太腿のつけ根を合法的かつ違和感なく舐める唯一の方法
「よ、妖精たん! 妖精たんいた! ぺろりたい! ペロペロしたい!」
「なに者だこやつは? 舌のしまい方を忘れた犬畜生か? 気色の悪い」
辛辣ではあるが、ローレンツの壊れ具合を見れば仕方がない気もする。
「ハッ――す、すまない。理性を失いかけていた!」
失いきってたけどな。
他人事ではないので俺もリリの前では十分に気を付けよう。
「ろ、ローレンツ・クロロックだ。あの城に住んでいる。さきほどは挨拶も済まさずに追いかけてしまって申し訳ない。ところで貴女は、よよほ、妖精たんは妖精さんなのか!? 本物の妖精たん!?」
ローレンツは非常に興奮しているようで喋り方も上ずってだいぶ気持ち悪くなっている。
挨拶をすれば追いかけていいなんて理屈が通るなら、俺は近所の子供たちに無差別に挨拶して回っている。
「ふむ。犬畜生とは言え、先に名を明かされたならばこちらも礼を尽くして応えねばなるまい。余は見捨てられし黄金の女王オーレリア。世界樹の守り人。今はわけあって世界樹様の枝に身を寄せている、はぐれ者の妖精よ」
「お、オーレリア様……なんて神々しいお名前なのだろう。何度も舌で転がしたくなる響きだ」
舌で転がすのは名前だけにしておけよ。
間違ってもオーレリアを口に含もうとするな。槍で奥まで刺されるぞ。
「さ、触っても、触ってもよろしいだろうか」
いいわけなかろう。
初対面の相手に触っていいかなどと尋ねるのは流石世間知らずのお貴族様と言ったところか。
「うわぁ……」
我が家の誇る名女優であるところのリリですら演技をやめてしまい冷たい目でローレンツを見ている。
俺も一度でいいから、リリのような美女に心を切り裂くような鋭利な視線で聖棒を見つめられ「貧相で役に立たなそうな棒切れ」と罵られたいものだ。
自慢としているものを傷つけられると人は評価を覆そうと本領を発揮するものだからな。二度とそんな口がきけないようにわからせたい。
「失せよ下郎。貴様と話していると馬鹿がうつりそうだ」
「はうぅんっ!」
妖精は目もいいんだな。
一度のやり取りでローレンツを馬鹿と見抜くとはなかなかの慧眼である。
俺も薄々は父親似の馬鹿なのではないかと疑っていたので。妖精のお墨付きとあれば答え合わせが済んだ気がして晴れ晴れとした爽快な気分である。
「ほぅう……あおぉんっ」
オーレリアの端的な返しに胸を抑えて苦し気に呻き、ローレンツの白い顔が赤く染まっていく。
彼の保有するなにかしらの癖に、言葉の針が深々と突き刺さったのだろう。
もうリリは嫌悪を隠しもしていない。闇の精霊を見るときのような表情になってしまっている。羨ましい。なんとかカットインできないものか。
「それで、これはどういう状況なのか詳しく説明してもらえるか。そもなぜこんな場所にいる。この海は濁った魔力の臭いがきつくて鼻がもげてしまいそうだぞ。奥方様の胸の中か、世界樹様の股座にいますぐ潜りたい気分だ」
俺はともかく、リリの胸にはいい匂いのする魔力があるらしい。俺も聖棒を潜りこませたいので一緒に頼んでみよっか。
「実はローレンツ様の実験に付き合っておりま――」
「そうだ、オーレリア様があのポーションを完成させてくれたのですか!?」
ローレンツは俺など眼中にないのだろう。
実験を中止してやろうかな。
「はぁ……余はいま世界樹様との会話を楽しんでいたのだぞ? 貴様が余計な口を挟んだせいで世界樹様は口を閉じてしまわれたではないか。失せろと言ったはずなのにいつまで居座るつもりだ下郎。恥も知らぬのか」
「おぉうふっ! フーッフーッ!」
興奮しっぱなしのローレンツ。
これは俺が口をはさめる状況ではなさそうだ。
はじめてゾンビを見たときの俺のような表情をしているリリと遊んでおこう。ご機嫌取りも父の役目だ。
「いけませんよ。そんな顔をしては」
「んっ……!」
リリの髪を一房つまんで頬をくすぐってやるとすぐに意識をこちらに向ける。
ローレンツを見ていたときの顔が嘘だったかのようにキャッキャと笑って軽い抵抗をしてみせた。
やめると期待したような目で笑顔のまま見つめてくるので、また髪をつまんで首をくすぐってやると肩をすくめてイヤイヤと頭を振って抵抗しながらも、終わると次の攻撃を期待しているかのように待機する。人懐っこい犬の相手をしているみたいで非常に楽しい。
ふと首輪をつけて四つん這いのリリの散歩をする姿を想像してみるがいまいちしっくりこなかった。
逆に俺が首輪をつけてリリに散歩をされている姿を想像してみると驚くほど様になっている。
四つん這いのままリリ様の椅子になって、パイプタバコをふかすリリ様を背に乗せる俺。リリ様の美貌につられ、火に集まる蛾のように近づこうとする輩に吠えまくる。「うるさい」と叱られて尻に火種を落とされキャンキャンと鳴く俺を見てケタケタとリリは笑い――。
「次は、ねぇ次は?」
だが現実は無情。完全にリリが犬側だ。
飼い主属性強めの容姿をしておいて、お手の一つも命じてくれないのは若干の寂しさを覚える。
今もオーレリアに執拗に絡んでは罵られて転げまわるローレンツがちょっと羨ましくなってきた。俺もあれぐらいとびぬけた馬鹿になれたら幸せに生きられたかもしれない。
「フフフ、ではこれはどうですかー?」
ルカと遊ぶときと同じ要領で首や腋を指でくすぐってやると巨大な双丘を腕で寄せて亀のように縮こまって笑い悶えるリリ。俺の亀さんは反比例するように伸びあがりそうになったので「これは娘」と心の中で高速連続詠唱をして理性を保つ。
「ハァハァハァ……! た、楽しすぎてお漏らししそう……! あいつがルカをくすぐる気持ちがわかった。これは全人類が共有すべき最高の娯楽だよ……。お金取れると思う……!」
いくらなんでも楽しみすぎだろ。
見た目は勃起不可避の大人なのにくすぐられて喜ぶなんて精神年齢が幼すぎる。
しかし可愛いには可愛いのだが、見た目が子供とはかけ離れているため、どうしたってその方向性は女性的な方角を向いてしまっている。
くすぐる度に揺れる豊満でたわわに実った果実が「食べごろだよー」とリリの声で語りかけてくるのだ。
「もっと、もっとして? あっ、あひ! あひゃい! うひひぃ――!」
「リリは娘」と何千回と詠唱しても、リリの成熟した大人としての魅力が理性を破壊せんと殴りかかってくる。とてつもない速度のラッシュだ。果たして俺は防ぎきれるのか。
亀さんの飼育員であり飼育淫たるリリに、これ以上俺の亀さんをいじめられると、股間のねぐらから亀さんが家出してしまいそうだ。
「ぬおおおうっ!?」
「お、おかえしだよ?」
油断していたせいで変な声が出た。くすぐり返してきたリリがニヤリと笑っている。
息も絶え絶えと言った様子な癖に、してやったりとしたり顔をしているのが可愛い。
「ハハ、こいつめ。ならば本気でいかせてもらいますよ」
「本気でイかせる!? ひぃっ!? ひにぃいい! はひゃはひひひ! 手が、手が何本あるかわからにゃひー! あっ――ホントにこれ――――イッ!」
「フアハハハ。ルカとの勝負のなかで編み出された絶技をとくと味わうがいい! それそれそれ、ほれほれほれぇッ!」
「くひぃっ! うひぃー!!」
抵抗などできないほどの勢いで脇腹をくすぐってやると、たえられなくなったリリが身をよじって暴れる。暴れれば暴れるほど波打つ爆乳。胸を見ないようにと水平線を睨んで、爆乳の波ではなく自然の波に焦点を合わせる。
そうやって周辺視野だけで彼女を捉えていたのがいけなかった――。
「も、もう我慢できないッ!」
くすぐったさの限界に達したらしいリリが寝返りを打つように反転した。
魔力で筋力強化でもしていたのだろうか。その身のこなしは一流の冒険者らしい、現役一等の探索者の異名に相応しい速度だった。
反転する勢いは凄まじく。リリの頭部は風切り音が聞こえるかというほどの速さで俺の睾丸に向かって追突してきた。
「ゴアアァッ! ぐぅうッ! うぬぉおおおッ……!」
「えっ? えぇっ? なに?」
最初、巨大な隕石が降ってきたのかと思った――。
俺の二つの地球に恐竜が暮らしていたら瞬時に絶滅していただろう。それほどの衝撃を味わった。
リリに悪意もなければ罪もないのは理解している。
彼女はくすぐりから身を守るために暴れた結果、二つのガイアをヘッドバットという名の隕石によってジャイアントインパクトしてしまっただけなのだ。
彼女は責められまい。責を問うならば、弱点を弱点のまま鍛えず放置していた己か。人類の不完全で未熟な進化にある。
筋力トレーニングを呼吸よりも多くしていると自負する俺でも、この強靭な肉体の中で鍛えられない部位がいくつかあった。
一つは肛門括約筋。そしてもう一つは二つ一組のガイアである。
「おふぅうう……!」
「あれ? え? なんで?」
今までツーマンセルでやってきたガイアたちが仲違いし、片方が離れて天然衛星になってしまいそうなほどの痛みが襲っている。
ルカにスコップと対決させられたときと同じかそれ以上の破壊力である。
幸い勃起はしていない。痛みを感じた瞬間に制御したから。ルカとの思い出がなければリリの頭を跳ね上げていただろう。
「ちょ、ちょっと待ってくださいね……」
痛みにたえながら慎重にリリの頭をおろしてうつ伏せになって砂浜に倒れた。
痛みと不快感が徐々に増していくのが、ここを痛打されたときの特徴である。
「ご、ごめん痛かったの?」
「全然大丈夫です……! これぐらい何ともありませんから……ッ!」
罪悪感を芽生えさせまいと極力優しく語りかけたつもりだったがどうしたって力んでしまう。
足をばたつかせたいが、大袈裟に振舞えばリリを傷つけてしまうのでただただ震えて痛みを伴う長い長い冬が去るを待った。
ガイアに春が来たところで海水浴から戻ることに――。
ポーションの実験は成功していた。
リリは日焼けして。俺は焼けていなかった。
痛がって力の入らない俺の水着をリリが無理やり脱がしたことで証明された。
☆
部屋でリリとカードゲームなどしながら時間を過ぎるの待っていると、夕食の時間になったと熟女に呼びだされ、滅多に見られない長いテーブルの食卓が配置された部屋へと案内される。
上座には伯爵が座り、テーブル中央の席には俺。そして横にはリリが並ぶ。
オーレリアはローレンツから逃げるために消えた。
最初はリリが俺の上に座ろうとしていたが、長い説得の末、リリの「髪にキスして」という要求を達成することで横に座ってもらえることになった。
これは予め部屋で提案されていた演技である。
より妻としての印象を強めるために、たくさんわがままを言うからアドリブでいなすか譲歩してくれと指示されていたのだ。
リリほどの名演技に付き合えるほどの技量は持ち合わせていないので正直不安ではあったが。リリは普段の甘えたがりで人懐っこい性格を何倍にも濃くしただけの単純な演技をしてくれたのでなんとかそれらしく振舞うことができた。
失敗したらどうしようかとひやひやしながらも聖棒がビキビキする。
「まったく呆れるほど仲の良い夫婦だな。貴様たちを見ているだけで数百歳は若くなった気になれる」
「おたわむれを。伯爵様は今でも十二分にお若いではありませんか」
何百年も生きているのをうっかり匂わせるな。
ローレンツの話は聞かなかったことにしているのだから、お前も守秘義務の遵守に全力で努めろよ。妻に似ているからって気を抜くな。気持ち悪い。
「奴隷商の件なのだが、必要な金はこちらが持つので安心するがいい」
やはり仕事を請け負うのは決定事項らしい。
あれだけ言葉を尽くしても無駄なのだから、これ以上平民が口答えするのは無礼だ。断れそうもないので頷くほかない。
「左様でございますか。閣下の格別なはからい恐悦至極に存じます」
「買い取った子供も、いくあてがないのならこちらで預かろう。問題はそのあと。奴隷商の処遇なのだが、そちらは貴様に任せたいと考えている」
それが一番困るんだが。
子供ならば教会で預かって俺様パラダイスを築ける。だが法を無視して人を売り買いするような人間など牢獄にぶち込むか、オーレリアの槍を尻にぶち込む以外の選択肢が浮かばない。
子供を大切にしないようなやつなど、尊厳を奪われても文句は言わせない。
「買収というお話であったかと記憶しておりましたが。それは私の手に余る差配かと」
「奴隷商だからと言って奴隷を売らなければ生きていけぬわけでもあるまい。商人としてマフィーダに独自の流通網を持っているはずだ。別の商売を任せて貴様が好きに利用すればいい」
簡単に言うが、職業の斡旋など神父の業務の範疇ではない。
「闇の世界に生きる者同士、闇商人の適所への配置転換など容易かろう?」
光をひろめる教団に属している人間に対してなんて失礼な物言いだろう。
勘違いにしてもひどすぎる。
「閣下にお言葉を返すことをお許しください。これは私見ではございますが、一度金で動いた人間は、他所からさらなる大金を積まれればいとも簡単に鞍替えをするものかと」
「するどい指摘だな。人に従わぬ黒豹を己の手足のように動かし。金では動かぬ貴様が言うと頑健な説得力がある」
だから黒豹ってなんの話だよ。
猫一匹、猫人一人も制御できてねぇよ。
「だがそれに関しては心配は不要。そうならぬ準備はしてあるのでな。フフ」
フフ――ではなく説明の義務を果たせ。
貴族同士なら、その含み笑いに十も百も意味を見出すのだろう。だがこちらは聖棒がでかいだけのただの平民だ。交渉などからきしで裏の意図などくめやしない。
つい先日だって交渉に失敗して猫人どもに担がれたばかりなのだ。
「さあ晩餐を楽しもうではないか。新たな船出を祝して――乾杯」
強引に話を打ち切られると、リリは相変わらず綺麗な姿勢と所作で食事をはじめた。好き嫌いもせずに豆の一つ一つも味わうように、優雅に食事をしている。
「愛妻はまるで貴族のようだな。色に狂ったように見せかけても生まれ持った気品は隠せぬようだな」
「……?」
リリは何を言っているのかわからないと言った様子で惚けているが、伯爵にはその演技も見透かされているようだった。
人の話を聞かない馬鹿のくせにこういうところは鋭いから油断ならない。
「はい、あーん」
「あっ、はい……」
「フフ……仲睦まじいのが嘘というわけではないのが面白いところだ。貴様を見る目は、恋に溺れた生娘のように潤んでいるではないか」
仲がいいのはそうかもしれない。
リリにとって俺は父か兄、仲の良い友人のような立ち位置なのは話していても伝わってくる。それも演技だと言われたら一生ひとを信用できなくなるが。
「早速ではありますが、明朝には出立させていただきたいのですが」
「できる男は仕事もはやいのだな。そう言って今夜にでも抜け出してしまいそうだが、我が城の警備をあまり侮るなよ。夜のうちに出ていかれでもしたら、客の一つも十分にもてなせぬのかと悪評を振り撒かれてしまう」
どこまでも自分本位だな。
「重々承知しております。なにより閣下の御厚意に甘えている身。恩に後ろ足で砂をかけるような振る舞いはいたしません」
「それを聞いて安心した。今夜はゆっくりと休むがよい」
何が何でも泊まらせたいらしい。
何かを企んでいるような気配を感じるが、気のせいであると信じたい。
☆
夕食も食べ終わり再び貸し与えられた部屋へと戻る。
テーブルには散らばったままのカードが置かれていてるが、馬屋に預けていた荷物が運び込まれていた。
中身を確認すると護身用携帯メイスがなくなっており、その防犯意識の高さには感心する。しかし相変わらず客のプライバシーへの侵害に躊躇がないのは辟易してしまう。
「この様子じゃあ監視もされているかもしれませんね」
「ふーん」
演技をやめていつものクールで無表情なリリに戻っている。
ベッドの上でくつろいでは生足を隠そうともせず露骨に晒している。監視を意識して、俺に気を許しているというポーズだけはしているようだ。抜きどころは豊富だが、抜け目がないな。
「そういえばさきほど入浴の準備があるといっていましたね」
「お風呂だよね。いってみる?」
「はい、とても興味があります」
「そうなんだ。意外だね」
水浴びは日に二回するほど体臭や汚れが残らないように気を配っているのだが、それを意外と言われるのにはいくつか理由がありそうだ。
たとえば「普段から加齢臭で臭いくせにあれでも気を付けていたんだ」とか思われていたら一切の食事が喉を通らなくなるだろう。
ひとは香りの強い香草や花を摂取し続けると体臭に出ると聞く。もしそれが真実なら今後は薔薇の花しかたべない草食動物になってやる。
☆
ダーリンと同部屋ってだけでも危ないのに、顔がよすぎて見ているとイキそうになってしまい空返事しかできない。
浜辺でのイチャイチャを振り返るだけでも思い出し脳イキしている。
私が妻だって噂を町中に流しておいて本当によかった。
匿名で冒険者組合を利用した甲斐があったというもの。拡散力が想定よりも遥かにある。
このまま教会に戻っても夫婦を演じられる環境を作れたらいいんだけど。この関係を維持できる策を練ろう。
幸い今日はまだ治療の予約もあって。どさくさに紛れて既成事実を作るにはもってこいの舞台が整っている。
監視なんてないのにダーリンは周囲を警戒しているし。仲の良い夫婦が夜になったらすることを無理なくスムーズに行えるはずだ。
「うーん……」
ダーリンのダー棒はだいたいこれぐらいだから……お腹のこの辺まで入ってくるのか。ふ、ふーん。想像しただけでイキかけるね。
「具合が悪いのですね。顔が赤いですよ。夜まで耐えられなそうならいま治療をしましょうか?」
「問題ないよ。それに夜は長いんだし。監視の目を感じたときにそれとなくやるのが自然だと思うよ」
「自分の体調不良さえも利用してまで私の秘密を守ろうとしてくれるのですね……リリ、あなたは聖女と呼ばれるに相応しい女性だと思います」
性女と呼んで滅茶苦茶に愛してほしい。
「足の傷は治っていますか?」
「うーん、傷跡は残ってるね。ほ、ほら」
「そうですか。ではなんとかしないといけませんね」
勇気を出してスカートをめくり股のつけ根を局部が見えないギリギリの角度で見せるが、ダーリンはカードを片付けていて見てくれない。
焦らしが上手すぎる。女を手のひらで転がすのが巧みすぎる。
天然の女殺しだ。
「ふ、ふぅー。カードゲームはまたあとでしましょうね」
「うん……」
まだ睾丸が痛むのか震えているのがかわいそう。私が舐めても治るなら口に入れて転がしてあげるのに。
☆
一緒に入浴したがる妻の振りが上手すぎて本気で心配になった。
涙まで流して足にしがみついて「後生だから一緒に入れて」と懇願するリリ。
なにかと寂しがりな一面を見せる子なので、半分ぐらいは本音が混じっているように思えて後ろ髪がひかれる思いだった。
入浴場は三種類あるらしく、そのうちの二つをそれぞれ使わせてもらった。
リリは熟女に何事か呟かれて引き離され、おもてなしの一環として体を洗うからと複数のメイドに囲まれて連れていかれた。
俺にはそのようなサービスはないのが残念でしかたない。俺も熟女や美女メイドに囲まれて聖棒以外の全てを洗ってもらいたい。
そんなことを考えながら浴場へ向かうと、何故リリをわざわざ使用人たちが別の場所へ連れて行ったのかを理解する。
「やあ、よくきたな」
「……どうも」
ローレンツが先に入浴していた。
お付きのメイドらしき方々が数人、メイド服を着用したままローレンツの身体を洗っている。
ご子息様にどこの馬の骨とも知らない女と裸で会わせるわけにはいかなかったのだろう。高貴な血が平民の女の胎に入れば色々な面倒も起こる。
リリに限ってそんなことは起こらないだろうが、貴族側の気持ちもわからないでもない。
「ロイズレッドには使用人がついていないのか? ならば俺が背を流してやろう」
「いえ結構です」
「遠慮をするな。俺たちの仲ではないか」
自分の体も自分で洗えないようなやつに俺の体を任せられるか。
だったらそのメイドを貸してくれ。
「己のことは極力己で済ませよと教典にはあります。自立なくして他者の救済などできません」
「……目からうろこが落ちる思いだ。ロイズレッドの言う通りだ。自分のことも自分でできない男が誰かの役に立とうなどと烏滸がましかった!」
そう言うとメイドたちに離れるように伝えて、さっさと小さな浴槽に浸かる。
貴族階級特有の、体の汚れを落とすための浴槽なのだろう。そこで体をこすって洗い始めた。
「俺にもそういう時代があったはずなのにすっかり忘れていた。ぬるま湯につかるように、親から与えられた境遇にすっかり慣れてしまっていたぞ」
時代で自分を語るな。お前が言うと本当に世紀を跨いでそうで洒落にならない。
「そういうことならばロイズレッドに手配していたメイドたちもキャンセルしよう。面倒をかけるが、全裸で待機している者たちに服を着て他の仕事に向かうよう伝え来てくれ」
「かしこまりました」
謀ったなロリコン貴族。
お前が俺の背を流すと言うから拒絶したのだ。そんな素敵イベントが待っていると知っていたならいくらでも洗わせてやったよ。
「そんなところに立っていないでロイズレッドも体を洗ったらどうだ。裸になってしまえば身分もなにもない。無礼講というやつだ、その下着も脱いでしまえ」
「……ええ、お言葉に甘えさせていただきます」
貴族に下着を脱げと言われる日がくるとはな。
これが男でなければ良い思い出だったのに。
「今日は実験に付き合ってもらっ――な、なんだそれは!」
「ひっ、ひぃいいい!?」
「…………」
言われるがまま下着を脱いだことで、俺の聖棒が外気に触れる。
ローレンツは目を見開き。残っていたメイドが悲鳴を上げてへたり込んでしまった。
「海でクラゲにでもさされたのか!? とんでもなく腫れているじゃないか! 毒は吸えばいいのだったか!? すぐに医療に明るいメイドを呼んで……いや、自分のことは自分でやるのだったな!」
自分のことは自分でやるとは言ったが、股間の毒は吸わないよ。
「坊ちゃん、あれは腫れているわけではありません――」
メイドの一人がこちらにも聞こえる声量で耳打ちしている。
「メイド長が仰っておりましたが、ロイズレッド様は古今無双の巨根だそうです」
「なっ、あれが通常時だとでもいうのか!?」
「はい、おそらくは……」
「これまでに数百本は見てきたがあれほど立派な豪槍は拝んだことがないぞ」
どんな人生を送れば数百本もの陰茎を拝む機会があるのだろう。
長い人生の中で男にハマっていた時期でもあるのか。
「私もあれほどのモノは初めてです。股に蛇を飼っているなどと、メイド長の悪い冗談かと思っていましたが……実物はそれ以上。あれでは蛇ではなく、血管を浮かびあがらせた怒れるドラゴンです」
「たしかに、あれはドラゴンと言うに相応しい威厳を放っている」
人のイチモツに威厳を感じるほど自分のランクを下げるな。人としての尊厳を取り戻せ。
「レ、レイズロッドは肉体だけではなく、そこまで逞しいのだな」
杖を掲げるみたいな名前にするな。
「坊ちゃん、何人かはつわりの症状が出ていて、産気づいた者もいます。我々に退出の許可をいただけますでしょうか」
「かまわない。使用人たちはみな浴場から出ろ。念のため避妊薬も飲んでおけ」
偉い騒ぎになったな。
☆
入浴を終えて新しい衣服に着替える。
神父服ではなくいつものチュニックとひざ丈の下着姿である。
廊下を歩くとメイドたちがひそひそと話し、「無責任な男」だとか「孕まされたナタリーが泣いてる」だとか「メイド長はアナルで妊娠した」だとか、誤解を解く気にもならない、とんでもない噂話を展開していた。
幸いローレンツと一緒に入浴しtえ一緒に出てきたのでアリバイはある。特に心配はいらないだろう。
そのまま無視して廊下を歩いていると、ちょうど湯上りのリリと遭遇する。
リリの周りには複数のメイドがおり。両腕には絡みつくように抱き着いている。
「お姉様……またいらしてくださいね」
「私たちお姉様につくすためなら何でもいたしますから!」
「捨てないでくださいお姉様……!」
あちらはあちらで、俺とは真逆の事が起きているらしい。
いったい何をしたのだろう。
「ん。じゃあね」
「ああ、お姉様!」
「い、いかないでくださいませ……!」
メイドたちを置き去りにし、魔法でつくた氷でトントンと警戒に飛びながらこちらに向かってくる。
股を開いて抱き着いてきたので落とさぬよう足を掴んで支えてやる。もちろん足を開こうとした瞬間、ミニスカートのなかをみないよう瞬時に首を植えにあげるのを忘れない。
すぐにおろすと、するりと腕を絡めてきて俺の臭いを嗅ぐ。
「お風呂上がりの匂いもいいね」
「リリもいつもとは違う、薔薇の香料の香りがしますね」
「やだ?」
「いいえ、好ましい香りですよ。よくしてもらったみたいですね。ちゃんと感謝の言葉は述べましたか」
「何も言ってないよ。なぜかずっと感謝されてて気持ち悪かったから」
リリとメイドたちのあいだになにがあったのか。ただ裸体を見ただけでハンカチを噛んで俺を睨むほどリリに心酔してしまったとでもいうのか。
いいなぁ。俺なんてローレンツに陰茎の話しばかり振られて生き地獄だったのに。
「部屋に戻ったらすぐに治療を始めます。監視に悟られぬよう合わせてくださいね」
「うん……いっぱいしてね」
☆
あてがわれた部屋に戻ると、すぐにベッドに転がるリリ。
ゆっくりと顔をあげて唇をたわませていたので近寄って頭を撫でてやる。
クワガタかという速さで胴に腕を回して抱き着くリリ。治療が待ちきれないといった様子だ。
「ずっと我慢していたのですね」
「……うん。もう我慢の限界」
入浴もしたので毒の回りも早まっていたのかもしれない。
俺の秘密のせいでこれ以上我慢を強いるのは心苦しい。急いで治療してやろう。
自然流れを意識してリリをベッドに転がし。覆いかぶさってキスをするふりをして治療を始めた。
治療個所は足首と太腿。そして体内に残っているであろう毒。
足は目を瞑ってみないように気を付けよう。特に太腿のつけ根は、舌先の感覚だけを頼りになんとかせねば。
「今夜は長くなるかもしれません」
「ふ、ふつつかものですがよろしくお願いします……」
こうして俺とリリの長い夜は始まった――。




