運命の日――その前夜
シオンたちの計画を知ったその日の夜。
「すっかり遅くなっちまったな」
青はシオンたちの計画を警察本部へ知らせるため、警察署に向かって歩いていた。
「たくっあの酔っ払い、昼間から飲んで暴れて、いい身分だよな」
本当は、昼間黒たちと話し合いをした後すぐに警察署へ報告に向かうつもりだったのだが、何の因果か、途中、昼間から酒を飲んで店内で暴れまわる酔っ払いに遭遇。見過ごすわけにもいかず、酔っ払いを取り押さえ、近くの交番まで連れていったのだが、交番内でも酔っ払いは大暴れをかまし、結果事態が収拾したのは日が完全に沈んだ後のことだった。
「俺今日は非番だってのによ。なんでこんな慌ただしい一日になんだよ」
愚痴りながらも、あと少しで警察署に着くというところで青は突然、足を止めた。
「…………いつまで付いてくる気だ、お前ら」
青は背後に広がる闇に向かって声を投げ掛けた。
「…………」
「そっちがこねえなら、こっちからいくぞ」
青の声に反応する者は誰も居ず。
「…………」
闇に向かって青が一歩、足を踏み出した。その瞬間――
「っ――」
暗闇の中から、五体の怪物モドキが青に向かって一斉に襲い掛かった。
「このっ」
青はとりあえず、一番近くにいた――誰よりも早く、真っ先に青に向かって襲い掛かって来た怪物モドキの顔面をぶん殴り、頭蓋骨を粉砕して絶命(行動不能)にさせた。
ガッ
「ぐっ」
だが、怪物モドキ二体が青の両腕に噛みついた。
グラッ
直後、残った二体の怪物モドキが青に止めを刺そうと襲い掛かった。
「いってぇえな、このやろう」
青は怪物に噛みつかれたままの左腕を思いっきり振り回し、喰らいつく怪物モドキを襲いかかって来る怪物モドキ二体にぶつけた。
ガッ
鈍器のように振り回され、喰らいついていた怪物モドキは堪らず、青の腕から口を離した。
「っ――」
すかさず、青は自身の、怪物(本来)の姿に変化。
鮫のような獰猛な歯でもって、右腕に噛みつく怪物モドキの首を喰いちぎった。
グラッ――
青は右腕に残った怪物モドキの首から上をわずらわしそうに振り払って、そこらへんに放り捨てた。
「「「…………」」」
「こいよ、雑魚ども」
青に挑発され、三体が一斉に青に向かって飛びかかった。
「おらぁ」
ガッ――
力量差は明白。
青は特段策も立てず、力のまま、怪物モドキたちをなぎ倒していった。
グラッ
「…………っ」
最後の一体を倒した直後、暗闇の中からもう一体――隠れ潜んでいた最後の怪物モドキが青に向かって襲い掛かって来た。
「馬鹿がっ」
不意を突いたところで、怪物モドキと青との間には圧倒的力量差がある。真正面から殴り掛かって来る怪物モドキの顔面をカウンターで殴り飛ばそうとした刹那――
「君がね」
「――っ」
青の胸を何者かの腕が貫いた。
「お、お前、は」
青の胸を貫いた者。背後を振り返るとそこにはかつての同族の姿が――
「がはっ」
腕を引き抜かれると、青の胸からは大量の血液が勢いよく噴きだした。
「けん、ご…………」
かつて、どしゃぶりの雨の中で俺は腹から血を流す相棒の名前を大声で叫んでいた。
「死ぬな、死ぬな、健吾、死ぬな」
「…………」
腹から血が止めどなく流れ、止まる気配がない。救急車は呼んだが、恐らく間に合わない。
「海…………」
青の相棒――桐谷健吾は最後の力を振り絞って、自身の相棒に最後の願いを託した。
「銘を、娘の暮らすこの街を、悪党どもから守ってやってくれ。頼むぜ…………相棒」
そうして、青の相棒――桐谷健吾は息を引き取った。
その後、青は自分の相棒を死に追いやった相手を執念で見つけ出し、怒りのまま惨殺。刑事としてではない、大切な友を殺した憎き相手として、復讐した。
死体は誰にも見つからない場所に遺棄した。
そして、青は刑事を辞め、銘の住む地域の交番勤務に転属した。
「すまねぇ…………」
最後に青が見たのは、自身を殺した同族の姿ではなく、最愛の娘と幸せそうに笑い合う、かつての相棒の――『ほんのひとときの幸せ』と呼べる最高の一瞬(一ページ)だった。




