上位ランカー三竦み
それから聞き耳を立てつつ周囲を探すもアーチェの姿はどこにもなく、これは本当にログアウトしたんじゃないかと判断して早々に捜索を諦める。
ピンク髪なら目立ちそうなもんだけど、どこを見渡してもいないなら仕方ないな、うん。参集殿から出ていくプレイヤー達の流れに沿おうとすると、何やら前方から喧騒が聞こえてきた。
「――――見つけた探した待ちわびたぞ蔵景ェェ!!さァ!お前に預けたオレの【同田貫正国】!きっちり耳を揃えて返してもらおうかァ!!」
腹の底にズシリとくる重厚感と野性味溢れる男の大声が響き渡り、周囲にどよめきが伝播していく。他のプレイヤー達はひそひそ話や野次馬根性をみせてその声の元へと詰め寄っていく。
「おい今の声って剛兎さんだよな?」
「あちゃー、エンカウントしちゃったか。こりゃ戦争だ」
「一度狙い定めたら絶対逃さないモンなぁあの人、血の雨降るぜ」
「お前、どっちが勝つと思う?俺は蔵景ちゃんにエナドリ2本』
「剛兎サンにエナドリ3本。この前は遅れを取ったとはいえ剛兎サンってランカー8位だぜ?ぽっと出の蔵景に連続で負けるなんてありえないって」
「いやー、いくら剛兎さんでも【同田貫正国】失って『雲耀』のスキル使えなくなったのは痛いっしょ。下位スキルの『蜻蛉』が使える【利秋】で代用してるけど、速さ全然違うもん」
「何言ってんだよ、スキル1個使えなくなったからって、別に剛兎サンが弱くなったわけじゃ…………って、おいおいおい嘘だろオイ!?」
「うん?なんだよいきなり興奮して一体…………琥二郎さん!? うわマジか!? なんだ高級みたらし大量に指の間に装備してんぞ!?新技か!?」
「上位ランカー揃い踏みかよ、レイド戦前にテンション上がるなぁオイ!」
周囲のプレイヤーの中から琥二郎という聞き覚えのあるプレイヤーネームが挙がる。そして更にボルテージが上昇していく野次馬達。そうか上位ランカーだったのか、そりゃ通りで強いわけだ。
群がる野次馬を掻き分けてある程度近づくと、人垣に取り囲まれた中心で3人のプレイヤーが対峙していた。
両手いっぱいにみたらし団子を抱えた琥二郎に、先程見かけたクラカゲと呼ばれた女。そして二人が見上げるほどの縦にも横にも巨大な大男であった。オクマをそのまま画像拡大したみたいなサイズ感だ。遠近感バグりそうになる。
「どうどうどう、まぁまぁ落ち着きなって剛兎君。神社内で喧嘩は御法度だよ?ほら高級みたらしでも1本どうだい?VRゲームだから味はうっすらとしかしないけど、食感がクセになるよ?」
「琥二郎!悪いが今のオレはお前に用はない!!……だが団子はありがたく受け取ろう!!」
「ハイどうぞ。えーっと、蔵景ちゃんも1本どうだい?」
「ありがとうございます。遠慮しておきます」
「ハイハイど……あれ?あ、いらない?そっか」
「しょげるな琥二郎!ならばオレが代わりに貰ってやってもいい!!」
琥二郎から受け取ったみたらしを秒でたいらげ、残った串を握り締めて粉々に粉砕してみせた剛兎はその粉末をパラパラと地面に撒き散らす。……さっき琥二郎が神社内は喧嘩御法度とかなんとかで、どうも敷地内ルールが厳しそうだがポイ捨ては大丈夫なんだろうか。
「あー、ダメダメ。残りはアーチェちゃんの分だから。ところで剛兎君、アーチェちゃん見なかった?ピンク髪の女の子なんだけどさ」
「知らん!!今のオレが視界に捉える女はこの蔵景だけだ!!」
「はぁ、ずいぶんとお熱だこと。蔵景ちゃんはどうだい?見かけてないかい?」
「ピンク髪のプレイヤーなら2人見かけた。1人は長髪、もう1人はツインテールだったけれど、どちらも距離が離れていたからプレイヤーネームはわからない」
「あ、ツインテールの方かも。どの辺りで見かけたか覚えてるかい?」
「参集殿から出ていくのは見えたけど、行先はわからない」
「ふむふむ、なるほどね。了解。ありがとう!それとあともう1人、デフォルト顔の茶色っぽい髪でオジサンよりちょっと背が高い男の子、見かけなかったかい?トミナっていうプレイヤーネームなんだけど」
「貴方の見た茶色がどれを指すのかわからないけれど、デフォルト顔の茶髪は1人、焦茶が2人、黒茶は1人いた。これも離れていたからプレイヤーネームはわからない」
精密機械のように淡々と答えるクラカゲだが、話をしている内容がなかなかにぶっ飛んでいる。もしかしてさっきの一瞬ですれ違ったプレイヤーの顔を全部覚えていたのか……?どれだけ目と記憶力がいいんだ。
「……トミナって誰だ?お前知ってるか?」
「いや、知らねぇ。アーチェってヤツなら琥二郎さんが気に掛けてるプレイヤーだって周知の事実だけど」
「ああ、色んな意味でアンタッチャブルガールな。手ェ出すと琥二郎さんに細切れにされるって噂だぜ」
「俺は簀巻きにされて川に沈められるって聞いた」
「てか琥二郎さんがわざわざ名指しで探してるって事は、そいつアーチェに手ェ出したって事か!?どんだけ命知らずだよ!!」
困った。二人の関係はかなり噂話が先行しているようで尾ヒレがつきまくっているが、俺に関しては彼らのおっしゃる通りで弁解の余地がない。で、出て行きづらいなぁ……。
【スキル】
スキルの基本説明。
・プレイヤーは最大3個までスキルスロットに自分好みのスキルをセットする事が出来る。
・スキルは攻撃、防御、移動、特殊の4種類。
・スキルにはリキャストタイムが存在する。一部は戦闘が終了するまで再使用不可となるスキルも存在。
・スキルを発動すると、基本的にはモーションアシストが作動して自動で身体が動いてそのスキルに応じた動きをトレースする。一部スキルは完全マニュアルで操作する必要がある。
・スキルには通常スキルと奥義スキルの分類があり、奥義スキルは特定の武器を装備した場合にのみ使用可能となる。奥義はスキル性能に応じて2~3のスキルスロットを使用する為、プレイスタイルがある程度制限されるデメリットがある。
『蜻蛉』
・攻撃スキル(通常)
刀を天に向かってまっすぐ突き上げるように高く掲げ、右腕に左手を軽く添えて放つ渾身の一振り。当たれば大ダメージだが構えが大きく、外すと硬直で5秒動けなくなる。リキャストタイム10秒。
『雲耀』
・攻撃スキル(奥義)
『蜻蛉』の完全上位スキル。威力と速度が上昇した迅雷の一太刀を繰り出す。外した際の硬直もなくなっているが、代わりにリキャストタイムが15秒になっている。




