邂逅
団子屋は『六厄災』との戦いを控えているからか、ログアウトした直前よりも遥かに混雑していた。店内に入りきれない人が、外へと溢れてしまっている。
合流まで待つにしてもどうしたものかと頭を悩ませていると、周囲のプレイヤーがざわめき始めた。
「あれ、琥二郎さんだ」
「ひっ、【剣豪将軍】!?なんでこの時間に!?」
俺から見て右手側から琥二郎が、左手側から足利照々が団子屋に向かって近づいてくる。上位ランカー同士の邂逅に緊張が走る。
「うん?」
「あら」
一触即発――には至らず。遠間から顔を見合わせた二人はその場で立ち止まる。二人とも、俺には気づいていないようだ。とりあえず成り行きを見守るか。下手に顔を突っ込んで、悪目立ちしたくない。
「一服しようと思ったら、こりゃまたさっきぶりだねぇ。どうだい、朱天童子と荊棘黃童子の情報は得られたのかい?」
「大した情報はなかったわね。ひとまず判明している情報や基本的な行動パターンは頭に叩き込んできたけれど、実戦で得られる経験には劣るわ。出たとこ勝負になりそうね」
互いに接近して会話を交わす二人を、周囲のプレイヤー達は固唾を呑んで見守る。
「今日の『六厄災』戦にあの二人も参戦するのか」
「上位ランカーが参戦するのって珍しいな、こりゃ今回ひょっとすると初めて討伐出来たり?」
「いや、キツイっしょ。今まで制限時間いっぱいまで生き延びる事すら出来てないんだぜ」
ヒソヒソと二人を取り囲むプレイヤー達の会話が耳に届く。上位ランカーでもそう簡単には勝てないだろう、というのが現状の共通認識のようだ。
実際、荊棘黃童子戦では力の差を見せつけられた。厳しい戦いになるのは明白だろう。加えて荊棘黃童子より強者と思われる朱天童子も加わる。楽観視出来る要素は1つもない。
「ただ、余計な邪魔が入れば勝負どころじゃないわ。荊棘黃童子達と戦う前に露払いが必要になるかもしれないわね」
「足利照々ちゃんが戦ってるのに横槍を入れるなんて命知らずな真似、するようなのはいないと思うけれどねぇ」
周囲の会話など、気にも留めずに二人は言葉を交わし続ける。
「可能性はゼロじゃないわ。琥二郎、あなたが背後から襲う可能性だって有り得るもの」
「ひどいなぁ。オジサンがそんな卑劣な真似をするように見えるかい?」
「白々しいわね。かつてのあなたは不意討ち上等、使えるものはなんでも使っていたじゃない。警戒するに越したことはないわ」
「ははっ、こりゃ手厳しい」
険しい表情を浮かべる足利照々とは対照的にあっけらかんとした顔の琥二郎。そんな二人をよそに、周囲のプレイヤー達が再びざわめき始める。




