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二の太刀要らず

消えた、いや違う背後か!?背中で感じ取った違和感を信じて振り向くと眼下からニ刀を交差して迫る蔵景の姿を捉える。


スキルを使用した声は把握していない、ならこの軌道は直線で変化の余地はなし。迎え撃つように上段から切り落とそうとするが、構えた片方の短刀が蔵景の手から離れて真っ直ぐこちらへ襲い掛かる。



「ッ!」



正確無比に放たれた投擲を弾く為、振り下ろした刀の軌道をズラして短刀を弾く。キンッと金属音を鳴らして、弾かれた短刀が回転しながら地面へと落下していく。


間髪を容れずに蔵景は続けて短刀をこちらへ投げた。振り下ろしで隙が生まれ、刀による切り返しが困難な絶妙なタイミングだ。身を捻、――いや手首を返せばギリ間に合う!


辛うじて返した手首で追撃の一手を弾くと、小気味よい音と共に短刀が遥か上空へと跳ね上がる。わざわざ武器を手放してどういうつもり



「――だぁッ!?」



意識が逸れた一瞬を見逃さず、刀を握る拳に衝撃が走る。掴んでいた刀の柄尻目掛けて、無手となった蔵景は渾身の力で振り抜いた。拳の金槌に弾かれ刀はあっさりと手からすっぽ抜ける。刀落とす反則狙いかよ!?


そのまま蔵景は器用に空中で身を翻すと、回転の勢いを利用した廻し蹴りを繰り出した。



「がっ!?」


「『縮地』」



と、同時に蹴りが俺の身体に触れた刹那、蔵景はスキルを使用。落下する短刀をあっという間に捕捉し、地面に触れる直前で掴み取る。


一方で頭上に弾かれた短刀は自由落下を始めているが、俺が弾かれた刀はまだ落ちてくる気配がない。距離的に俺の弾かれた刀を取りに行く方が近いか。


目減りしたHPを気にかけつつ、宙を蹴って刀を掴みにいく。目一杯伸ばした右手で刀を掴む。そしてすぐ眼下に視線を戻すが、蔵景の姿が再び消える。どこに行った!?



「こっち」


「ッ!?」



キョロキョロと視線を振り回した頭上から響く蔵景の声。一体どうやって更に上まで!?と、混乱する思考を遮るように、地表から積み上げられた木箱がガラガラと崩れる音と、屋根の瓦が落ちる音を鼓膜が拾った。建物を駆け上ったのか!!


一本背負い投げをするような構えで、いつのまにか再び揃っていた二本の短刀を打ち下ろしてくる蔵景。俺は頭上に掲げた刀で迎え撃つ。右手で刀を支え、左手で刀の背を押すような姿勢。ギリギリと鍔迫り合いで弾ける剣戟の火花。……繰り出すなら今か。



「『雲――」


「ッ!」



口元を動かした刹那、蔵景の蹴りが襲いかかる。狙いすました腹への蹴飛ばしが伸び切る前に、俺はあえて一歩前に出る。残念だったな、それはフェイントだ!



「なっ」



後退でも回避でもなく前進した事に目を丸くする蔵景。ダメージを受けるが想定の範囲内。力が伝わりきる前に抑え込めば脅威じゃない。



「――『雲耀』!!」



前への踏み込みと同時にフェイントでタイミングをズラした事で生じた隙を見逃さす俺は叫んだ。その直後、まるで目に見えない力に押された両腕が地面へ大きく薙いだ。


驚異的な威力の一撃は短刀をあっさりと粉砕した。桁外れの一振りに押され、振り下ろした刃は蔵景の肩を裂き、身体全身を地面に叩きつけた。それから遅れて衝撃が響き、モクモクと砂埃が舞い上がる。



「……、」



砂埃が晴れると、そこには片膝を地面についた蔵景の姿があった。短刀は二本とも根元からへし折れ、肩口からは青白い光が滴り落ちていた。



「……また負けた」



悔しさを隠しきれない蔵景の声が下から届く。当たり判定が弱かったか、ダメージは与えられたが致命傷とはいかずって感じだろうか。


一方で俺はというと蹴り2発でHPがギリギリミリ残しであった。一歩前に踏み込む事で軽減出来ていなければお陀仏だったな。運に救われたがもう一撃、というかかすり傷でも倒れるぞこれ。


落下死を回避するべく、ひとまず振り下ろした刀を鞘に収めて宙を歩いて地面へ着地。


蔵景は虚空から丸い丸薬のようなものを取り出すと、それを口へと放り込んだ。すると蔵景の肩口から溢れていた青白い光は緩やかに輝きを失った。

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