目は口ほどにモノを言う
「それは?」
「HPを回復させるアイテムの『兵糧丸』。貴方にも渡しておく」
「いいのか?サンキュー」
蔵景から差し出された兵糧丸を受け取る。先程の蔵景を習って口の中に放り込むと、HPが半分回復した。
「……はぁー、すごいねトミナ君、私の想像以上!」
刀を抱えたままの先輩から感嘆の声が上がる。いやまあ自分でも内心かなり驚いている。リアルの怪我を心配する恐れがないからか、思いっきり踏み込めるし、躊躇いなく振り抜けるってのもあるんだろうけど、それにしてもだ。
身体が想像以上に動く。なんだろうな?理由はわからないが、とにかく動きのキレがどんどん増していく。
「『六厄災』の朱天童子と荊棘黄童子でしたっけ?俺、ちゃんと相手務まりそうですかね?」
「上位ランカーの蔵景ちゃん相手に立ち回れるなら十分過ぎると思うよ?少なくとも即オチはないんじゃないかな。……あ、でも、蔵景ちゃんが本気出してないとかならまだわからないかも」
「なるほど。……だ、そうだけどさっきは本気出してたか?」
「…………、3割くらい」
問われた蔵景の視線は僅かに逸れている。昔から景が嘘をつく時は決まって視線が合わなくなるので、体感あれは6割ぐらいだろうか。真剣勝負でガチの時は口数が本当に最低限になり、打ち込みの時しか発しなかったけれど、さっきはちょくちょく無駄な会話をするほどの余裕があった。
「あれで3割かぁ、やっぱり上位ランカーってすごいんだね。照ちゃんとどっちが強いんだろ……?いや流石に照ちゃんかな……?そういえば蔵景ちゃんはまだ照ちゃんと戦ったことないよね?」
「はい、ありません。ちなみに見かけた事もないです」
「あー、ログイン時間。蔵景ちゃんって基本このくらいの時間から?」
「そうです、遅くても23時までにはログアウトしています」
「そっか。照ちゃんログインするの23時以降だからなぁ……、そりゃ合わないか。トミナ君は今日何時までいけそう?」
「自分は何時でも……って言うのは変ですね。まあだいたい蔵景と同じ時間にはログアウトする予定で今のところは」
「私もそれくらいかなぁ。あ、でも刀渡さないといけないから少し残らないとか!受け取ってくれるかなぁ……。受け取ってくれなかったらトミナ君、……いる?」
「いやいや、これ以上は流石に。なんかズルしてるような気分になるんで」
施しと実質押し付けで既に2本。初心者が持つには似つかわしくない刀を蔵景から貰っている手前、見るからに名前も見た目も強そうな武器を更に受け取るのは流石に……。
「デスヨネー。……まあ素直でいてくれるのを祈るしかないかぁ」
渋い表情を浮かべたまま、刀を虚空に収納したカルムはそれから深い溜め息を零した。
「あ、そうだトミナ君。回復アイテム!始めたばかりだから持ってないじゃん!買っとかないと!」
「ああ、確かに」
「それなら私が」
「いやいや、蔵景ちゃんさっきから渡しすぎだから私にも何か出させて!それにトミナ君に手伝ってもらうのに、何も渡さないんじゃ私の立つ瀬がなくなる!」
「いや、別にこれくらい」
「後輩に拒否権はない!黙って受け取るべし!!とりあえずゴメンだけど1回休憩!『質屋』行こっか!」
「アッハイ」
先程までの気弱な態度はどこへやら。先導するように動き出した先輩の後ろ姿を追いかける。




