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精神状態は夢に映る

 教会に戻ってすぐ、ネロシェイドによって強制的に眠らされてしまった。


 普段なら憤慨するところだが、憎まれ口しかいわないあいつに心配されるというのは、私の精神状態は余程ひどい状況だったのだろう。夢の世界に入り、客観的に自分を見ることでそれが理解できた。

 夢の世界での私は普段の形を保てておらず。ダーリンに出会った頃の、毒におかされていた幼い姿になってしまっているから。


 ネロシェイドにしては珍しく、きつい口調で怒られてしまった。

 焦っても見つかるわけではないのだから落ち着け。闇雲に探すな。独力でどうにかしようとせず、まずは頼りになる者さがせ。すぐやけばちになるのは悪い癖だ――と諭された。

 そして最後に、「頭を冷やして冷静になり、子宮で考えるのではなく頭を使って行動しろ」と。


 悔しいが、指摘されたいくつかの点はあいつの言う通りかもしれない。たしかに私は冷静さを欠いていたし、誰かに頼るなんて思いつきもしなかった。

 でも子宮でダーリンのことを考えるなとは相当に難しい注文である。常識的に考えて無理でしょ。

 それは花に水を欲するなとか、雲に空へ浮くなと言っているようなもの。世界の原理原則に反している。

 まあ精霊に常識を説くのは、虫に文字を習わせるよりも無駄なので、素直に魔法にかけられてあげたが。


「産みなおしたいほど愛している我が子をさらわれて、正常な精神を保てる親などいるはずがないよ。じゃなきゃこんな体にはならない」

「夢の世界は物体としての肉体の代わりに精神がその役割を果たします。夢は心を映す鏡。身体の変化は無意識下による心の具現化とも言えます。ところで、さらわれたとは何の話でしょう?」


 夢の中に当たり前のように現れたのは、以前貴族の屋敷で喧嘩を売ってきた淫魔だった。

 目が合うとすぐにキメ顔をつくり、「自分はこの顔に自信があります」とでも言外に語っているようで大変鬱陶しい。

 どうやらその顔面は、一般的な基準では美しいと評されるものらしい。けれど私には馬糞にたかるハエの生涯よりも興味が湧かない。


「下僕の分際で勝手にしゃべるな」

「ハッ! 仰せのままに!」


 こいつが勝手に私の夢に現れるのはもう諦めた。何度追い払ってもまた次の日には現れるから。

 毎回半殺しにしているというのに平気な顔で出てくる。追い払っても追い払っても現れる様は、徹底的に駆除したつもりでもひょっこり出てくる害虫のよう。

 あまりにもしつこいので、こいつにかまっている時間をダーリンを想う時間にあてようと放置することにしていた。けれど、今回ばかりは害虫の力を借りなければいけない。


「すぐに駆け付けたってことは、また私が眠る前から待機していたんだよね」

「はい。いつお呼びされても良いようにと不眠不休でお待ちしておりました。無論あとをつけるような下品な真似はしておりません。遠所より魂のみを追跡しておりました。プライベートの覗き見は死罪との申しつけ、厳守しております」


 当たり前のことを言って褒めてほしそうにしている。面倒だから無視しよう。


「しかし僭越ながら申し上げますと、睡眠不足は美容の大敵。その美貌が損なわれぬよう、しっかりと眠られた方がよろしいかと存じます」


 他人に自分の容姿を語られるのが心底嫌いだ。生理的に受け付けない。管理しようとするなどもってのほか。

 でもダーリンに可愛いと言われるのは好き。言われるたびにダーリンをもっと好きになる。


「気持ち悪いやつ」

「き、効くぅー!」


 その反応もかなり気持ち悪いからやめてほしい。


「それにしても今日はかわったお姿になられておりますが、どういった心境の変化が起こったのでしょう。随分と醜い子供の姿をしていらっしゃる」


 勝手にしゃべるなと言ったのだからべらべらと喋るな。


「その醜い子供に、ダーリンはためらいもなくキスをしてくれたんだよ」

「ではそのお姿は幼少期の……? 想い人は奥手であると聞き及んでいましたが、いやはや意外と好色といいますか、変わった趣味をしておられるのですね。私は普段の――」


 好色とか趣味とかそういう話じゃない。

 ダーリンは下心の一切ない純粋な善意のみでこの醜さを受け入れてくれたんだ。


「無駄話は時間がもったいない。ダーリンが行方不明になっちゃったから情報を集めてきて」

「行方不明ですか? それで精神に異常をきたしているというわけですか。しかしそれはまたどうして。あれほど目立つ方ならば、行方不明になどなりようがないかと」

「わけあって今は十歳ぐらいの子供の姿をしていて……それがもう食べちゃいたいくらい可愛いの。目に入れても痛くないし、なんならホントに入れてもいい。子宮に入れて産みなおしたい。ロイを出産して血のつながりを作りたい」

「う、産みなおしたところで血は繋がらないかと……」


 どこでもいいから体の中にしまいたいくらい可愛い。


「小さくなっちゃったダー棒もね、お前の矮小な棒切れよりも圧倒的に大きくて凛々しくて太ましくて、とても愛らしいんだから」

「ぐっ、そ、それはそうでしょうね。大人の姿でアレなのですから、生まれ落ちるときには母体に引っかかり難産となったのではないでしょうか」

「下品な話はやめろ。汚らわしい」

「……失礼いたしました。申し訳ございません」


 あれぐらいなら簡単に咥えられそうだけど、今の私はロイのママだからしなかった。

 眠っている間に亀みたいな頭をよしよしはしても咥えるなんてとんでもない。何度も無意識に咥えそうになっていたけれど、「ショタへの同意のない性加虐は児童虐待」というワードをネロシェイドに耳にタコができるほど呟かれていたお陰でなんとか踏みとどまれた。


 以前から相手をその気にさせて襲わせるのがオネショタの醍醐味だと言っていたが、今回の件を経てとても共感できた。多分これは、女として求められる悦びというやつだ。


「話を要約すると、つまりは誘拐されたという話ですね。街で人さらいにでもあいましたか」


 自分で言うのもなんだけど、よくこれまでの説明で理解できたね。

 その察しの良さを活かして私の夢にも勝手に出てこないでほしい。


「そう。だから急いで探してきて。見つけ次第救出してほしいけど、お前は弱いから情報だけ集めてくればいいよ」

「やれやれ、これはまた侮られたものですね。これでも私は純血の魔族ですよ。一等クラスの冒険者ならばいざ知らず、そこらの輩などに遅れはとりはしません。ましてや子供を狙って誘拐するような腑抜けた輩になど狙っても負けられませんね」

「調子に乗るな。誘拐犯を下手に刺激してロイに傷一つでもついたら、お前の心から壊して、そのあとに体を壊すからな」

「その口から発せられると冗談とはとれませんね……。かしこまりました、細心の注意を払って捜索いたします、姫」

「お前が姫って呼ぶな壊す前に消すぞ」

「ではなんとお呼びすれば……」

「呼ぶな。見るな。壁に丸でも描いて話しかけろ」

「クフゥン……!」


 自分の体を抱いて身を震わせる淫魔。


 気持は悪いが気持ちはわからないでもない。私もプレイの一環でダーリンに冷たくされたらビシャビシャに濡れる自信があるから。


 普段からしょうもない悪戯をしては叱られ、そのたび子袋に灼熱が宿るのだ。叱ってくれているときに見せる、ダーリンの困り眉やちょっと荒っぽい声が愛しくて仕方ないの。ダーリンは子宮に訴えかけるのが上手い。ダー棒で直訴されたい。


「股を開けコキ捨てようの穴女」とか命令をされたら即座に準備が完了するだろう。「今日から排泄は全てお前の中にする。尻を拡げて奥まで見せろ専用便女」とか言われた日には、まず間違いなく行為が始まる前にイキ狂う。

 絶対にダーリンが言わない言葉だけど、嘘でもいいから一回は言われてみたい。そして乱暴にキスをされて幸福な未来を視させられながら犯し抜いてほしい。


 だからこいつが興奮するのには共感できるし理解も示せる。でもそれはそれ、これはこれ。こいつが私の命令をプレイの一環として楽しんでいるのは心底に気持ち悪いし許容できるものでもない。


 またダーリンを複数体召喚して、ダー棒による顔面滅多打ちの刑に処してやろうかな。

 以前にもこいつの姿を私に変えてやってみたけど、あれは嫉妬と性的興奮がない交ぜになって頭がおかしくなるかと思ったね。

 こいつが絶望した表情で苦しんでいるのがまったく理解できなかった。


「次に私が起きるまでに手がかりだけでもつかんでおいてくれたらいいから。できなかったら百叩きだからね」

「ひ、百回もご褒美をいただけるのですか!? 失敗したのにご褒美がいただけるとはこれ如何に……職場環境が白すぎて困惑を極めます」


 私はこいつの職場になった覚えはない。ホント気持ちの悪いやつ。


 でもダーリンも私の夫になった覚えがなくとも、世間では夫婦であるという噂が流れていて、徐々にそう認識され始めている。それと似たようなものか。

 事実はあとからついてくればいい。真実なんて世間の認識する事実の前では無力。既成事実こそが最強なんだ。


「百回やるのは私じゃなくてダーリンね。前と同じやつをやるよ」

「え……あっ……」


 指を鳴らすと腕を組んだダーリンが三人、地面から飛び出して淫魔に向けてニカっと笑みを投げかける。ちょっと嫉妬。いや、かなりジェラってきた。私以外に微笑みかけないで。


 淫魔は以前の折檻がトラウマになっているらしく、尋常じゃない量の汗を噴き出して歯をカタカタと鳴らしている。


「お、王子の王子棒による打擲となると、今のコンディションでは一分も耐えられる自信がありません」


 確かにダー棒で頬ペチなどされ続けたら、私でもどうなるか想像もつかない。

 想像もつかないが妄想してみると、一分を過ぎた時点で、舌で迎えている未来が視えた。うひょひょすぎる。


「ただの男になら尻を耕されても快楽に変換できる私であっても、前回は尊厳が音を鳴らして粉砕されるのを味わいました……。あれからまだ立ち直りきれていないので、最近では巨大な棒状のものを見るだけで竦むようになってしまいまして――」


 私も、この前ダンジョンで大きな蛇が壁から顔を出したときに思わず二度見したね。ダーリンの方が逞しいからすぐ正気に戻れたけど。触った感触もダーリンの方が硬かった。


「――台所にあった麺棒が転がったのが横目に映っただけで腰を抜かして娘に笑われ。ドアノブを見るたび王子の亀頭を思い出してしまい自室に入るのにも一呼吸要します。怖いので部屋の扉は娘に取り外してもらいましたが」


 私を姫と呼ぶのは許さないが、ダーリンは王子と呼ばせている。

 姫と王子は将来は肉体的にも精神的にも法律的にも結ばれる運命にあるという設定で。

 既成事実とはなにも性行為や妊娠だけを指す言葉ではない。コツコツと外堀を埋めていき、草の根活動で淡々と嘘を事実として広めていくのが肝要なんだ。先人たちの歴史から学べば、大望を成すというのは得てして地道なものであるとわかる。

 酒場の奥さんもタイミングと勢いは、地道な努力の上に成り立つものだと教えてくれた。

 機ははかるものではなく己の手で作るもの。本当に振り向いてほしい男がいるときには努力を惜しまず手段を択ばない。それが女の生き方だと。


 ネロシェイドもルカに同じようなことをしていて、毎日「旦那様」と呼び間違えたふりをしては呼び名を変えようとしている。私はそれを笑わない。

 

「本物はもっとすごいんだから。上に乗ると宙に浮けるんだよ」

「存じております。どれほどの男かと以前にも直接偵察していた際に拝見いたしましたので。それに我が娘からもそのような報告を受けております」

「娘? 報告? 女がダーリンを見ているの?」


 そんな気配は感じたことがない。


「はい、我が不肖の娘にございます。私は姫……ではなく貴女様を監視し、我が娘は王子を監視するよう上から命令されておりますゆえ。もちろん上への報告は濁しておりますのでご安心を。我が忠誠は全て貴女様の――」

「ちょっと待って。おまえ、ダーリンに女を近づけてるの?」

「もちろん現実ではなく夢の世界でえッ――!」


 ダーリンの一人が淫魔の胸ぐらを掴んで持ち上げた――ように見えるが、淫魔の股の間にはダー棒が差し込まれていて、掬い上げるように浮き上がっている。

 淫魔は恐怖のあまり震えてしまっているが、私なら興奮と期待のあまり悦びに打ち震えていただろう。そしてすんなり入ってしまうと思う。


「尋問の時間だ。答えようによっては拷問に移行するから覚悟しろ」


 指を鳴らして酒場のマスターを召喚する。


「あ、あの、このような仕打ちを受ける心当たりがございません。何かご無礼を働きましたでしょうか。それにその方は?」

「これはダーリンの友達で酒場のマスター。拷問に移行した場合、マスターによってお前の穴という穴に精液を注ぎ込ませて妊娠させるから。嘘は許さないし間違いも許容しない。言葉は慎重に選びなよ」


 夢のなかなら男でも妊娠できるでしょ。


「愛する王子の友人であっても平然と道具として扱う……まさにこれこそ人の上に立つ女王の資質。流石にございます。これだから貴女様の下僕はやめられません」

「無駄なおべっかはいいから答えろ。夢の中で娘になにをさせてるの」


 マスターが上着を一枚脱ぐと、淫魔は慌てふためきながら言葉を紡ぐ。


「当初は私と同じく色仕掛けによって王子を篭絡する予定にございました」


 返答が気に入らなかったのでマスターに蝶ネクタイを外させてベストを脱がさせ、舌なめずりさせる。


「し、失敗しております! 不肖の娘ながら能力は一族でも随一。とりわけ催淫は私をも凌駕する才を秘めております。その力の片鱗を用いて連続射精を促し骨抜きにしようと企てていたのですが、どういうわけか逆に篭絡されてしまったらしく。困ったことに娘が王子に骨抜きにされてしまっているのが現状の全てにございます!」

「篭絡された? まさかシたの? お前、ママになりたいの?」


 ズボンの上から股間をまさぐりながら指を舐めているマスターを見て生唾を飲み込む淫魔。次は耳を舐めさせよう。


「誓って性行為はしておりません! 性的接触は一切なしでございますゆえどうかご安心を! ですのでどうかお情けを! 私はママになどなりとうございません!」

「わかった。じゃあ話を続けろ」

「は、初めての夜は、軽い会話からはじまり、任務など早々に忘れて気づけば個人的で重めの人生相談をしてしまっていたそうです。それこそ地平まで続く草原で丸裸にで立っているかのような解放感を覚え、雄大なる大自然に包まれているような感覚を味わったとか」


 わかっているな、その娘。

 淫魔だけあって男を見る目は養われているようだ。

 ダーリンの包容力は無限であり底なしだ。それを大自然と称するのは中々見込みがある。


 ダーリンを見ているとつい子供のように甘えたくなるし。聞き上手だからいつまでもお話ししてしまう。子供のように甘えてしまうのは、おそらく幼少期、元親に甘えられなかった反動もあるのだろうとネロシェイドは言っていた。

 もっと女の子らしく甘えて誘惑したいのに中々上手くいかない。


 きっとその娘も、ダーリンの巧みな話術に翻弄され本来の任務を見失い、自然と悩みを相談してしまったのだろう。私も油断するとつい「好き」って言ってしまうことがあるからわかる。ダーリンは無意識を引きだすのが上手い。


「なんとか正気を取り戻し、何度も性行為を仕掛けようとしたのですが、自然な流れでマッサージをされたそうです」


 治療中にダー棒を触ろうとしても鉄壁の守りでいなされるからね。

 淫魔すら触れられず性行為もできないのなら、私みたいなただのエルフが誘っても乗ってきてくれないのは仕方のないことな気がしてきた。


「娘は戻ってくると這う這うの体。性器や性感帯には一度も接触せぬまま生涯絶頂数を超えてしまい、性感帯を新たに生み出されたとか。腰骨でイクとは思わなかったと、うわごとのように呟きながら気を失いました」


 腰ね。腰もいいよね。猫にされたかと思ったもん。でも私なんてもう声と視線だけでイケるよ。


 ダーリンのマッサージは格別だ。快楽を操る淫魔であってもたえられないか。

 私も貴族の屋敷の一室や浜辺でも軽くしてもらったけど、あれは半端な腕前じゃなかった。イイところを探るのではなく最初から知っているのだ。そして全身の全てがイイところになってしまう。


 下腹部の丁度子宮のある部分を五本指で指圧された瞬間に五回絶頂したほどだ。

 お腹を押されただけで絶頂し。一度の絶頂で五回絶頂すると言う矛盾したような感覚。容易く私の理性と意識を吹き飛ばしたのは記憶に新しい。


 楽しかったなぁダーリンの妻役……。

 娘もいいけど、妻の方がよかったなぁ。またなりたいなぁ。


「シてはいないんだね?」

「毎晩夢に潜り込んでいますが、これまで一度も襲われたことはないとのことです。なんでも将来の妻となる女性以外とはけっして性行為はしないと仰っており、断固拒否の構えをとられているのです。話の最中などに全力の催淫をかけてみても顔色一つ変えずに紳士然としており。誘惑を弾き。逆に何気ない言葉でもって催淫され。娘はマッサージのみで気をやってしまうそうです」

「当たり前だよ。ダーリンはそういう人なんだから。言葉で心の性感帯を突いてくるんだ」

「心の性感帯ですか……なるほど言い得て妙ですね」


 ダーリンが身持ちがかたいことがとても誇らしい。

 でもそのせいで一戦も交えられず一線を超えられないのだから歯がゆいところ。

 多分性欲が少ないんだと思う。私も性欲とか全然ないからわかる。私はただダーリンとエッチなことを永遠に延々と無限にしたいだけだ。


「お言葉になりますが、当たり前などではございませんからね。我が娘の催淫は並みの精神力では耐えられません。たった一度の催淫で性行為しか考えられない廃人になってしまう者もいるほどです。この前など後遺症から羊に欲情して腰を振る男が――」


 ふーん、そんなやつをダーリンにけしかけたんだ。親子ともども死にたいみたいだね。あとそんなことを命令している熟女も。


「ねえ、その娘ならダーリンの居場所がわかるんじゃないの? だってそいつも夢の中に現れるんでしょ?」

「子供の姿になっていると仰いましたが、もしその話が本当ならば場所の特定は難しいかと。大人と子供では魂の形が大きく変わっているはずなので。一度でも現実で精液を啜っていれば容易にわかるのですが――」

「ふーん、じゃあその娘が居場所を一発で見つけたら現実でも不届きなことをしているということになるんだね」

「それはまずありえないかと。王子の眠っている時間のほとんどは貴女様が独占しているため、気づかれずに近づくのは困難を極めるものだとうかがっております」

「それもそうか」


 ダーリンは眠っているときは何をしても起きないから、何をしてもいい時間だ。

 腕枕してもらっても起きないし。胸を触っても起きない。指をとことこ歩かせてくすぐってみてもビクビクするだけで、どこを揉んでも触っても舐めても噛んでも起きない。

 ダー棒を指で昇る登山ごっこが最近のマイブーム。噴火させたい。


「娘も使ってロイをさがしてよ」

「それはもちろん。我が娘も王子には敬愛の念を抱いている様子なので、頼まずとも必ずや力になることでしょう」

「ふーん」


 淫魔すら敬服させてしまうダーリンが誇らしい。それ以上の想いを抱いたら消すけど。


「それじゃあ私はつかれたから深い眠りに落ちるよ。起きる前に居場所を特定しておいてね。もしも怪我をしていたり心が傷ついていたら、マスターがお前のあらゆる初めてを奪うというのを忘れるな」


 マスターは体を大の字に開いて一気に衣服を吹き飛ばし、ダー棒によって身動きの取れない淫魔の耳元に顔を寄せる。

 これだけ釘をさしておけば適当な仕事はすまい。釘打ちピストンで犯されたくもあるまい。


「承知――!」


 言うが早い、淫魔は姿を消してどこかへと向かった。

 男の相手もしたことがあるって言ってたのに、よほどマスターとの交尾が怖いんだね。


「さすがに二日も眠らないでいたから私も限界だ……」


 思考や情緒も安定しなくなっている。

 ロイを見つけたらたくさん謝って、たくさんキスをしてやり、たくさんおっぱいを吸わせてあげよう。


 夢の中でダーリンの肉ベッドの上に寝転がり、ダー棒を握りながら私は深い眠りについた――。


☆


「世界樹様が行方知れずだと?」

「そう。守り人を名乗るならオーレリアも探すのを手伝ってよ」


 元をたどればこいつも元凶の一人なのだから手伝わせなければならない。

 こいつがポーション作りに手をかさなければ怒らなかった事件だ。

 というか守り人を自称するなら目を離すなとも言いたいが、いつも一緒にいられると面倒なので言わない。


「捜索は勿論尽力する所存だが、さがすにしても何か手掛かりなどはないのか? この世界は物質が雑多で不純物が多すぎる。魔力だけで人を辿るのは不可能に近いのだ」


 そういえば貴族の屋敷にいったときも迷子になっていたっけ。


「手掛かりは特にないよ。それをさがしているところ。でも貧民街や棄民街に連れていかれてると思う。あそこはそういう場所だから」

「そういう場所とは……ああなるほど、ならず者のたまり場に連れていかれた可能性が高いという意味か。どこの世界にもあるものなのだな」


 そういう場所だったらしいけれど、最近はダーリンにまとわりついている鬱陶しい獣人たちが張り切っていて浄化されていってるらしい。


「それで、その貧民街とやらはどこにあるのだ。天か地か。方角さえ教えてもらえれば今すぐ捜索してこよう」


 方角の確認が東西南北じゃないあたりが住んでいた世界の違いを感じさせる。

 私も一度は行ってみたいな、妖精の住んでる世界。


 そこに人間がいないのなら人間の作った法もない。それはつまり、どこでダーリンとセックスをしようとも咎める者はなく。拘束して無理やり犯してもなんの罪にも問われず継続できる素敵な世界ということだ。


 いまのところそんな未来は視た覚えはないけれど、いつの日かそういう未来を実現させたい。できなければ人里離れた場所に連れ込んで疑似体験をすればいい。そういう未来はいくつか見た覚えがあるからきっとできる。


 そう、私たちには幸せな未来があるのだからダーリンは無事なはず。だから焦る必要なんてない。


 大丈夫、大丈夫、大丈夫。連れさらわれる前にも、こっそり眠っているダーリンと唇を合わせ、我慢できずに舌まで入れたけれど幸福な未来は確かに視えた。すべては覚えていないけど、海で岩場に隠れて沢山キスをしてもらっている未来が視えたのは覚えている。

 周囲に人魚みたいなのが数体浮いていたけど、きっとなにかあったんだろうね。私が殺したのかな。


 座して待つなんてしないけれど、ダーリンはきっと帰ってくる。

 もし帰ってこなかったらと考えると、黒いモヤみたいなものがこみあげてきて、全てを壊してしまいたくなる――。


「私もそのあたりをさがすから、途中までは一緒に行動しつつ手分けしてさがそう。見つからないときはもう手あたり次第にいそうな場所を壊して回るから」

「うむ。それはいいな! では先導を頼むぞ奥方殿」


 肩に乗って腕を組むオーレリア。

 着ているちっちゃい服は手先の器用なダーリンが作ったもの。

 私だってプレゼントなんてされたことないのに。ずるい。


 私も何か欲しい。ダーリンの初めてとか。ダーリンの子種とか。ダーリンの子供とか欲しい。

 

 ああ、あのとき下着を買ってもらっておけばよかったのかな――。

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