見廻あるところ、盗人なし
『団子屋』があった方角とは逆方向の裏路地を抜けた先には、『質屋』と書かれた暖簾がぶら下がった建物が佇んでいた。開かれた入口から覗く店内では、多数のプレイヤーが無造作に置かれたアイテムや武器を物色していた。
「あれが『質屋』だよ。所持制限になった武器やアイテムを預ける場所であり、不要なら売ったり出来るの。あと必要な武器やアイテムを買い揃えられる場所だね。ちなみに『質屋』で暴れたら店に常駐してる『見廻組』に斬られるから注意してね!」
カルムが指差した先には漆黒の袴を履き、同色の着物と羽織を纏った男と女がまるで門番の様に立っていた。見定めるような鋭い視線で周囲のプレイヤーを威圧している。
あれが『見廻組』か、ひと目見ただけで只者じゃない雰囲気だとわかる。彼らの前で下手な動きはしない方が良さそうだ。
「トミナ君は始めたばかりでゲーム内通貨持ってないから、とりあえず私買い物してきちゃうね!ちょっと待ってて!」
そう言い残してカルムは人混みの中へと突っ込んでいった。群衆の隙間を縫うようにスルスルと奥へと入り込んでいき、あっという間に姿は完全に埋もれる。
「そういやゲーム内通貨ってどうやって入手するんだ?」
手持ち無沙汰になってしまったので、隣にいる蔵景に問いかける。
「連続ログインやスコア、ランキングの順位に応じて手に入る。ちなみにやられてもゲーム内通貨は失わない」
「なるほど」
やられたら裸一貫でやり直しというわけではなく、ある程度の武器の備蓄とゲーム内通貨があれば立て直す事が可能ということか。
それからしばらくして、両手にアイテムを抱えたカルムが戻ってくる。
「お待たせ!はいこれ回復アイテムの『兵糧丸』と、武器の耐久値を回復させる『砥石』!削れた武器に当てると耐久値を回復出来るよ!」
手渡されたのは瓶に入った兵糧丸と、めっちゃくちゃ硬い砥石であった。なんか鈍器としても使えそうな硬さだ。
「ありがとうございます」
「どういたしまして!『兵糧丸』はさっき使ってた通りで、『砥石』は完全に折れちゃった武器とかには使えないんだけど、使えば耐久値が回復して一定時間攻撃力がアップするから。タイミング見計らって使ってみてね」
「了解です。そういえば折れた武器ってどうするんですか?」
「刀はほとんどが自動修復するよ。時間経過で待つ感じだね。『鍛冶屋』で手早く修理する方法もあるよ」
「ほとんどってことは、刀でも修復しないのもあるんですね」
「うん。『木刀シリーズ』って呼ばれるのがあるんだけど、それは自動修復しないね。あんまり詳しくはないからよくわからないや。照ちゃんならこういう話、詳しいんだけどね」
「いや全然。とりあえずこのあと役に立てるように頑張ります」
「うん!頼りにしてるね!」




