娘がパパのママになるまで その激動の一日
あくる日――。
日課であるベリー畑に水をやり。やたらと肛門を狙ってくる悪質なニワトリどもの世話をしていると、メイド服を着たロニ専属熟女――ビビアンが歩み寄ってきた。
「奴隷商の件はどうなりましたか」
ビビアンは挨拶もなしに、藪から棒でぶっきらぼうに言う。
その調子で尻をぶっきらぼうに仕置き棒でぶっ叩いてほしい。
「その件ですか……実は奴隷商の場所も実態も把握していないので何から手を付けていいのやらと困り果てていたところで」
「場所でしたら全て調べ上げてありますよ。後ほど資料をお持ちします」
なんて優秀なメイドなのだろう。ありがた迷惑この上ないな。
「念のため面が割れぬよう仮面を用意しました。奴隷商の館に入る前に、どこかで装着してから行くとよいでしょう」
変装までしないといけないような場所に行きたくない。
貴族様は仮面舞踏会などという催しを楽しむきらびやかな文化があるそうだが、俺のは身元の隠蔽が目的である。きな臭いったらない。
へんな問題に巻き込まれて仮面舞闘会にならないよう神に祈るばかりである。
「奴隷を買い付けるに十分な金額も鞄に入れてありますので、今夜にでも計画を立てて明日にでも向かわれてはいかがでしょう」
用意周到だな。
ここまでせっつかれては断る言葉が浮かばない。
「私も同行しますので交渉の際には全てお任せください」
だったら全部伯爵名義で自分でやってくれよ。
優秀な護衛や監視役がいるのだから、俺が行く必要などないはずだ。
貴族同士の軋轢がどうのこうのなど平民が知ったことか。
「それではまた今夜にでも細かい話を詰めていきましょう。時間になりましたら部屋まで迎えに上がりますので。それでは」
勝手に決めて言いたいことだけを言って、返事も待たずに去っていくビビアン。
「気が重いな……」
俺の不幸体質と誤解されやすい性質を考えれば、今回の件がすんなり上手くまとまるとは思えない。
すくなくとも身元がばれて新たな噂が増えるのは明らかだ。
奴隷商の買収に向かうなど、自分から最悪な噂を流しに行くようなものじゃないのか。
☆
――トントカッコンコン、ドンドン! ドンドドドンドン、コッカ。
信徒たちを驚かせないよう自室で大人しく本を読んでいると、騒がしくリズムカルに扉をノックされる。
「やかましい……」
この、人の迷惑を一切考えないテンション高めの連打は間違いなくロニだ。
リリは何度言ってもノックをしないで侵入してくるのでもう諦めた。
ルカならもっと下の方から音がして。猫獣人たちは窓から入ってくる。
この教会にはルカと俺しかまともな人間はいない。
「どうぞ、開いてますよ」
リリがいつでも入ってこれるように鍵はしめていない。
仲直りをしてからは前にもまして遊びに来るようになってお父さん嬉しい。
「ロイズ、すまないが頼みたいことがあるんだ!」
「あなたも藪から棒の使い手ですか」
「藪から棒の使い手? 新手の棒術か? まぁ棒の扱いに関しては、お前には勝てる気がせんな」
聖棒を見て言うな。俺のは新品未開封だ。
「だが子供の扱いは――」
「それで頼みというのは? 聞くだけは聞いてさしあげますよ」
「エルがお前との時間を優先したいがあまりに、ポーションの実験に付き合ってくれなくなっただろ?」
「そうでしたね」
事実とは異なるが結果的にそうなったな。
「だからお前に責任を取ってもらいたい」
伯爵から無茶な頼みを押し付けられ。お前を教会で監視し、飼わなきゃいけなくなり。いまさら頼みの一つや二つ、責任など追及されずとも快く引き受けてやるよ。
「ビビアンは無理だし。ルカきゅんに頼むのも気が引ける。取り巻きの有剛毛者は近づくのも恐ろしいしで、結局頼めるのがロイズしかいなくてな」
誰のことかと思ったが、ネロシェイドのことを有剛毛者と呼んでいるらしい。
見たのだろうか。見たのならどこで見たのか。何故すぐに俺に言わないのか。友達ならそういう大切な情報は常に共有してほしい。
「つまり私にポーションを飲めと」
「飲めとは言っていないだろ。飲んでくれと膝をついて頼んでいるんだ」
膝などついていない。
貴族様らしい上からの物言いだな。
「新たな治癒ポーションなのだが、これは利き方が少々特殊でな。人によっては性的興奮をたぎらせる副作用があるのだ」
「いますぐ捨ててください、そんな物騒なもの」
女子供のいる教会に置いておけるか。
ルカが誤飲してネロシェイドの毒牙にかかったらどうしてくれるのだ。
リリが誤飲して俺を襲ったら、オーク化して襲い返し収拾つかなくなるぞ。
娘を孕ませる最悪の父親になどなりたくない。
俺が死ぬときには「おやすみなさい、愛するお父さん――」と、リリに言ってもらいながら永い眠りにつくのが夢なのだ。それが「やっと死んだか、この性犯罪者」などと言われたら死んでも死にきれないだろ。
そうなったら悪霊となってロニに憑りつき、娼館で無双してやるからな。
「おいおい早とちりをしてくれるな。早いのは腰振りだけにしておけ。街の噂で聞いたぞ、早すぎて止まって見えるんだってな。あと摩擦熱で氷山に火をつけたことがあるとか」
いつも俺は童貞だって言ってんだろ。
なんで俺の言葉は信じないで、明らかに嘘だとわかる街の噂は信じるんだよ。
「私に関する出鱈目な話はいいですから、続きを説明してください。媚薬ならば地中に埋めますからね」
ポーションではなくお前をな。
「土を腰で掘るのか……? 膣ではなく土を? ハッ――以前にも有毛者セレスにモグラがどうとか言っていたが、あれは本当だったのか!?」
お前を掘ってやろうか。
「冗談だ。そんな顔をするなよ。まあとにかく媚薬とは違うというのは信じてくれ」
「信用されるほどの信頼を得ているとおもっているのですか。この前は辛いものを甘く感じさせる副作用を隠していましたよね」
「あれはエルに飲ませたら殺されると思ってお前に頼ったんだ。結果的にお前が被害を被ったせいでエルに殺されかけたけどな」
理由になっていないし自業自得だ。
最近のリリのパパっ子ぶりの加速は著しいからな。
たがが外れたかのように、娘力を遺憾なく発揮している。
「興奮すると言っても人によって効果に差があるものだ。全く効果を感じない者もいれば覿面な者もいる。そこで神父のお前ならば理性が強く禁欲的なので問題なかろうと思ってな。もし興奮が抑えきれなくなったらエルに処理してもらえばいいだろ」
してもらえたら最高だが、そんな夢みたいな話があるはずもない。
それこそ夢の中のリリは日に日に行為の過激さが増している。この前など胸を使って――。
「呼んだ? (話は全て聞かせてもらった。これに立ち会わない手はない)」
ベッドの下の隙間からニュっと顔を出すリリ。
驚いて椅子から転げ落ちる俺。
後方へ派手に倒れて廊下で後頭部を打ちつけて転がるロニ。
してやったりと、したり顔で笑うリリ。
「な、なんでそんなところにいたのですか? というかいつの間に隠れていたのです」
「昼食が終わってすぐにルカとかくれんぼをしてたから」
「かくれんぼ? ルカは今、教会で信徒たちと聖歌をうたっていますよね?」
信徒たちはルカの歌声に感動し、むせび泣いてしまいほとんど歌えていないらしいが。
「うん、だから一人で一方的に隠れてる」
「……それじゃあ、いつまでたっても見つけにはきませんよね?」
「だろうね」
「…………」
千回ぐらい考えたがまったく意味が分からなかった。
リリにはこういうところがある。行動に理屈が伴わないのだ。そこがまた可愛いので、笑って受け入れてしまうのだが。
まったく、父性を刺激するのが上手すぎるだろ。
「それで、ダー……君がポーションを飲むんでしょ」
「ええ、そういう流れになってしまいました」
「イヤなら私が飲んであげてもいいよ(副作用が出なくても出たふりをして襲おう)」
詳しい話は聞こえてなかったようだ。
媚薬効果があると知れば、こんなに前向きで協力的な姿勢を見せるはずもない。
仮に副作用が出ても、いつものように唾液を飲ませれば治るかもしれない。だが媚薬効果が中々消えず、それ以上のことを求められてしまったら……据え膳食わずにいられる自信がない。
やはり俺が飲む以外の選択肢はないな。
俺ならば多少の毒には耐性もあるので、他の誰かが飲むよりかは安全だろう。
「いててぇ……。さあこれだ。驚いた拍子に割らなくて良かった」
シュワシュワと音のする黄色い液体の入ったフラスコを手渡すロニ。
割れてしまえばよかったのに。
「今回のはオーレリア様の尿入りなので味は保証する。価値で言えばエリクサー以上のものが出来あがった」
「飲みずらくなるような冗談を言わないでください」
いつのまにか扉の後ろにいたオーレリアが両手で顔を覆っている。
気まずい。本人を前にして汚いもの扱いはよくなかった。
「どれぐらい飲めばいいのですか」
「飲んだ量によって効能は変わるぞ」
「左様ですか」
オーレリアの名誉のため多めに口に含むと、柑橘系の甘い香りが口いっぱいにひろがった。喉腰も爽やかでシュワっとした微炭酸は、引っかからずするりと喉を抜けていく。
「意外と美味しいですねこれ」
「当然だ。オーレリア様の聖なる雫が大量に入っているからな。日焼け止めの時とは違って、オーレリア様の雫が混入されるのを想定して最初から味の調整をしてある」
だからそれやめろよ。
オーレリアがどこかへ飛び去ってしまったじゃないか。
しかしこれはポーションとしてだけではなく、飲料としても十分に売れる味である。
もし本当にオーレリアの尿の効果ならば、妖精の下半身を咥えながら生活したくなるレベルで美味い。
「飲んでから言うのもおかしいですが。これは治癒ポーションという話でしたが、私は怪我などしていませんよ?」
「いや、最初から一言も治癒ポーションなどとは言っていない……っす」
喋り切る前にお父さん想いなリリがロニの胸ぐらを掴んで睨んでくれている。
ありがとう。俺もそうしたかったんだ。
「ではなんのポーションなのですか」
「し、心配はするな。成功すれば効果は見てわかるものだ」
「性交すれば効果がわかるの!? ホントに!? え、どういうこと!? ハッキリ言いなよ!」
リリが本気で怒ってくれているのが嬉しいじゃないか。
人のためにこうも怒れるなんて心優しい子だ。
でもそれだと首が締まって何も言えないよ。
「見てわかると言われましても――あッ!? がっ……グッ!」
心臓が突如高鳴り、全身の血が一瞬で一周したかのような感覚を覚えた。
平衡感を徐々に奪われ、壁を支えにしていないと立っていることすらままならない。
「ぐあぁっ……。な、なんだ……これはっ! 体が内側に引きずり込まれるような――! 体がぁ、熱いぃ……!」
「あっ、副作用!? 副作用かな!? 熱いなら無理せず脱ごう!? 本作用を確かめるため性交する!?」
リリはなんで嬉しそうなのだ。そんな笑顔はいままで見たことないぞ。
「この反応は副作用ではない。順当に薬の効能が作用しているだけだ。このポーションはな、肉体の時間を巻き戻して怪我がなかったことにするタイプのポーションだ。いわゆる時間逆行。俺では多少巻き戻っても姿が変わらないので試せなかったのだ。まあ治癒ポーションとしても分類できるが、母の遺した古文書には別の分類として――」
「ぬぅ……!」
「ぬ!? ぬってなに!? 脱ぐの、ぬ!?」
「ぬぐぅっ!」
「脱ぐんだね!! じゃあいただきます――じゃなくて、言質は取ったから脱がせてあげるよ!」
「ぬ、ぬわぁあああああああ!」
息も吸えぬ深い水の底へと引きずり込まれていくような感覚は、いままで味わったどの毒物にもない反応だった。
一度でも体験しておけばいなせただろう。だが未体験のものには抗うことはできない。
自分の毒耐性を過信していた。
「ただしこれは妖精の祝福によって変質したもの。変質というよりは効能の単純強化で――」
ロニ特有の長々とした説明など耳に入らなかった。
体が熱いのか寒いのかわからない。陸にいるの空にいるのか水中なのかもわからない。感覚が鋭敏になっているのか、窓から吹き込む風は冷たく、体温が熱いと感じる。
激しい眩暈のなか、膝に力が入らなくなり。平衡感覚を失い床に倒れてしまう。
「き、きたぁああッ!!」
一緒に折り重なるように押しつぶしてしまったリリが悲鳴をあげる。
どこうにも動くこともままならない。
「――つまり、時間を巻き戻すという部分をより際立たせた新薬。そう、これは若返りのポーションだ」
遠退く意識。リリが腕を回して抱いてくれているのはわかるが、それ以外の感知できるものがなくなっていく――。
意識が飛ぶ寸前、最後に感じたのはリリの爆乳の柔らかさだった。
☆
目が覚めて、すぐにあたりを見渡す。
自分はどうやらリリの膝の上に頭を置いているらしいという事だけはわかった。巨大な乳房に隠れてリリの顔は確認できないが感覚でわかる。これは授乳手コキにおいて最適なポジションだ。
目覚めはすっきりとしているが体の感覚がおかしい。
起き上がろうとしても腹筋に力が入らず藻掻くことしかできないのだ。
「起きたんだ。どう、意識ははっきりしてる?」
「はい、驚くほど明瞭でいつも以上にはっきりしています。まるで頭の中を洗浄されたような気分だ……。しかし体が思ったように動かないと言いますか。自分の体ではないみたいな気もします」
「それはそうだよ。だって子供だもん」
「子供? いえいえ、私はもう大人ですよ」
成長盛りの聖棒を見てくれればそれも証明できる――と癖で股間を見ると、いつもの聖棒はそこにはなく。一般成人男性が勃起した程度のサイズしかない、ちんまりとした聖棒が申し訳なさそうにうなだれていた。
というかなぜ裸なのだ。
「なんですかこれは!? なぜ私は服を着ていない――いや、そんなことよりも体が小さくなっていませんか!?」
「若返りのポーションを飲んで体が若くなったんだってさ。だから服もぶかぶかだから畳んでおいたよ。寒かった? 私の中に入る?」
人を温める手段として、自分のなかに入れるという方法が真っ先に選択肢としてあがるものだろうか。常に万年雪が発生し、一年を通して氷も残り続ける北国の一部では、狩った大型の野生動物の中で一時的に暖をとる習慣があるとは聞いたこともあるが。
「体が若くなるなど、そんな奇妙なことあるはずが――」
あるな。
オーレリアの力を使えばダンジョンの最深層でも滅多に手に入らないような希少ポーションを作れてしまうと、生臭い日焼け止めポーションで実証済みだ。
今回もオーレリアが関与しているような口ぶりだったので、信じられないようなことも信じなくてはならない事態に陥っているのだろう。
「はぁ……起こったことを今さら否定してもしかたないですね。ありのままを受け入れるとしましょう」
「そうだね(その論理で言うなら私が襲っても否定できないよね)」
「それはそれとして、やってくれたなロニ……。そうだ、ロニはどこへ?」
説明も聞かずに未知のポーションを飲む自分も悪いが、説明責任を果たさぬまま消えるなんて許されるはずもない。
「あいつなら追い出しておいたよ。幼くなった君を見て興奮していたから熟女に引き渡して監禁してもらってる」
「私に興奮を? おぞましい……」
しかし完璧な差配には感謝しかない。
リリの悪戯好きな一面が出て、一緒になって眠っている俺のちんまい聖棒にいたずらでもしていたら、怒っていいのか喜んでいいのかわからなくなるところだった。
「君が可愛いから仕方ない部分もある。その点はせめられないかな」
ロニに興奮されると気色悪くて、リリに可愛いと言われると嬉しい不思議。
何だこの気持ちは。勃起するような興奮とは違い、甘えたくて仕方なくなっている。
体が若返ったせいで心まで幼くなっているのだろうか。
リリはいつもこんな気持なのかと思えば、より一層に父性が肥大化していく。
「でもそれはそれとして、あいつからは人権を剥奪するべきだね。あの変態に人間様の部屋を使わせるのはもったいない。あいつが住んでるところは赤ちゃんの部屋にして、教会の敷地内に地下牢獄を作ることを提案するよ。世話はメイド熟女がやればいい」
その提案は浴室と一緒に前向きに検討しよう。牢獄と書かれたロニの私室となるだろう。
しかし赤ちゃんの部屋とはなんのことだ。うちに赤ちゃんなどいないだろうに。
「とにもかくにもこのままでいるわけにはいきませんね。よっと――」
「どこいくの?」
「服を着ようかと」
「いらないよ?」
「いりますよ?」
横に転がるようにしてリリの膝から離れる。
「あっ……(もっと握りたかった)」
切なげな声を出すリリをおいて、いつもよりも高く感じるベッドから降りて、まずは姿見で己の姿を確認した。
「なんてことだ。本当に子供になっているじゃないか……。これは元に戻るのでしょうか」
だいたい十歳ぐらいだろうか。
筋肉は削げてなくなり子供らしい体つきに。みすぼらしい聖棒は見ていて痛々しいほど委縮している。
「元には戻るらしいよ。詳しくはしらないけど、そのへんはいま熟女が取り調べしてる。さっき少しだけ覗いてきたけど、ただならぬ熱意で尋問してて、ローレンツは部屋の隅で三角座りして震えてた」
若返りの薬などきけば、年齢を気にしているビビアンが黙っているはずもないか。
調査は完璧かつ完全に遂行されるのは確実だ。報告は待つとして、とりあえずは服の用意をしよう。
ルカの件から、いつ子供たちを保護してもいいようにと子供用の服をいくつも縫っておいてある。
「うおっ……重い」
タンスの引き出しをひらくがいつもよりも重い。視点も違うので違和感がある。
「重いの? やってあげるよ。服も着させてあげる」
「いえいえ、そこまで世話になるわけにはいきませんよ。今回の珍事も前向きに考えて、こういう未知の経験も、新鮮な体験をさせてもらっている受け取ることにして楽しみたいと思います」
「いい考え方だね。じゃあ私も未知で新鮮な体験をいっぱい楽しみたいな」
リリにそんな意図がないとわかっていてもイヤらしい意味にとらえてしまう。いっぱい楽しみたい。
「ですが家事や仕事などは諸々やりづらくなっていそうで心配です」
「心配なんていらないよ? 安心して、ママが全部やってあげるからね」
「あーそれは助かりま……ママ?」
服を着ながらから返事をしていると、後ろから抱き上げられて頬にキスをされる。
自然な流れでキスされるのもおかしいが、今ママといったか?
さっきからふわふわとした喋り方でいつものリリとは違うと思っていたが。まさか自分をママであると自認してしまっているのか。
だとしたらどれだけ家族に飢えているのだ。
「あの、私の中身は大人ですので、そこまで過保護にしていただかなくても――」
「ダーメ。ポーションの効能の詳細だってまだわからないんだから、自分で大丈夫だなんて決めつけないの。それでまた気を失たりして怪我したら大変でしょ?」
抱っこされてジッと見つめるリリの目には母性がありありと浮かび。瞳がハートになっているというか、完全に自分を母親だと思い込んでいるご様子。
大変だ。
自分好みの美女が娘になったかと思えば。旅先ではどこでも甘える淫乱な妻になって。次は過保護なママになってしまった――。
「ロイはママの言うことが聞けないの?」
あっ、すっごいぞこれ。股間にグンッとくる。体が大人だったら聖棒がリリにボディブローをかましていただろう。
さっきまではロニを見つけたら説教でぼてくり回し、言葉の暴力でしばき倒してやろうとまで考えていた。だが今では感謝の念が湧いてきていて、ありがとうの雨を浴びせそうだ。
「むぅー、胸が邪魔で抱っこしづらいんだよね。切っちゃおうかなこれ」
「い、いや、こんな一瞬のために早まらないでください」
恐ろしいことを言うな。
そんなことをしたら射聖してでも治癒してやるからな。
「まあコツは掴んだから大丈夫だけどね。こうやって頭を支えてあげればいいんだよ……あっ、おっぱい飲む?」
目がハートになっているのは多分幻覚や見間違いではない。リリの母性が連続的に大爆発を起こしている。
ルカにも優しいので子供が好きなのはわかっていたが、まさかこれほどまでとは。
「飲みませんよ。固形物の飲めない赤子に戻ったと言うわけでもありませんし」
そもそも母乳出ないだろ。
出ないよな?




