護身の刃
「ま、俺は不発に終わらなかったけどな」
「少し油断しただけ。次は負けない。……ところで、まだ休憩?」
「んー、先輩ああなっちまったしなぁ」
「……、」
1人で悶々と自問自答で頭を悩ませているカルムを見た蔵景は、数瞬顎に手を当てて思案したあと、ゆっくりと近づいていく。
「あの」
「うーん……うん?あ、なに蔵景ちゃん?ごめんね?私は大丈夫だか」
「【菊一文字則宗】、返しておいてくれますか?知り合いということなら」
「うんっ!?いやっ、そうしてくれるのはありがたいけど……ありがたいのか?あー、えっと、過程はどうあれ蔵景ちゃんが拾った武器でしょ!?そんな簡単に手放していいの!?」
「さっきも言いましたが、刀はまだ沢山あるので」
蔵景はウインドウを操作すると、虚空から大量の刀の雨を地面に降らせてみせる。10や20じゃ効かない本数の刀が無造作に地面に転がる。す、すごい量だなこれ。
「うわっ、私でも知ってる武器がこんなに!?……あっそっか、蔵景ちゃん上位ランカーだから挑まれて倒した分の装備が……」
「はい。所持しきれなくて『質屋』に預けているのもあります。だから数本なくなる程度、全然問題ないです」
「う、うーん?そういうことなら……?…………でも照ちゃん素直に受け取るかなぁ……変な所プライド高いからなぁ……」
「受け取らなかったら、処分はお任せします」
「えぇ!?」
礼儀正しくペコリとお辞儀を済ませた蔵景はスッと反転してこちらへ戻ってくる。
「じゃあトミナ君、そういう事だから、続き」
「え?あ、おう?」
想定外の対応で完全に呆気にとられてしまったカルムは、渡された刀とこちらを交互に見て困り果てている。蔵景もとい景のこの我の通し方、懐かしくはあるが振り回される方はたまったものではない。
そんな事情など知ったことではないと、己のリズムを貫く蔵景は地面に落ちた刀を数本ずつ纏めて掴んでは収納する。その工程を何度か繰り返し、残り数本になった所で蔵景は収納する手を止めた。
「トミナ君、リキャストは終わりそう?」
「ん、ちょっと待ってくれ、今確認する」
メニュー画面からスキルの画面を開くと『韋駄天』のスキルが薄暗くなっており、その文字の上から『リキャスト完了まで残り0:30』と表示されていた。
「あと30秒だな」
「そう。じゃあリキャストが終わったら、装備の入れ替えでスキルが併用出来るか試してみてもらえる?」
「?わかった」
しばらく待ち、リキャストタイムが終了したのを確認した俺は『スキル』を発動する。
「『韋駄天』」
『韋駄天』が発動したのを確認した俺はメニュー画面を開き、装備を【薄緑】から【同田貫正国】へと切り替える。腰に差した刀が切り替わるが、『韋駄天』の効果は継続したままだ。そのまま続けてスキル欄に切り替えると、スキルスロットから『韋駄天』は消え、代わりに『雲耀』がセットされていた
「装備を解除すると、スキルもなんか自動で切り替わる……?らしいな。とりあえず『韋駄天』の効果は持続してる」
「そう」
効果が発揮されているのを示すように大地を軽く蹴って宙に浮いてみせると、それを確認した蔵景は刀を二振り、腰に差して鞘から引き抜く。
「……二刀流?」
蔵景の握る刀のは幅はどちらも短く、いわゆる短刀だった。剣道なら小刀と呼ばれ、今俺が差している刀の半分程度の刀身である。
「見よう見まねで不格好なのは気に留めないでほしい」
そう言い残した蔵景の纏う雰囲気が瞬く間に変質し、静かな闘気が握り締めた刀の先から滲み出る。
俺は慌てて腰から刀を抜いて構える。
落ちるはずのない冷や汗が背中を伝う錯覚とともに、眼前から蔵景の姿が消えた。




