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よろず屋 大宇宙堂  作者: ヨネ@精霊王
六章 守の秘密!?
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69 宇宙消滅



『痛いのは最初だけ』


 この言葉は事実だった。

 俺のデリケートな部分ケツのアナに挿入された注射針は、刹那の痛みと、開放感と背徳感を併せ持つ快楽を与えてくれた。これはきっと赤炎せきえんさんの注射テクニックが一流だからこそだろう。うむ、自分で言っておきながら注射テクニックとかなんかイヤラシイ言葉だ。

 その注射のスピードたるや、あまりの速さに常人には視認することが出来ないレベルだろう。あえて言わせてもらおう『恐ろしく早い注射、俺でなきゃ見逃してたね!』と。

 

「とりあえず、シャツだけでも着ていてくださいますか?」


 俺はダブダブになったシャツを羽織る。五歳児程度の体になった俺に、大人のシャツは上半身だけでなく下半身をも軽々と覆い尽くしてくれた。これでおちんちんが露出することは避けることが出来る。


「今一体何をしたんですか?」


 俺は尻の穴を抑えながら、指先で変化がないか確かめてみる。が、これと言った肉体的変化は何もなかった。


「あなたの肛門から、わたしの作り出した疑似生命体を注入させていただきました」


 『肛門』美人な女性からこんな言葉を聞けるとは、興奮してしまう。って、今注目すべきはその言葉ではない。『疑似生命体』こっちだ。

 

「な、なんなんですかそれ!」


 俺は尻の穴を覗き込もうとしてもんどり打ってでんぐり返り状態になった。


「安心してください。この疑似生命体により、あなたの身体の内部を調べることも、制御することも可能になるはずです。今だって膨大なデータが流れ込んできています」


「え? でも、データを処理していたパソコンは壊れてしまったんじゃ?」


「ふっ、あんなものは予備の端末でしかありません。これこそが私の本当の……」


 赤炎さんの眼鏡に無数の数字列が現れては、滝のように流れていく。


「これそこが、わたしが里里りりに無理やり作らさせた、最高のバイオコンピュータ『眼鏡三号』なのです。これに比べれば、あんなノートパソコンなどミトコンドリア以下ですわ」


 誇らしげに眼鏡のフレームの端を数度クイックイッよ持ち上げる。そんなことをしている間にも、目で追うことすら困難な量の情報量が眼鏡のレンズには映し出されていく。

 

――三号ってことは、今までに二号と、一号が……。まさか、一号、二号、三号が合体して、最強の眼鏡ロボになるのでは!?


 

 等と、ある意味五歳児らしいアホなことを考えてみたが、まさか本当に合体してロボになるということを、俺がこのあと知ることはなかったし、唐突に出てきた里里りりという名前のことを知りたければ、『いつでも電波は受信している』という別の小説を読めばいいとこっそりと宣伝しておこう。


 話をもとに戻そう。

 話をもとに戻し、視線を赤炎さんに戻すと、またしても赤炎さんは自分自身に注射を打っていた。さらには複数の錠剤を無造作に口の中に放り込んでいる有様。その様は知らない人が見れば、ヤク中のアレのように見えてしまいそうなほどだった。

 が、これはきっとバイオコンピュータ眼鏡三号からの膨大なデータを、人間である赤炎さんの脳で処理するために必要な行動であるに違いない。

 

「加速する、加速する。世界がすべて静止して見えるわ。あぁ、浸っていたい、のめり込んでいたい。あばばばばばばば」

 

 赤炎さんは艶やかな唇から、ポタリポタリと涎を垂らし、意味不明な言葉を連発していた。言動もはやヤク中のアレそのものだが、きっと大丈夫! 大丈夫……だといいなぁ。

 

「何……これ……」


 目まぐるしく右に左に、上に下に、と縦横無尽に動き回っていた赤炎さんの眼球が止まる。


「まさか、人間の体の中に……こんなものが……。しかも、これは一つじゃない。無数の……ありえない。ありえないわ!」


 赤炎さんが髪の毛を引きちぎらんほどにかきむしる。


「確かに人体は……そうだと例えることもあるわ。しかし、それは例えであって本当なわけでないの。なのに、あなたは……あなたは一体何なの!」


 細い指先が俺の首元に襲いかかっては、息が止まるほどに締め付けてきた。が、すぐに赤炎さんの手からは力が抜け落ち、俺はなんとか窒息死を免れることが出来た。

 赤炎さんは両手の指をまるで何かを掴むかのように自分の胸の前に広げながら、放心状態に陥っていた。

 一体赤炎さんは何を見たのか? 俺は赤炎さんの背後にこっそりと回り込む、放心状態を続けているためか、安易に背後に回り込むことに成功した俺は、眼鏡三号のレンズに映し出されている光景を覗き込んだ。

 そこには……銀河が……無数の銀河が映っていた。さらに、その光景はレンズを引いて周りの情景をさらに広大に映し出していく。


「う、宇宙……!? 待って、待ってよ! これ俺の体の中なんだよな? 一つじゃない、二つ、三つ……そんなもんじゃねぇ。俺の体の中に、数え切れないほどの宇宙が……ある?」


 自分の胸を触る、腹を触る、ケツを触る。そんな、そんなこの中に宇宙がある!? どういうことだ。いやいや待て待て、これはコンピューターが擬似的に映し出してるだけで、実際はそんなことは……。


「これは事実よ。実際の映像なのよ。あなたの身体の中には、数え切れないほどの宇宙がある。物理的に存在している。すべての物理法則なんて完全に無視して存在している」


 放心状態から正気? を取り戻した赤炎さんは、目を血走らせながらデータを解析し続けている。

 

「最初にあなたに試飲してもらった薬は遺伝子的に最良の状態へと変化させるものだった。もし、あなたにとっての最善の状態が、この無数の宇宙を開放した状態だとするならば……。このままでは、この今いる宇宙が崩壊することになるわ」


「は?」


 ほんの少し前までは、俺が死ぬかどうかの話だった。それだけの問題だった。しかし今は……この日本が、世界が……どころか宇宙が崩壊するというありえないレベルのインフレを遂げてしまっている。

 

「今の手持ちの機材では、この状況に対処しきれない……。いざとなればパーフェクト虎道こみちをぶつけて……。兎に角、対処するために少し時間をください」


 そう言い終わると、赤炎さんは俺の部屋から飛び出していった。


「え? え?」


 俺は五歳児のままで一人きりにされてしまったのだ。

 一人になった瞬間、怒涛のように恐怖心が俺の身体全体を蝕んでいく。怖い、気持ち悪い、吐きそうだ。俺の体の中に宇宙がある。そんなクソでかいものがつまっている。意味がわからない。わかりたくないどない。もし、このまま若がり続けて、消えてなくなればその宇宙が飛び出してくる? そして、今の宇宙が消滅? 理解できない。出来るわけがない。


「何だそれ……何だそれ……」


 落ち着こう、取り敢えず落ち着くんだ。そうだ、落ち着くために素数を数えよう。


「えっと……そすうって……なんだっけ? わかんないや」


 駄目だ、俺の知能はドンドンと下がってきてしまっている。

 もう時間がない。早く戻ってきて赤炎さん……。

 絶望のあまり涙がとめどなくこぼれた。それどころか今にも失禁してしまいそうだった。

 だが、俺の今までの人生と同じ様に、望むことは訪れずに、反対に最悪の事態が訪れた。

 そう、またしてもあの発作が始まりだしたのだ。


「嫌だァァァァァァ! もう若返りたくなィィィィィィ!!」



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