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肉体言語で語り合う

「――ハイじゃあ改めて自己紹介から!私はカルムですヨロシク!!次はトミナ君!」


「あ、うっス。トミナです。よろしく」


「はい大トリで蔵景(くらかげ)ちゃん!」


「蔵景です、よろしくお願いします」


「ハイ二人とも拍手!!…………拍手が小さいッ!!」



どうやら拍手のボリュームがお気に召さなかったらしく、少し強めに叩き続けたら納得した様子のカルムは腕を組みながらふんすと鼻を鳴らした。



「よろしい!じゃあ改めてお二人さんは積もる話をどうぞ!ヤバそうになったら私が介入するので遠慮なく!」


「う、うっス」


「はい」



とはいえ、どこか懐かしさを思い出した先程の些細な言い争いで、そこまで深刻な溝が生じていないとわかったので、深く語るような事はないというか。


まあ景が剣道を辞めた話が気がかりなのは依然として変わらないが、それでもかなりデリケートな話題に自分から首を突っ込んで関係を拗れさせるのもなぁと悶々としていると、蔵景が俺の袖をちょいちょいと引っ張る。



「ん?」


「トミナ君。とりあえず私の事を殴ってないから早く殴って」


「……、この流れで殴るのか?」


「殴らないの?」



キョトン、とした顔を浮かべる蔵景。いやそんな顔で見られても殴る気は毛頭ないんだが……。



「俺がお前や同門のみんなの前から何も告げずに逃げ出したのは事実だし、さっきのは戒めとして受け取っておくよ」


「……そう。トミナ君が殴らないなら代わりに私が1発殴ってもいい?あれは同門のみんなの分、私の分がまだ」



なんか理論として成立してなくないか?と思ったが、そんなことなど気にも留めずにスッと握り拳を構える蔵景。


いやまあゲーム内で殴られる程度で精算されるなら何発拳をぶつけられようが痛くも痒くもないし、景の手が痛むこともないからそれで済むなら全然受け入れるが。


と、サンドバッグになろうとしかけた途端、カルムの手が俺と蔵景の間に割り込んだ。



「はいレフェリーストップ!蔵景ちゃん、いまトミナ君を殴ろうとしたね?」


「しました」


「それはNG!トミナ君の頭上にいまプレイヤーネーム表示されてるでしょ?その状態で蔵景ちゃんが殴り倒したら【辻斬り犯】になっちゃうからやめた方がいい!」


「……、言われてみれば」


「【辻斬り犯】?」


「あ、トミナ君は知らないか。えっとね、『モノサバ』はバトルロワイヤル方式だから必然的にプレイヤーを倒す仕組みにはなってるんだけど、無秩序に倒せばいいワケじゃなくてね?プレイヤーネームが表示されてない時はお咎めなしなんだけど、参集殿の中や今みたいな頭上にプレイヤーネームが表示されているタイミングで倒すのはペナルティが発生するの」



そういや道中で琥二郎が似たような事を言ってたな。それに関連した話かな。



「さっきみたいに蔵景ちゃんが突然殴るのも数回繰り返すとアウトなんだけど、プレイヤーをキルすると一発アウトで【辻斬り犯】になっちゃうの」



説明を聞く限りだと、レッドネームみたいなモンかな。MMORPGとかでよくあるシステムだ。バトルロワイヤル形式のモノサバでも採用されてるのか。



「あと【辻斬り犯】だとやられた時のデスペナルティがエグくて全ステータス8割減が月末まで永続するの。このあと『六厄災』戦控えてるから、蔵景ちゃんには出来るだけ万全の状態でいてほしくて。やるなら立った状態で正々堂々!!」



スッと地面から立ち上がったカルムの頭上からプレイヤーネームの表示が消える。ああ、そうかプレイヤーネームがない状態なら問題ないのか。



カルムに続いて俺も地面から立ち上がり、蔵景もそれに続く。



「よし、じゃあ遠慮なくこい」



両手を広げて受け入れる姿勢を取るが、蔵景は少し迷うような素振りをみせてから口をゆっくりと開く。



「ごめんなさい。やっぱり()()()でいいかしら」



蔵景は拳ではなく、腰に差した刀の柄を掴みながら俺に尋ねる。



「お前の気が済む方法ならなんでも」


「わかった。じゃあ()()()()()()


「ん?」



手に掛けた刀を鞘からすらりと抜いた蔵景は、切先を俺の腰に差さった刀へと突きつける。



「私と貴方がキチンと言葉を交わすなら、やっぱり()()だと思うから」


「……わかった。でもそうなると掛かり稽古になるな。何年ぶりだ?」


「1年8ヶ月ぶり。それと、掛かり稽古じゃなくて地稽古でいい。ただ、剣道からしばらく離れていたトミナ君が攻められるとは思わないけれど」


「なら胸を借りるつもりで挑ませてもらうよ」



蔵景の見え透いた挑発に乗り、俺は刀を鞘から抜いた。――が、ここで失念事項。



「あ」


「……、()()()()?」



しまった俺の刀ってさっき琥二郎に叩き折られてたんだった。いやでも折れたはずなのに()()()()()()()()()()()


たしか中心から真っ二つにされたはずの刀身が、2/3くらいまで復元されている。よーく見ると、なんか青い光が刀身の先に帯びていてじわじわと再生していた。

【初期装備】


初期装備である【無銘(刀)】【無銘(槍)】【無銘(弓)】は戦闘中に折れたり破損して耐久値がなくなった場合、デスペナルティが解除されるまでの間に自動修復を行います。


初期装備は装備変更する事で一時的に装備を解除する事は可能ですが、他のプレイヤーに倒された場合、所持している装備をロストするのでリスポーンした際は自動で初期装備に切り替わります。

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