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よろず屋 大宇宙堂  作者: ヨネ@精霊王
八章 ドリル少女は引っ越したい!?
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89 不動産事情



「うわー、すごーい! 地上ってめっちゃすごーい!!」


 ウルルは首がねじ切れるんじゃないかと思うほど右に左にと動かしては、目をらんらんと輝かせて地上の風景を楽しんでいた。


「凄いか? 何の変哲もない普通の商店街通りだと思うけどな」


 俺とウルルはアパートを探すために商店街にある不動産屋へと向かっている途中だった。しかし数歩歩くごとに、『すごーい!』とか『なになにあれー!?』とかのオンパレードでなかなか進むことが出来ないでいた。


「ふっしっぎっ〜ふっしっぎっ〜♪ いろんな不思議なものでいっぱいだぁ〜」


 わけもなく郵便ポストを撫でてみたり、電信柱に登ろうとしてみたり、街路樹の葉っぱを食べようとしてみたりと、まるで幼稚園児どころか赤ちゃんレベルのリアクションを繰り返していた。

 そんなウルルの楽しげに笑う顔を見ているだけで、こちらも自然と笑顔になっていくのは何故だろう。それはきっと、邪神の欠片もない純粋さに心が安らぐからに違いない。そして、それと正反対にウルルがリアクションをするたびにピョーンとジャンプをしてプルルンとゆれるお胸を見ては、よこしまな笑みが出てしまうのは何故だろう。それはきっと、避けることの出来ない男のさがに違いない。

 

「うちな、実は地上世界に来るのはじめてなんよ! 話に聞いてたのより全然ええとこでビックリし通しやー! って、しもた!?」


 ウルルは大慌てで口を塞いだ。


「あかんあかん、興奮しすぎてついつい地下帝国訛りがでてしもた……もぉ、恥ずかしいわぁ」


 ウルルはその場にしゃがみこみ、両手で顔を隠してはもじもじと身体をくねらせた。

 

――これが地下帝国訛り!? ただの関西弁じゃねぇのかよ! いや待てよ、もしかすると地下帝国と関西には何らかの繋がりが……


 と、そこまで考えたところで、こんな事は考えるだけ無駄だという結論にたどり着いた。それよりも関西弁……もとい地下帝国訛りを喋るウルルが殊の外可愛いという事のほうが重要だった。


「いや、その喋り方可愛いと思うぞ?」


 おっと、ウルルの素直さに影響されてか、俺も思っていることが素直に口から出てしまった。


「ほんま? ホンマにそう思う?」


 ウルル顔を隠していた手を少し下げて、潤んだ目の辺りだけこちらに見せながら不安げに訪ねてきた。


「おう。俺は嘘はつかないぞ」

 俺は重力に引かれるかのように、自然とウルルの頭を撫でそうになったが、既の所で手を止めた。


――危ない、危ない。頭のドリルは敏感な部分だったんだよな。またしても事案を発生させてしまうところだった。


「ごめんごめん、頭を触るのは……えっ!?」


 頭を触ろうとしたことを謝罪しようとしたのだが、ウルルは何故か目を閉じてキスを待つかのように、俺が頭をなでてくれるの待っていた。心なしかフードの中でドリルがワクワクソワソワしてるかのように高速回転しているのが感じ取れた。


「な、撫でへんの?」

 

 小首をかしげ上目遣いでこちらを見る。


「いやでも、急に触っちゃ駄目ってさっき言ってたろ?」


「そ、そうやったっけ! 別に……撫でても……ええんやけどなぁ……」


 その後なにかゴニョゴニョと言っていたが聞き取れなかった。ただ顔が沸騰しているヤカンなくらい真っ赤になって蒸気を噴き出していた。


「兎に角、その喋り方はウルルに似合ってて可愛いと思うぞ。だから気にすんな」


「うん! なんか自信ついたわ! えへへへ、可愛いって言われるのいい気分やわ〜」


 ウルルはウキウキでスキップしながら駆け出していく。ウィィィンとドリルの回転する音が耳に届く。どうやら上機嫌なご様子だ。だが、待ってもらいたいウルルは地上世界に来たばかりで道など知るわけもなく……


「あかーん! 先に行ったら迷子になってまうわー!」


 半泣きに鳴り駆け足で戻ってきたのだった。



 ※※※※


「と言うわけで、この子にアパートなりマンションなりを紹介してもらいたいんだが」


 俺とウルルは近所にある不動産屋へに来ていた。

 不動産屋の親父は中年太りででっぷりとお腹が出ており、頭もバーコードのようにハゲていた。来店客はどうやら俺たちしかいなく暇そうな感じだったのだが、えらく不機嫌そうな顔をしていた。

 ウルルはと言うと、あんなに元気いっぱいだったというのに、知らない人と会うのが恥ずかしいのか、隅っこ方でフードを深々と被り直しながら小さくなっていた。少し前まであんなに元気いっぱいだったドリルの回転も今は完全に止まっている。


「それでご予算は如何ほどですか?」


 不動産屋の親父の言葉にどこかしら棘があるように感じるのは気のせいだろうか? いや気のせいではない。そうだ、そうなのだ。この俺から発せられる貧乏オーラがこの不動産屋の親父の機嫌を損ねているのだ。どうせこの貧乏人はクソ安い部屋しか探してないんだろ? そんな心の声が今にも聞こえてきそうなほどだった。


「いやぁ予算ですかぁ……。おい! ウルル、予算はいくら位なんだ?」


「えっ? 予算? 予算って何なん?」


 ウルルは唇に人指し指を当てて、首をひねっては考え込んでしまった。


「ちょっと待っててくださいね」


 俺はそそくさと席を外し、ウルルの側へと向かうと小声で耳元で囁いた。


「あれだ、地下帝国もちゃんとお金はあるんだよな?」


 謎の地下帝国人から怪獣探しの依頼を受けたときは、きとんと報酬を支払ってもらった覚えがある。での、きっと地下帝国でも地上のお金も流通しているのだと勝手に思い込んでいたわけなのだが……


「あらへんよ? お金とかあらへんよ?」


 ウルルはキョトンと目を大きくしながら答えた。

 

「ないの……か……」


「でも、これはあるよー?」


 ウルルはパーカーのポケットから大きめのズタ袋を取り出して俺に渡してくれた。受け取った俺の腕にはずっしりとした重量感を感じることが出来た。俺は不動産屋の親父に見つからないように、コソコソと袋の中身を確認する。


「うぉぉっ!? いや、なんでもないです。気にしないでください!」


 大声で叫びそうになったのも無理はない。袋の中には大量の砂金と、更にはダイヤモンド、サファイヤ、ルビーと言った宝石が入っていたのだ。


――砂金だけで数百万円はあるぞ……さらに、宝石の値段を合わせたら……とんでもねぇ!!


 俺はゴクリと思わずつばを飲んだ。この予算ならばマンションを借りるどころか買うことすら出来るレベルだ。


「いやいや、またせてしまいました。予算ならたっぷりあるんで、できるだけいい部屋を紹介してもらえないですかねぇ! あーっはっはっはっは!」


 俺は全身から金持ちオーラを発生させようとしたが、発生したのは胡散臭いオーラだったに違いない。

 ほんとかよ? と、不動産屋の親父は怪しむような視線を投げかけてきたが、そこは商売である。明らかに作り笑顔ではあるが、笑顔を作りつつ物件を調べだしてくれた。


「あぁ、ところで住むのそこのお嬢さんだよね?」


 親父の視線が店の隅っこで今もまだモジモジしているウルルに向けられた。いきなり視線を向けられて、ウルルはビクッと身体を震わせて顔を背けてしまう。


「あ、はいそうですけど」


 いやらしい視線でウルルを見るんじゃねえぞ! と、少し威圧感を込めて俺は返事をした。


「見たところ……外人さんみたいだけど、身分証とかはちゃんとあるんだろうね?」


「はっ!? ちょ、ちょっと待ってください」


 俺は再び席を外し、ウルルのもとへと駆け寄ると、またしても小声で耳元で囁いた。


「あのな、身分証明書とかもってるか?」


「なんなんそれ?」


 ウルルはまるで始めて聞く言葉を耳にしたかのような表情をこちらに向けた。


「持ってないか……」


「うち、それが何かすらわからへんよ?」


 俺はガックリと肩を落とした。『お金は砂金で払います。身分証明書はありませんけど、地下帝国からやってきました!』そんな事を何処の誰が信じるというのか。

 俺は引きつった笑い顔を不動産屋の親父に向けると、


「すみません! この話はなかったことに!」


 それだけ告げ、ウルルの手を掴んでは逃げ出すように不動産屋をあとにしたのだった。

 


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