魂に火を焚べろ
爆弾が破裂したかのような轟音と共に、青い花火が地面に咲いた。
「ヒィィ!!?」
「勝てるかこんなもん!?」
悲鳴と絶叫が木霊する。その中心には肩に金棒を担いだ鬼が1人。爆心地周辺には上半身が吹き飛んだ大量のプレイヤーと、無数のアイテムや武器が散乱している。捨て台詞を吐きながら全速力で離脱する者もいた。
それから少し遅れて、下半身だけ残っていたのが時間差で爆発した。冷たい光は一塊になると、荊棘黃童子に取り込まれていった。…………は?もしかして『六厄災』も成長するのか?
目を疑うような光景の中に、更に目を疑う事象を視界が捉える。
なんとあの凄惨な状況の中で生き残りがいる。気絶するように仰向けになって倒れる女性プレイヤーが1人。それは先ほど、ひどく混乱していたプレイヤーであった。札のようなモノを抱きしめたまま、ピクリとも動かない。
「オイ、女」
「……ふぁ?……――ッ!ひゃい!?なんでしょう!!?」
「邪魔だからどっか行け、失せろ。巻き込まれてェのか」
「ひゃあい!?はひ!すみませんすみません!消え失せますゴメンナサイ!!」
女は首がもげるんじゃないかってくらいの高速お辞儀を繰り出し、全速力でこの場から離れていった。
そうして残されたのは俺達と、荊棘黃童子。
「……攻撃の意思を感じなかったから静観していたけれど、あなた『六厄災』の1体、荊棘黃童子よね?」
足利照々が、一歩前に出て問いかける。対する荊棘黃童子は、肩に担いでいた金棒を足利照々に差し向ける。
「人に名前を尋ねる時は自分から名乗るモンだって朱天が言ってたぜ。まずはオマエが名乗れ、女」
「足利照々よ」
「ハイよく出来ました」
金棒を地面に突き刺した荊棘黃童子は乾いた拍手を足利照々へと贈る。
「そんじゃあ残ってるオマエらも名乗りな。雑魚が下手に出るなら、殺さねェでいてやるよ」
敵意はない……のか?『六厄災』と遭遇するのはこれが初めてであり、事前情報がないので何が正解なのかがさっぱりわからない。頼りになりそうなカルムはというと、まだ札を構えたままで微動だにしない。大丈夫か?もしかして気絶してる?
困惑しながら周囲に目配せすると、琥二郎と目が合う。琥二郎はそれを察知すると、またもバチコンとウインクを飛ばし、一歩前に出て口を開く。
「オジサンは琥二郎だ。はじめまして」
言い終わった琥二郎はこちらにウインクを飛ばす。挨拶をしろ、という合図だろう。琥二郎達に倣って俺も一歩前に出て挨拶をする。
「トミナです」
自己紹介を終えた俺はすぐそばの蔵景の腕を軽く小突く。
「蔵景」
さて、残るは1人なのだが……と、カルムを見るがもはや地蔵と化していると言っても過言はないレベルで完全に停止していた。
「ちょっとカルムあなたしっかりしなさい!」
「――あいたぁ!!?」
見かねた足利照々が動いてカルムの脳天に鉄拳制裁。衝撃でカルムは前方にたたらを踏む。
「なにやってんのよカルム!」
「こ、こっちのセリフだよ照ちゃん!絶好のスクショタイムを堪能してたのにひどいよ!?」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ始まると、荊棘黃童子が割り込む。
「なにやってんだ、その女はどうでもいい。雑魚には興味ねェ。そこの男もだ。とっとと消えな」
荊棘黃童子は俺に指を差し向けると、弾くような仕草を取った。
雑魚、か。まあ実際今の俺は雑魚だ。なにせこのゲームは始めたばかり。加えて約2年のブランクで全身錆びだらけだ。
蔵景との手合わせで多少は削ぎ落とせたけれど、まだ全盛期には程遠い。雑魚の烙印を押されても仕方ない。
――だが、それがどうした。
一見無理に見えても、やってみないと結果ってのはわからないと教えてくれた者がいる。
俺と同じ挫折を経ても、憧れの星に手を伸ばして届かせた者がいる。
なら、たとえ雑魚と罵られようと、尻尾を巻いて消え去るわけにはいかない。
一度で駄目なら二度、二度で駄目なら三度。出来るまで挑めばいい。
現実では様々な制約があって出来ない事であっても、この電脳の世界では諦めない限り何度だって挑める。
俺は再び戻って来たのだ、場所は違えど剣の道に。
この胸の奥から湧き上がる確かな熱を、決して逃してなるものか。
「いえ、消えません。確かに俺は雑魚かもしれませんが、あなたに興味を持たせてみせます」
「………………へェ? おもしれェ。トミナっつったか?大言壮語も甚だしいその気概に免じて相手してやる。オマエの名前とツラ、覚えたからな。せいぜい後悔すんなよ?」




