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大乱世モノノフサバイバー~怪我で夢を絶たれた元・天才剣士は電脳の乱世で2度目の夢を見る~  作者: ミヤムラ
第1章:再起する剣士

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求めるべきは

返信はすぐに既読がついたが、それ以降の返事はなかった。集合予定の時間まで、まだ時間はある。その時間までどうしたものかと考えたが、そういえば中断されてステータスを上げていなかった事を思い出す。


ヘッドセット型の端末を被って、再びベッドへ寝転がる。電源を起動して意識が電脳の世界に溶けていく。


『つづきから』を選択すると視界が暗転する。ゲームを再開した俺の目に飛び込んできたのは団子屋ではなく、参集殿だった。そういえば再ログインした時はここからだって琥二郎が言っていたな。


参集殿は他のプレイヤーでごった返している。『六厄災』とのレイド戦が始まるからだろうか、次々とプレイヤーがログインしてくる。このまま立ち止まっていると人の波に飲まれかねない。場所を移そう。



「……あ」



踏み出した足の軽さと同時に思い出す。いまの俺は【同田貫正国】を装備している。この装備は元々上位ランカーの装備だ。下手に装備したままだと因縁をふっかけられてしまう恐れがある。


幸い、まだ注目を集めてはいないようなので、急いで初期装備の【無銘】へと変更する。時間になるまで、出来るだけ目立たないようにしておこう。……まあ景と合流したら嫌でも目立つが。


装備を切り替えた俺は集団から逃れるように、プレイヤーの少ない端へと向かう。周囲に誰もいないのを確認した上で、メニュー画面からステータスを開く。


ステータスの振り分けを考える。振り分け可能なポイントは160、これをどう割り振るべきか。


ゲームにおいても、剣道においても、何事も勝つ為には攻めなければならない。そして攻めるには、強さがなければならない。


先ほどの戦闘で荊棘黃童子相手に繰り出した攻撃は、あっさりと止められてしまった。一太刀を届かせるのに、足りないのは力か、速さか。


体力と耐久を上げてもあまり意味がない。どうせまともに喰らえば終わりなのだ。だから上げるとしたら、このどちらかだ。


悩んで、悩んで、1つの結論に辿り着く。速さで撹乱して荊棘黃童子の集中を乱し、足利照々達の助けになる事を考えるなら、速さを求める方がいいだろう。それに速さがあれば、攻撃を回避するのにも役立つ。


意を決して獲得したステータスポイントを全てAGIへと振り分ける。すると身体全体が発光して輝く。力が漲るというよりはその逆で、余分な力が抜けていくような感覚。


この世界で俺を縛りつける足枷はない。両足に力を込めて、上に跳んでみる。現実とは異なり突っ掛かりも何もなく、スムーズに伝達された力が身体を空中へと押し上げる。軽い、まるで背中に翼でも生えたかのような身軽さを感じる。


これで『韋駄天』を発動した状態で全力で地面を踏み抜いたら、どれだけの推進力が得られるのか想像がつかない。ぶっつけ本番で試すのは危険だ。どこかで予行練習をしておく必要がある。


神社の中では戦闘行為は禁止だが、動きを確認するだけなら問題ないだろう。襲われるリスクも少ない。参集殿から離れて、神社内の更に人がいなさそうな場所を目指す。


人気(ひとけ)のない場所を探し求め、周囲を見渡しながら歩いて気づく。神社の敷地はかなり広い。本殿らしき巨大な建物や、神楽や舞を演じる為の舞台があり、敷地内には大きな池もあった。そのほとりには枝垂れ桜の木が植えられている。水面には月が静かに浮かんでいた。


神社の端に行くにつれて、プレイヤーの姿は減っていく。次第に人は完全にいなくなり、周囲を見渡しても誰もいない事を確認した俺は、装備を【薄緑】へと切り替える。スキルをセットして唱えた。



「『韋駄天』」



身体に力が漲る感覚が駆け巡った、その直後であった。

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