子供は一瞬でも目を離してはいけない
いったん広間に集まって、教会に暮らす面々に事情を説明する。
説明といっても見たままな上。俺が気絶していた数十分の間に、リリによって情報は共有されていたらしい。
「――と、この通り子供になってしまいました」
「ロイズレッド様の子供のころって感じがしますね!」
まあ単純に若返っただけだからな。これで見た目が変わらずサイズが小さくなっていったならちょっとした化け物扱いされていただろう。
ルカの反応は好ましいものだったが、ショタが好きそうなネロシェイドは真逆の反応を示した。
「ちょっと、こちらに近寄らせないでくださいる。ショタであんな凶悪なモノをもっているのは解釈違いですわ。オネショタにおいてショタ巨根は禁忌。あんなものを好き好んで嗜むのは頭を性欲で満たした欲求不満のエルフぐらいですわ」
ルカの感想は見たままで純朴なもので。ネロシェイドも自分の欲望に忠実であるという意味ではブレていない。
「参りましたね。これではお仕事の遂行が困難になってしまいます。坊ちゃんのやんちゃにも困ったものですね」
ビビアンはルカのいる手前、奴隷商の件は濁してくれているようだ。
だがお前の監督不行き届きでこのような超常現象が起きているというのを自覚していただきたい。やんちゃで済ますな。きゃぴきゃぴはしゃぐな。熟女の若作りは股間にくるんだよ。
「まいりましたねー。どうしましょうー」
若返りの秘薬の情報が取れてうれしいらしく、ビビアンは困った素振りを見せながらもニッコニコである。絶対に困ってなどいない。
だが元々乗り気ではなかった俺としては、この流れに乗らない手はないだろう。
「仕方ありませんね。ところでいつ頃になったらポーションの効果が切れてもとに戻れるのでしょうか」
「早くても七日から十日といったところだそうです。用法容量を守れば特に体に害はないとか」
社会的に害がありすぎるが、体に害がないのならばまだいいとしよう。
「副作用がどうのと言っておりましたので、そこが一番の懸念点といいますか。不安でしかたありません」
副作用による媚薬効果が発動して、見境のないオークになってしまったら大事だ。
若作り熟女メイドに長乳精霊に全裸妖精。そして爆乳ノーパン娘のエルフがいる環境で媚薬の効果が出てしまったら制御できる自信がない。
もしもリリに毒牙を突きたててしまったら、潔く神父職を辞任して贖罪の旅に出よう。いや、そのまえにいきつけの牢獄に収監されて、お国からの沙汰を待つのが先か。
「結局媚薬効果が云々というのも、坊ちゃんだけに有効なものらしいのでその点はご安心を」
「ロニだけにですか? ちょっと理解しかねる内容ですね。詳しくお聞かせ願えますか。なぜ服用者でもないロニに媚薬効果が出るのでしょう」
「要するに服用した者が小さくなることで、坊ちゃんが興奮するという話です。副作用ではなく副次効果といった方が正しいかもしれませんね」
くっだらな。
こっちは治るまで柱に縛り付けてもらおうか本気で悩んでいたというのに。
「ですので服用をした側にはなんのデメリットもございません。坊ちゃんは素晴らしい秘薬をおつくりになられましたね。坊ちゃんこそがクロロック家の光。クロロック家の誇りです」
その誇りは縄で縛られて芋虫のように倒れている。
リリによって行われたそれは、俺を襲いかねないという理由によるものだった。
リリは過保護になりすぎていて。今も膝の上に俺を抱いて、延々と頭を撫でては頬を揉んだり頭頂部にキスをしたりしている。
「おっぱい飲む?」
「い……いりません」
定期的にこればっかり言う。
断りたくなくてこちらも歯切れが悪くなってしまう。そりゃあ飲めるなら毎朝搾りたてをいただきたい。大人の姿に戻っても続けてほしい。
何度断っても俺を抱いて離さないし胸を押し当ててくる。
ネロシェイドですら顔を引きつらせ、情操教育に悪いからとルカの目を隠して見せないようにしてしまうほどだ。そして同じことをルカにしている。
「ネロさん、これじゃ何も見えないよ」
「猥褻物陳列エルフなど目に入れてはいけませんわ。契約主様が穢れてしまいます。あなたは私だけを見ていればいいのですよ」
普段ならお前が言うなと怒りそうなのものだが、リリは一向に気にした様子もなく俺をかまい続ける。
股関節を揉んだり開いたりするのはやめてくれ。下半身だけ大人になってしまう。
「そんな不埒な真似はやめろ! 子供がかわいそうだろうが! 無理やり授乳するなど虐待に等しい! 貴様らの蛮行はあまりにも目に余る。クロロック伯爵の子息として正式に、断固として抗議させてもらうぞ!」
洲巻にされて倒れているロニが叫ぶ。
子供がかわいそうなどとどの口が言うのか。お前の子供への愛情そのものが虐待になりかねないのを理解していないのか。
こういうときに権力を振りかざすのが如何にも小者らしくて好感が持てる。
人は自分よりも未熟な者を愛してしまうというのは司教の持論だが。なるほど少し理解できる気がする。
しかし司教の場合は、全人類が自分よりも未熟であると断定しているのでたちが悪い。
「うちの子を見るな、滅すぞ」
「……っす」
ロニには一段と厳しいリリ。いつもは消すどまりなのに今日は滅するにランクアップしている。まるで子供を守る獅子の母親だ。
でも俺はリリの子供ではないけどな。
俺が目を覚ましたときから母性に目覚めてしまっていていつものリリがどこにもいない。
「だ、だいたいなんで俺だけ縛られているのだ! こんなのはおかしいだろ! 俺にもロイズきゅんを抱かせて甘やかさせてくれ! 俺だって母乳が出せるかもしれないのに、この扱いはあまりにも不当だ!」
気持ち悪っ。
語るに落ちて、何もおかしくないことを自ら立証したな。
牢に放り込まれなかっただけでもありがたいと思え。
これから五日以上もこいつと暮らすと考えると肛門にヒヤッとした感覚が襲ってくる。やはり今からでも通報したほうがいいかもしれない。
「防御壁となっていた神父様がこのようなお姿になられたのですから。これも致し方のない処置です。坊ちゃんも分別のあるお歳なのですから我慢なさい」
分別がないから縛られているんだけどね。
「ぐぬぅっ! ビビアン、次期当主たる俺を裏切るかッ! いつからそんな不忠者になってしまったのだ!」
「いいえ、これも坊ちゃんを守り育てるための愛の鞭。深い愛情からくるものにございます。坊ちゃんを真っ当な大人に育てるというのは、亡き奥様の御遺志でもありますので」
「こんなときにお母さまを引き合いに出すのは卑怯だぞ!」
ギャーギャーと言いあう二人。
「治るのに時間がかかると言うことですが。それまでどう暮らせばいいのやら」
「ロイのことはぜーんぶママがやってあげるよ。水浴びも温かいお湯にして一緒に入ろうね。今から火の系統の魔法を気合で覚えるから」
俺がなんの魔法も使えないように、適性もない属性魔法はどんなに気合を入れても習得できない。
だがリリにならそれをやってのけてしまいそうな気迫のようなものを感じる。
本当にお風呂にハマっているんだな。できるだけ急いで浴室を作ってやろう。
「ではそのほかの家事全般は私が任されましょう。もとはと言えばうちの馬鹿が元凶ですから」
「おい今俺を指して馬鹿といったか!? さっきまで誇りがどうとか言っていたのに!」
その通りなのだから文句を言うな。いくら怒鳴ろうとも事実は覆せない。
「よいのですか?」
「坊ちゃんの作られた薬でこのような事態に陥ってしまったのですから。クロロック家の失態はクロロック家の者で拭うのが筋です」
「俺の功績を失態と呼んだな!?」
まだ優しい言われようだろ。
お前はまず人に迷惑をかけている自覚を持て。
「ではお言葉に甘えさせていただきます」
「ママにはもっと甘えていいよ? おっぱい飲む?」
「鳥小屋や畑はボクにやらせてください!」
リリはともかく、ルカは本当にいい子だな。
でもいまの俺よりも年下なのだから無理はしなくていい。
「ではそのあたりはルカと私、二人で手分けをしてやることにしましょうか。皆さんにも、ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ない限りです。この借りは必ず返しますので」
「おっぱい飲む?」
おっぱいは飲まず、昼食を済ませて各々解散の流れとなる。
その後一秒たりともリリは俺の体を離してくれず。食後のデザートにおっぱいを飲むか、おっぱいプリンを食べるかを聞かれ続けた。
☆
一日が過ぎたところで体に変化はなく、依然として十歳の頃のままだった。
昨日は、子供とはこうも不便なものかと思い知らされる一日だった。
何をするにも力と背が足りず。体力も持たない。その分休憩を多くとって、ルカと遊ぶ時間が増えたのはよかったが。
ルカは歳の近い友達ができたような感覚だったのだろう。
当たり前のように雪を降らせるリリとルカ。
教会の裏庭に積もった雪を使って滑り台を作ったりして笑いあい。途中からオーレリアも参加し、四人で陽が沈むまで雪合戦に興じてしまった。
雪合戦ではリリと俺、ルカとネロシェイドとオーレリアの二チームにわかれて行ったのだが。俺よりも前にいるはずのリリが投擲した雪玉が、度々俺の股間を狙撃する不思議現象が多発した。
そのたびに「ぬっ!」と声をあげて海老のような中腰になる俺。それを見て笑い転げるルカ。そのルカに覆いかぶさるネロシェイド。
リリは申し訳なさそうに「しもやけや凍傷になっちゃうから温めよう」と、聖棒に触れてくるし。「口の中の方があったかいかも」などと、とんでもないことを言い出してネロシェイドに止められていた。
そして夜中、廊下の曲がり角でロニと出くわしたときは心臓が飛び出るかというほど驚いてルカと抱き合ってしまった。
「可愛いのサンドイッチみぃーつけたぁ」
手に持った蝋燭の火が顔に影を作り、粘っこい声とねっちょりした笑顔で言うものだから余計に恐怖を煽る。正直漏らす寸前だった。
咄嗟にルカをかばって前に出て守ったが、保護者であるリリとネロシェイドの二人が更に前に出て、ロニをどこかへと連れて行ってくれたので事なきを得る。
連れていかれる途中でネロシェイドがロニの脇腹を殴っているのが見えた。女性恐怖症が加速するだろうな。
それまでもそれからもリリは献身的に面倒を見てくれて。夜眠る前には絵本を読んでくれて。その間に三十回ぐらいはおっぱいを吸うか尋ねられた。
起きたときにもリリは同じベッドにいた。
中身は大人だと何度説明しても、ママ味を暴走させたリリには効果がない。
そうして今も、街へ買い物に行くのでついてきなさいと手を繋いで連れ出された次第である。
「フフ……。家族で歩くのって素敵だね。家族なんだからずっと一緒にいないとだよね。フフフフ……」
よほど家族愛に飢えていたらしく、昨日からずっとこの調子でご機嫌である。
故郷にいい思い出はないとは言っていたのも、家族との仲が上手くいかなかったか。なんらかの理由によって家族を失ってしまっているからなのかもしれない。
であるならばとことん父として母として彼女を支えてやりたいと思うのは自然な思考の流れ。
今は子供役しかできないが、妻役をやってもらった負い目もあるので彼女が望むのならば喜んで子供役に徹するとしよう。
これも神の思し召し。リリを救えよと神は言っておられるのだ。
「絶対にママの手を離しちゃダメだよ。世の中にはローレンツだかロリレンツだか、そういうゴミみたいなやつが吐いて殺すほどいるんだから」
掃いて捨てないで殺処分するんだな。
ママリリは過激な思想をお持ちなようだ。
「はい母さん。けっして離しません」
「……(可愛いの塊が可愛いの雪崩を浴びせかけてくる。おっぱい飲ませたい)」
何も知らぬ子供のように素直に返事をすると、リリが口をたわませて涙ぐんでしまった。思った以上に深刻なレベルで家族愛に飢えているな。
「――お前、あの教会にすんでるやつか?」
今の俺より背の高い子供に突然話しかけられ、リリの手がギュっと強く握られる。
街中で話しかけられるなどいつ振りの事だろう。ちょっと感動してしまったぞ。
「はい、シクリッド教団の構える教会でお世話になっております。もしかして入信希望の方ですか? でしたら――」
「冗談言うなって。あんなおっかない神父がいるところに近寄れるかよ。あそこって悪魔崇拝者があつまって魔王復活の儀式をしてるんだろ。よくあんなところにいけるな。なんか脅されてんの? 家族を人質にとられてるとか」
スッと感動が消えていく。
言葉のナイフって本当に鋭いな。
魔王復活を阻止するために活動しているのに、その真逆の集団だと思われていたとは。
「それは大きな誤解をしています。神父様は決して恐ろしい人ではありませんよ。悪魔崇拝なども当然していませんし、魔王復活など根も葉もない嘘っぱちです」
それに神父様はとても優しい人です――と続けようとしたが、子供の姿なのをいいことに己の立場を向上させようという浅ましい魂胆がリリに見透かされるのは気まずい。やめておこう。
「嘘つけバーカ。うちの父さんもあの教会はおかしいから近づくなって言ってたぞ」
「おいジャリガキ。その父親を今すぐここに連れてこい。仕事だとかなんだとかを理由にするなよ。連れてこないなら私が出向く」
リリが大変ご立腹である。
ただ言葉が悪すぎる。
「いけませんよ母さん。相手はまだ子供です」
「ロイ、あの教会を貶められて冷静でいられるほど、ママは穏やかな性格をしていないの。ふざけたことを抜かす奴には死よりも恐ろしい恐怖を味わわせて、二度と喋れないように凍らせてやらきゃ」
そこまで教会を想ってくれていることに感動して涙腺が緩む。
「ほらみろやっぱり暴力集団だ。脅しや暴力をチラつかせれば誰でも言うことを聞くと思うなデカ胸女。しかも子供あいてにムキになって本当に馬鹿じゃねぇの?」
「あっ――?」
目を細めて子供を睨みつけるリリの周囲には、輝く氷の粒がきらめいている。
「こ、子供に罪はありませんからね! 攻撃してはいけませんよ!?」
「わかってるよ。でも子供だからってなんでも罪を許してしまうのは教育によくないと思うんだ。子の犯した罪の責任は、その親が取るべきだよ。だから父親を母親にしにいこう」
何をするつもりなのだろう。聞くのも恐ろしいな。
「父親が母親になるわけないだろバーカバーカ! やっぱりあそこの連中は頭の悪い集団なんだ。能なしの胸だけエルフ!」
何を言う。リリは超有能で胸もある美女エルフだぞ。
君も大人になれば、リリがどれほど素晴らしい女性なのかがわかるだろう。
「よしジャリガキ、その喧嘩買ってやる」
「子供から買わないでください」
子供と本気の喧嘩をしようとしているが、いつものリリは極めて有能な美女エルフである。いまはちょっとママ味が強すぎるだけなのだ。
「お前はいまから全力で走って逃げろ。もし逃げ切ったらこれまでの無礼は見なかったことにしてやる。でも私がお前を捕まえたら、親には相応の償いをさせてやるからな。お前のせいで親の性別が変わる瞬間をその目に焼き付けてやる」
「子供相手にムキになってはいけません!」
「親の目の届かないところでは、他の大人がしっかり教育してやるのが、地域で子供を育てる地域子育ての本分だよ。親以外の人からも気にかけてもらえる、地域に自分の居場所があるという感覚は、子供に強い情緒的安定をもたらし自己肯定感を育むんだから」
リリの故郷ではそういった活動が行われていたのだろう。
異論のない素晴らしい見解で俺を論破しようとしているが、到底そのような意思があるようには見えない。
「三秒数えてやるから死ぬ気で走れ」
「お、オレはかけっこでは負けなしなんだぞ!? そんなデカ胸で走れるのか!」
「私はすべてにおいて負けたことがない」
強い。
いつか俺も言ってみたいが、ナマズに負けているので一生言うことはできない。
「三、二――」
カウントダウンが始まると、子供もリリが本気であると気づいたらしく、軽口も叩けなくなり血相を変えて逃げ出した。
「ゼロ――」
繋がれていた手は離され、逃げ出そうとする子供のあとを追いかけるリリ。
そのあとを追いかけるが二人の足が速すぎて距離は広がるばかりだった。
「待ってください! 子供に目くじらなどたてず――ムゥッ!?」
何者かに口をふさがられ、体が浮き上がり足が地から離れる。
あとをつけていたロニの悪戯か――と思ったが、ロニはビビアンに拘束されて若返りポーションの改良研究をさせられているので教会を出られるわけもない。
口をふさぐ手や、毛深い腕を見れば、俺を捕まえているのは身なりの汚い男だった。
「騒いだら殺すからな」
「…………」
騒ぐのは子供の権利なはず。なんて酷いことを言うのだろう。
子供の体では抵抗など出来ず。そのまま大人しく裏路地に連れていかれるほかなかった。
☆
「あなたはいったい――」
「おっと気をつけろ。人が来たらお前を殺さなきゃいけなくなる」
男は曲刀をチラつかせてそんな脅しを口にする。
いつもの俺ならば言葉を尽くして説得し。それでもダメならばアックスボンバーで戒めの聖裁をくだしていたところだろう。
しかし今の俺はどこぞのアホが作った薬のせいで子供の姿になっている。戒めの聖アックスボンバーも、必罰の聖ドロップキックもろくに放てはしない。
なのでここは素直に黙って頷くことで返事とした。
「逃げられるなんて思うなよ。俺はこうみえて探索者としてはけっこう名をあげた方でな。投擲術の名手として引っ張りだこにされていた時期もあるんだ。助けを呼んだところで、呼び出された奴が死ぬだけだぜ」
人を殺すことに躊躇がないらしい。
ただの脅しであることを祈るばかりだ。
世のなかには俺のような見掛け倒しも多くいるので、どうか同じ分類であってくれと願う。
「承知しました」
「理解がはやくて物分かりのいいガキだ。お前みたいなガキばかりなら仕事も楽になっていいんだけどな」
大人しく従っていると、口には布を巻かれ麻袋をかぶせられてしまう。
こういうのは性行為中に行われるものではないのか。できればリリにやってほしいが、こういうプレイは熟女であるビビアンの方が上手そうだ。
「許可するまでは何もしゃべるな。騒いでも殺す。暴れても殺す。痛い目を見たくなかったら大人しくしておけよ。ああ、ちなみに痛い目ってのはこういうのだからな――」
「ムグンッ……!」
そう言われて腹に強い衝撃が走る。
胃の内容物がこみあげてきて口内に酸っぱさが充満する。
筋肉の薄い子供の体では、ちょっとした衝撃でを受けるだけでも死を連想させるような痛みを感じた。
久しく忘れていた感覚だな。
司教の繰り出す愛と教育の腹パンに比べればどうということはないが。
「驚いたぜ。悲鳴もあげなきゃ泣きもしねぇとは大したガキじゃないか」
涙は出ている。子供なのだから仕方ない。
「そうやって何をされても黙っておけばいいんだ。そうすりゃ、生きたままいいところに連れてってやるからな」
いいところとはどこだろう。
ま、まさか、サキュバスが経営しているバーか!?
「お前から目を離した馬鹿な親を恨むんだな。まあ恨んだところで二度と会えねぇけどよ。なんたって今日からお前は奴隷になるんだからな」
今日から奴隷になるとは……サキュバスの性奴隷に!?
「…………」
――いや、違うわ。誘拐だこれ。




