでここに早紀いるんだよ。いや、そこは驚くべきことじゃないな。クラスメイトは全員この世界に転生してると世界神さんは言ってたし。いや、まだ分からないな。もしかしたら『鑑定』が失敗したかもしれないしな。と、とりあえず『念話』で話しかけようかな。
『ね、ねぇ、俺の言ってる事が分かる?君は本当に鈴木早紀なの?』
『なんか英樹の声が聞こえてきたわね。目の前の赤ちゃんの鑑定結果でも英樹の名前が出てきたし、ちょっと私疲れてるのかしら?』
……あ、これは早紀だな。声を聞いた瞬間に直感的に分かったな。いや、べ、別に残念オーラが溢れ出てるわけではないけどな!……俺は誰に向かって言い訳してるんだ?
一旦落ち着け俺。この赤ん坊が早紀だという確信がもてたんだしもう一度話しかけるか。早紀も俺だと分かってないみたいだしな。
『早紀、落ち着いて聞いて?目の前で抱えられてる赤ん坊は佐藤英樹だ。姿はかなり変わってしまったけれどね』
『本当に英樹なの?夢じゃない?本物?……ふ、ふえぇぇぇ、寂しかったよぉ。急に体が痛くなって死んじゃってひっく、赤ちゃんになっちゃったのに周りはみんな知らない人で不安だったよぉ』
早紀は俺が佐藤英樹だと認識すると数秒キョトンとした顔になった後急に泣き出してしまった。
『う、うん。寂しかったのは分かったからちょっと泣かないでくれ。ほら、カーラさんと早紀のお母さんが困ってるから』
今まで俺たちを抱えたまま楽しそうに話していた二人だったが、急に泣き始めた早紀に驚いてあたふたと困っている。なんとか早紀のお母さんが頭を撫でて宥めるまでに結構時間がかかってしまった。
『ひっく……ぐすっ。ごめん、ちょっと迷惑掛けちゃった。いろいろあって不安だったのが一気に来ちゃった』
『大丈夫だ。俺も早紀に会えて今まで我慢していたものが一気に溢れ出そうになったからね。……久しぶりに会ったけどまずはこの世界についての情報を共有していきたい。俺から話していくからその後俺が言ってないことで知ってる事があったら教えてくれ』
『うん』
俺は早紀に念話で盗み聞きしたりメイドさんから教えてもらったことで知ったことと現在考えている計画について伝えた。その後早紀からはダンジョンのことや宗教について教えてもらった。
なんでもこの国にはダンジョンがあるらしい。その中では魔物が無限に湧き、資源も無限にあるらしい。詳しくは再生するだけなのだが、いくら取ってもいつの間にか完全に元通りになってるらしい。下の階層程高品質な資源があるんだとか。魔物も同様で倒してもまた出現し、下の階層程強力な魔物が発生しているらしい。
宗教はこの世界では基本的に神聖教というのが主な宗教でこの国の国教でもあるらしい。なんでも世界神さんを崇めており、魔物と魔族は滅殺対象で亜人はヒューマンの下位種族という扱いらしい。ただ早紀が言うには国教と言ってもそこまで厳しくしていないらしく、他の宗教も普通に認めているとか。しかし神聖教の方は違い信徒には教えを徹底させてるんだとか。しかし思想と実力が違いすぎるため結局人間至上主義な宗教となっているんだとか。
『……ありがとう早紀。今日だけで沢山のことを知れたよ。早紀がいればさっき伝えた計画も予定よりも早く出来そうだな』
『当たり前じゃない、私と英樹が揃えばできないことなんてないわ。うるさい龍輝もいないしね。まぁ、英樹の計画が成功すれば直ぐに会うことになるでしょうけどね……』
『……そうだね』
その後は適当に話していたら、用事が終わったらしいアーノルドさんが迎えに来て別れることになった。アーノルドさんの隣にはアーノルドさんにどこか似た金髪の男の人がいた。会話からその人がアーノルドさんの弟であるウィリアムさんで早紀に父親である事が分かった。
二人は聴覚が強化されている俺でも聞こえない小声で何か話すと最後に笑いあって分かれた。来る時と同じ騎士さんが門を開くと馬車が動き出して家(王城)へと帰った。
早紀と初めて会ってから約一ケ月経った。あの後も何回か会うことができ、その度に情報を交換していたりするが目新しいものはなかった。今日は早紀が王城に来ているため以前から考えていた計画の決行しようと思う。
「む?どうしたジークよ。我のことが気になるのか?……ラスもいるのか。カーラ達は何をしているのだ」
アーノルドさんが言う通り俺は現在早紀と一緒に父親の所に来ている。
「ほれ、カーラ達の所へ戻りなさい。と、言っても分からないか……」
『……アーノルドさん、実は俺達は前世の記憶があるんです』
「なんだ今の声は?どこから聞こえたのだ?」
……初めて聞いたら本当に分からないのかなぁ?でもメイドさんは最初に聞いた時に俺の方を向いたからなぁ。早紀とアーノルドさんが鈍いのか?とりあえず早紀と初めて話した時みたいに言うか。
『アーノルドさん俺です。ジークです』
「……最近疲れてるのか?ちょっと休んだ方がいいのだろうか……」
早紀と同じ反応だな。ここまで似てるとまるで本当の家族みたいに思えてくるんだけど……。あ、今は叔父と姪だし一応家族か。
俺がそう考えながら早紀の方を向くと早紀は目を逸らした。どうやら自覚があるらしい。
俺達がそんなやり取りをしていたらアーノルドさんが気づいたのか俺達に向かって話しかけてきた。
「……本当に今のはジークが話したのか?本当に前世の記憶があるのか?」
それを聞いた俺は頷いた。
「……そうか。それでは王として今一度聞こう。我に何の用だ?」
俺はもう一度頷き、アーノルドさんの前に予め準備しておいた物を置いた。
「これは……。冒険者のステータスプレートか?何故これをジークが持っているのだ?いや、それは今は良い。これがどうしたのだ?」
そう、俺はメイドさんに頼んで冒険者が使っているステータスプレートを用意していた。本来『鑑定』を持っている俺には必要のないものだが、今回は他人に見せるために用意してもらった。
『俺のステータスを表示させます。見てください』
ステータスプレートに魔力を送りステータスを表示させたものをアーノルドさんに見せた。
「……本当に勇者なのか。それは分かった。しかし、それでどうして欲しいのだ?」
『はい、お気づきかもしれませんがこちらのラスも勇者です。つまり勇者は複数おり、現在散らばっているため一箇所に集めたいのです。それをお願いしたいのですが……』
アーノルドさんは俺の願いを聞き、顎に手を当てて考え出した。今言うべきことじゃないかもしれないが、アーノルドさんは王と言ってもかなり若い方だと思う。外見は30代くらいで赤髪赤目のイケメンだ。それが顎に手を当てて真剣な顔をしている為、かなりカッコイイ。
「……分かった。三つの条件付きで承諾しよう」
まあ、そう簡単には行かないよな。とりあえず先に条件を聞くか。考えるのはその後でも大丈夫だろ。
『条件とはなんですか?』
俺が条件について問うとアーノルドさんは指を一本立てて答えた。
「一つ目、集めた勇者たちを王国の学校に入学すること」
アーノルドさんは二本目の指を立てて続けた。
「二つ目、有事の際には王国の戦力となること。これは卒業後で構わない」
アーノルドさんは三本目の指を立てて最後の条件を言った。
「三つ目、王国は勇者を保護するだけであり、その後の安全は保証しないこと。例えば王国に対して敵対行動を取った時だ」
……あれ、意外と緩いな。もっとガチガチに拘束されるかと思って身構えいたけどこれなら別に良いんじゃないか?一応、早紀にも確認してみるか。
『早紀はこの条件どう思う?俺は大丈夫だと思うけど……』
『私も大丈夫。そもそも英樹がいいと思うならそうすれば良いじゃない。なんで私に聞くのよ』
『そうですか』
なんか会話は成立してない気がする。本人がいいと言ってるんだし、良いんだろうけどどこか怒ってる気がするのは気のせいかなぁ?
俺は早紀について疑問を持ちつつ、アーノルドさんへ話しかけた。
『条件はそれで大丈夫です。改めてこれからお願いします、アーノルドさん』
「うむ。……分かっていると思うがこれは公には出来ないので時間がかかるぞ?」
『理解はしています』
「ならば良い」
こうして俺とアーノルドさんで勇者を集める計画が実行され、結果、元クラスメイト達を数人を除いて集めることができた。しかし、未だにあいつは見つかっていない。




