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よろず屋 大宇宙堂  作者: ヨネ@精霊王
七章 魔王器との邂逅!?
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75 渚のハイカラ巨大ロボ


「殺風景この上ないな。だが、むしろそれがいい」


 降り立った駅は無人の改札がポツンと一つあるだけで、遠目に見れば『公衆トイレかな?』と見紛うばかりの場所だった。だが、今の俺のすさみきった心に、こんな詫びのある佇まいのほうがあっていた。

 駅を出てすぐに、俺の鼻孔に潮の匂いが漂ってきた。きっと海までは徒歩で直ぐなのだろう。ならば、海を利用する観光客などで駅前は栄えてるのかというと――そんな事は全く無かった。


「そして、これまたいい感じの駅前商店街だなぁ。いい仕事してるわー」


 駅から出てすぐの商店街はほぼ死んでいた。店という店が、ほとんどシャッターを下ろして営業をしていないのである。まるで近場に大型ショッピングセンターでも出来て、お客を全部取られてしまったのかのようだ。と、比喩表現的に言ってみたが、なんと本当に大型ショッピングセンターが存在しているではないか!

 その大型ショッピングセンターは、まるでどこぞの西洋の城のような面構えで、周りを威圧するかのようにドデーンとおったっていた。これでもかと言わんばかりに装飾された綺羅びやかなネオンに、何処かで聞いたことのある軽快なBGM、そして悪趣味なショッキングピンクで『激安! 爆安! 超安!』と書かれた旗が所狭しと掲げられていた。

  

「こいつは似合わねぇ……。無粋の極みってもんだぜ」


 俺はできるだけその悪趣味な大型ショッピングセンターを視界に入れないようにして、海へと向かうことにした。

 駅から歩くこと十五分ほどで、俺の視界には浜辺が見えてきた。すでに波が打ち寄せる音が、耳に聞こえだし始めている。

 天気は良い感じに曇り空で、今にも雨が降ってきそう。そしてその曇り空を映しだしたかのように、海の色は濁りきっていた。さらには、肌に刺さるような冷たい海風が吹き、うねりをあげた高波が砂砂浜へと押し寄せてきている。


「まさに今の俺にピッタリと言ったところだな」


 俺はそれを見ただけそこそこ満足した。もう、このまま帰ってしまっても良いんじゃないかなぁとすら思った。だって、勢い余って海まで来たはいいものの、正直糞寒いし、この街観光するようなところもないし。さらに、これを言っちゃあお終いなのだが、俺は別に海が好きなわけでも何でもないのだ。なんか、荒んだ心には崖から突き落とされて誰か死にそうな、火曜サスペンス劇場的な海が似合いそうじゃん? と思っただけなのだ。

 だが、せっかくなけなしの電車賃と時間を使ってわざわざやってきたのだから、もう少しばかりこの寂しさと悲しさと心弱さとを体現したかのような海を散策してみることにした。


「何もないがある! 田舎を見てそんな事を言うやつが居るが、何もないわ、何もないだわな」


 俺は砂浜を五分ほど歩いたが――本当に何もなかった。砂しか無かった。砂浜なんだからそれは当たり前だろうと言われるかもしれないが、俺は砂マニアではないので、砂を見ていても何一つワクワクなどしない。それどころか、靴の中に砂が入り込んでは鬱陶しい事この上ないし、強い波が足元までやってきては容赦なく靴を濡らしてくれた。


「海も壮大だなぁ、でっかいなぁ……。と思いはするけれど、それだけなんだよな」


 満ちては引いていく波。未来永劫延々と繰り返されるその動きに、俺は物悲しさを感じたが、それも五分も見ていればもうお腹いっぱいだった。


「海のバカヤロー!」


 とりあえず叫んでみた。夕日に向かって土手で『バカヤロー!』と叫ぶのと、海に向かって叫ぶのはお約束である。山に登ってヤッホーというのと同じレベルだ。

 さて、突然バカヤロー呼ばわりをされて海のやつは怒るだろうか? いやいや、地球の七割を占めるというトンデモなく大きな海なのだ、大きな心で聞き流してくれるに違いない。

 砂浜の散策にも飽き、海に向かってバカヤローと叫んで気持ちも幾らかスッキリしたところで、オレの心には踏ん切りがついた。


「うん。帰ろう。帰ってお家でゴロゴロしよう。きっと心の傷は時間ってやつが癒やしてくれるに違いない」


 わざわざここまでやってきた自分の行動を全否定しつつ、俺は変えることに決めた。が、その時である、何処からともなく『たーすーけーてー!』の声が聞こえてくるではないか。

 俺が慌てて、祖母声の聞こえてきた場所に視線を向ける。俺が向けた視線の遙か先には、なんだかさっぱりわからない巨大な物体が鎮座していた。

 それも体育座りで……


「なんだあれ……」


 何もないがあるこの砂浜に、本当に何かがあるのである。それもとても巨大な何かが……。

 俺は好奇心に導かれるように、その場所に向けて走った。砂に足を何度か取られてよろけたが走った。そう、今の俺は変化に飢えていたのだ。砂と海以外のものが見たくてみたくて堪らなかったのだ。

 そして、遂にその物体の直ぐ側に到着し、それが何であるのかまざまざと観察した結果俺が出した答えは……。


「本当になんだよ、これ……」


 だった。

 助けを求めた声のあった場所には、立ち上がれば全長二十メートルは軽く超えるであろう大きな物体、それも明らかにメカメカしい装甲板を身にまとった人型のものが確かに体育座りをしていた。更に、そんな巨体であるにもかかわらずなにかに怯えるように小刻みに体を震わせても居た。


――まさか、これが助けを呼ぶ声の主?


 こんな巨大なものが何に怯えて助けを呼ぶというのか? もし、こいつが助けを呼んでいたのだとするのならば、これ以上の恐ろしいものがここには居るということになる。

 あぁ、いまさら言うまでもないだろうが。俺は全長二十メートルの人型の何かしらが居たとしても、それほど驚きはしない。何故ならば、俺の知り合いには全長三百メートルのやつが居るからだ。二十メートルやそこらで驚くような肝っ玉は持ち合わせてはいない。そうは思いながらも、俺の常識ってやつはかなり破綻してきているなぁと痛感するのだった。

 さて、話が脱線してしまった。

 一体この『巨大ロボ』と呼称して良い物体を怖がらせているものとは何であるのか? それはすぐにわかることになる。


「やーい! やーい!」


「なんだこれーへんなのー!」


「えんがちょー!」


「うんこつけてやれー!」


 口々に罵倒を続ける六人ほどの鼻垂れ小学生が、巨大ロボを取り囲んでいたのだ。しかし、こうなるとこの鼻垂れ小学生はきっとただの小学生ではない、あるはずがないのだ。一体この鼻垂れ小学生に軍団に何が隠されているのか? その正体はすぐにわかった。

 なんと、この鼻垂れ小学生軍団は全員があるものを装備していたのだ。それはある意味究極武器と呼べるものだった。

 そう、鼻垂れ小学生軍団は棒きれの先にとぐろを巻いた見事なウンコを装着させていたのだ!


《や、やめてくださいー! その、そのバッチイやつを近づけないでーっ!》


 巨大ロボは今にも泣きそうな声を上げた。その声は確かに先ほど助けを求めていたそれであり、若い女性の声でもあった。これがロボだとするならば、コクピットの中に若い女性が乗っているのだろうか? ウンコを、それも見事なほどにとぐろを巻いたウンコを突きつけられれば、女の子は泣いちゃうに違いない。俺ですらきっと恐怖に足がすくむであろう。


「とはいえ、あんな見事な代物はは、アラレちゃんでしか見たことねぇわ」


 俺は変なところに感動した。俺は今まで生きてきてあんなウンコを見たことはない。あれは漫画の世界にだけ存在するオーパーツだと思っていた。それが存在するとは……。いや、それよりもあれを放り出したやつはどんなやつなのか? 興味が尽きないところではある。おっと、言っておくが俺に変な趣味はないので安心していただきたい。

 確かに、いかに巨大ロボとは言えあんなものを複数近づけられてはたまったものではない。いや、ロボがどうというより中の人、つまりは女性パイロットがたまったものではない。

 しかし、よくよく考えると一番恐ろしいのは、この鼻垂れ小学生軍団である。普通こんな巨大ロボにウンコ突きつけようとか思うか!? このロボ、全長二十メートルは軽く超えてるんだぞ? 無知と好奇心は最大の武器なのだろうか? 


《いやーっ! たーすーけーてー!》


 ロボは泣いていた。よく見ると冷却液? のようなものを頭部から涙のように垂れ流していた。こうなると、流石の俺もどうにかしてやらないといけない気分になってしまう。金にもならないのに、何故そんな仏心を出したのかと疑問に思うかもしれない。俺はこのとき、ある昔話のワンシーンを思い出していたのだ。そう、『浦島太郎』である。助けた亀に連れられて竜宮城うんぬんのあれである。まぁ、亀のやつはウンコ付きの棒でいじめられては居なかっただろうが……。まぁ、実のところはコクピットからであろう女性の声が、なかなかに可愛らしいからというのは秘密だ。

 

「おいおい! 君たち、そんなもの(ウンコ)をロボに突きつけるのはどうかと思うぞ。かわいそうじゃないか、やめなさい」


 俺は毅然とした態度で浦島太郎のように言ってみせた。

 子供達はウンコ付きの棒をもったまま、こちらを振り向くと動きを一旦止める。そして円陣を組んで相談をし始めた。相談すること約二十秒。なにやら結論が出たようで、リーダーと思われる鼻垂れ小学生が俺の前にやってくると、ウンコの棒をこちらに突きつけながらこう言った。


「なら、五千円ちょうだい!」


 俺はその言葉とウンコのあまりの臭さに絶句するのだった。


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