小手調べ
「『スキル』は最大3個まで設定可能で、発動は音声認識。攻撃、防御、移動、特殊の4種類あって、自分好みのスキルを組み合わせて戦いを有利に運ぶことが出来るの」
「音声認識なんスね」
「うん。だから戦闘中に喉元傷つけられたりすると、ゲームシステムが作用してプレイヤーの音声を強制ミュートにしてスキルの発動が出来なくなるから、注意しないといけないんだよね」
首を斬られたら一発アウトだが、傷つけられても致命的なのか。
「喉元斬られて音声ミュートになった場合って、リスポーンするまで治らないって認識でいいんスか?」
「いや、そこはゲームだからアイテムで回復すれば使えるようになるよ。まあ首は弱点だから、そこを簡単に突かれてるようじゃあスキルが使える使えないは些細な事というか」
「首は全力で注意しろって事っスね?」
「うん、そういうこと。それで、最初の内は使える『スキル』が限られてるんだけど、戦闘を繰り返してステータスやスコアが上昇すると使えるスキルが増えたり、レアな武器にはスキルがついていて、装備している状態時のみ解放されるスキルがあるの。その武器のスキルは……なんだっけ蔵景ちゃん?」
「【薄緑】の解放スキルは『韋駄天』。スキルスロットを2つ使う移動スキル。使用後は3分間、AGI上昇、常時移動速度上昇、空中移動、スタミナ減少無効の状態になるけど、効果終了後にスタミナが1分間半減する」
「常時移動速度上昇ってどれくらいなんだ?」
「私が口で説明するより実際に試した方がわかると思う」
「それもそうか」
「『スキル』のセットはさっきの装備と同じ感じでセット出来るよ」
メニュー画面を操作し、スキルリストにある『韋駄天』を装備すると『「韋駄天」を装備しました。残りの空きスロットは1です』と表示される。残りの1枠には『唐竹割り』というスキルがあったので、それを装備しておいた。
「それじゃ早速――――『韋駄天』!」
スキル名を叫ぶと、全身に力が漲るような感覚が体の隅々まで駆け巡る。
視界の左端に映るSTゲージが白く光り輝き、その下には『韋駄天効果発動中:残り時間2:59』と表示されていた。
試しに軽く右に向かって跳ねてみると、羽根のように軽い一歩を地面に踏んだ瞬間、足が爆ぜる。
「――おわッ!!?」
いや、厳密には爆ぜていない。爆発したのかと錯覚するほど莫大な反発がとてつもない推進力を生み出して身体を大きく移動させる。ざっと5mくらいは跳ねただろうか?
「…………これは、随分とピーキーだな」
危うくすっ転びそうになるがなんとかバランスを立て直す。なんだろう、感覚的には長い時間おんぶして歩いた後、おんぶしていた人を降ろした直後の全力疾走のスゴイ版というか。
とにかく足が軽い。軽いのに大地を蹴って返ってくる力がとんでもない。これ移動だけじゃなくて蹴りにも補正入ってそうな気がするけどどうなんだろ。
「慣れたらそうでもない。私は慣れた。貴方も慣れるはず」
「どういう論法なんだよそりゃ」
「習うより慣れよ。……そろそろ私も限界、構えて?」
その一言から漂う空気が豹変する。刺さるような凍てつく視線が俺を見据える。蔵景は両手で刀を正眼の構えで握り締め、じわりじわりと俺との距離を詰める。
「刀を落とさせるか有効部位に当てた方の勝ち。ハンデとして私はスキルを使わない。全力でかかってきて」
「人に全力要求しておいて、自分は手心加えるのかよ」
「……それもそうね、訂正するわ。スキルは使用する。そして、まず小手調べ」
蔵景の構えが変わる。腰をかなり低く落として左足を前に出し、刀の切先を天高く掲げてみせる。右手は愚直なまでに鋭く伸び、左手はそれが崩れぬよう、柄頭をしっかりと支えている。
並々ならぬ攻撃が来る気配を感じ取った俺は平正眼の構えを取る。蔵景の一挙手一投足を見逃すまいと注視していると、蔵景の口元が僅かに動く。
「――――『雲耀』」
「ッ!!」
落雷が落ちたかのような轟音と共に5m以上離れていた蔵景との距離が一瞬で詰められ、迅雷の一太刀が頭上より襲い掛かる。この一撃は受けたら即死と直感が告げたので、俺は刀を握る拳ではなく足に力を伝達してそのまま後方へと下がる。
再び5mほどの距離を取る。蔵景が振り下ろした箇所は斬撃の風圧で深く抉られ、小さな隕石が落下したような痕が出来上がっていた。
砂埃が舞い上がり、蔵景の姿を隠さんと路地裏を漂う。しかし蔵景はその砂塵を邪魔だと言わんばかりに刀を振り抜き、剣圧だけで吹き飛ばしてみせる。
「これは避けれるのね。それじゃあ、次」




