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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第一部  作者: マスター


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第二十三話「ゴルから、返事が来た」

二十三話目です。


ラグル族を通じて、ゴルに採掘停止の知らせを送りました。その返事が来る話です。


ゴルという人物が、言葉を使うとき、余分なものを入れません。だから、少ない言葉の中に、重いものが入っています。


では、どうぞ。

採掘停止の知らせを山に送ってから、四日後だった。


ラグル族の一頭が、集落に戻ってきた。


足が速い若い個体で、ガルが連絡役として頼んでいた子だった。


名前はないが、耳の先に傷がある子だった。シロが顔見知りで、会うたびに鼻をくっつけていた。


その子が、口に小さな布を咥えていた。


「返事だ」とガルが言った。


受け取った。


布を広げると、中に紙が入っていた。


岩人の文字で、何か書いてあった。


読んだ。


短かった。


三行だけだった。


一行目。「知らせを受け取った」


二行目。「泉に行って、伝えた」


三行目。「ありがとう」


それだけだった。


ゴルらしかった。



ガルが横で見ていた。


「何と書いてありましたか」


「短いです。受け取った、泉に伝えた、ありがとう、の三行だけ」


「三行」


「ゴルさんは、余分なことを言わない人なので」


ガルが少し笑った。


「そういう方もいるんですね」


「言葉が少ない分、一つ一つが重いです」


「ありがとう、というのは」


「岩人が、人間にありがとうと言うのは、珍しいことだと思います。ゴルさんが言うなら、本当にそう思ってくれているということです」


ガルが頷いた。


「凪様も、それで十分だと思いますか」


「十分です」


「本当に」


「本当に」


ガルが、また少し笑った。


「凪様は、そういうところが、私には真似できないところです」


「どういう意味ですか」


「少ない言葉で、十分だと思えること。もっとほしい、もっと感謝されたい、という気持ちが、私には正直あります。百年間、誰にも認めてもらえなかったから」


「それは、当然だと思います」


「当然ですが、凪様はそれがない。少しでも動いてくれれば、十分だと言う。なぜですか」


少し考えた。


「感謝されるためにやっているわけじゃないからかもしれないです。気になるからやっている。やったら、少し落ち着く。それだけです。だから、感謝があれば嬉しいですが、なくても続ける」


ガルが、静かに聞いていた。


「それが、凪様のやり方なんですね」


「そういうやり方しか、できないだけです」


「それが、続けられる理由だと思います」とガルは言った。「感謝されるためにやっていると、感謝がなければ続かない。気になるからやっていれば、結果に関係なく続けられる」


「そうかもしれないです」


「見習いたいところです」


「ガルさんは、百年間、集落を守り続けた。それも、同じだと思います」


ガルが少し黙った。


「守り続けたのは、他に選択肢がなかったからかもしれません」


「それでも、続けた。続けたことに、意味があると思います」



その日の午後、ルナが来た。


「ゴルから返事来たって聞いた」


「来た」


「なんて書いてあった」


「三行だけ。受け取った、泉に伝えた、ありがとう」


「三行だけ?」


「ゴルさんは、短い人だから」


「岩みたいな言葉だね」とルナは言った。


「岩みたいな言葉」


「ゴルって言ったら、もうその感じ。岩みたいで、でも重い」


「うまい言い方だな」


ルナが少し得意そうな顔をした。


「泉に伝えた、って書いてあったんだね」


「そうです」


「精霊に、ってこと?」


「たぶん、そうです」


「精霊、採掘が止まったこと、分かったかな」


「分かったと思います。精霊は、感じ取れるので」


「泉の水、戻るかな」


「すぐには戻らない。でも、採掘の振動がなくなれば、地下の流れが少しずつ戻るかもしれない」


「どのくらいかかる」


「早くて半年、長くて数年」


「数年か」とルナは言った。「長いね」


「長いですね」


「でも、止まらなかったら、もっと長くかかった」


「そうです」


ルナが、少し考えた。


「ゴルは、数年待てる人だよね、きっと」


「岩人は、待つのが得意だと自分で言っていました」


「じゃあ、大丈夫だ」


ルナがそう言って、満足した顔をした。


子どもの結論は、いつも早かった。でも、間違っていなかった。



夕方、シロと集落の周りを歩いた。


変化を確認した。


三日前に気になっていた木が、少し元気になっていた。詰まりを直したからだと思った。


南の方の土が、以前より柔らかかった。ルナが水を送り込んでいたのかもしれなかった。


北の端に、新しい植物が出ていた。


ルナが移植したやつの近くに、自然に生えてきたものだった。


「増えてるな」


シロが鼻を動かした。


「ルナが植えたやつの近くに、自然に増えた。植物が増えれば、土が豊かになる。土が豊かになれば、また増える」


シロが尻尾を振った。


「良い循環だ」


歩きながら、考えた。


今、この集落に何が起きているか。


水が流れている。


土が柔らかくなっている。


植物が増えている。


精霊が元気になっている。


ラグル族が増えた。


ルナが毎日歩いている。


ガルが、少し表情が柔らかくなった。


全部が、少しずつ変わっていた。


誰か一人がやったわけじゃなかった。


私が始めたことを、ルナが続けた。ルナが気づいたことを、ガルが記録した。精霊が元気になったことで、植物が増えた。植物が増えたことで、土が豊かになった。


全部が、つながっていた。


「これが、循環ってことだな」


シロが、横を歩いた。


「始まったな」


シロが、また尻尾を振った。



夜、ガルと話した。


「凪様、最近、集落の状態をどう感じていますか」と、ガルが聞いた。


「良くなっています。全体的に」


「どのくらい良くなっていますか」


「来たときを十だとすれば、今は十五か十六くらいかな、と思います」


「数字にするんですね」


「感覚を共有するのに、数字が使いやすいので」


「十が、凪様が来たときの状態ですか」


「そうです。それが基準。私が来る前は、もっと低かったと思います。八か七かもしれない」


「低い方がひどいんですね」


「そうです」


「今は十五か十六」


「徐々に上がっています」


「いつか、どのくらいになりますか」


少し考えた。


「二十か、二十五くらいになれば、自分で回る状態になると思います。そこまで行けば、誰かが手を加えなくても、循環が続く」


「今は、まだ手が必要」


「少し、必要です。でも、前よりずっと少なくなっています」


「ルナがいれば、続けられますか」


「ルナが続けてくれれば、私がいなくても、十七か十八くらいまでは上がると思います。そこから先は、自然が自分で上げていく」


ガルが、静かに聞いていた。


「二十まで行けば、自分で回る」


「そうです」


「あと少しですね」


「あと少し、ですね」


ガルが、少し間を置いた。


「凪様、一つ聞いてもいいですか」


「なんですか」


「二十になったとき、凪様はここを去りますか」


「たぶん、そのあたりで、次に行くかもしれないです」


「ルナが、寂しがります」


「そうですね」


「私も、寂しいです」とガルは言った。静かに、でもはっきりと言った。「来たときから、こんなに正直なことを言うようになったか、と自分でも思いますが」


「それは、良いことだと思います」


「凪様がいたから、そうなったのかもしれません。凪様は、正直に言う人なので」


「気になることを、そのまま言っているだけです」


「それが、難しいんです、普通の人には」とガルは言った。「百年間、本当のことを言うと危ないことが多かった。だから、みんな、本当のことを言わない癖がついてしまった」


「今は、言えますか」


「少しずつ。凪様がいるうちに、もう少し練習したいです」


「何を練習したいですか」


「正直に、感謝を伝えること」とガルは言った。「ありがとうございます、凪様。本当に、ありがとうございます」


私は、少し黙った。


「こちらこそ、ありがとうございます。ここに置いてもらって、続けさせてもらって」


「置いてもらった、という言い方を、凪様はするんですね」


「場所があったから、やれました」


ガルが、また少し目を細めた。


「場所を作ってくれたのは、凪様です」


「一緒に作った、じゃないですかね」


ガルが、声を立てて笑った。


「凪様は、いつもそういう言い方をしますね」


「本当のことなので」


風が吹いた。


葉が揺れた。


シロが、足元で丸くなっていた。


「明日、また集落の周りを歩きます。気になるところがあれば、言ってください」


「分かりました」とガルは言った。「ルナも、一緒に歩きたがると思います」


「ルナと一緒の方が、楽しい」


「そうですね」とガルは言った。「あの子は、楽しくさせる子です」


「そうですね」


夜の集落は静かだった。


虫の音が、遠くから聞こえた。


ゴルの三行の手紙が、荷物の中にあった。


受け取った。泉に伝えた。ありがとう。


三行だけだったが、山全体の重さが、その三行に入っていた気がした。


泉に伝えた、というゴルの行動。


精霊に、知らせを届けた。


言葉で通じるかどうか関係なく、伝えに行った。


それがゴルという人だった。


私も、似たことをやっているのかもしれなかった。


言葉が通じなくても、触れれば伝わるものがある。


触れ続ければ、変わるものがある。


それを、ゴルは岩でやっていた。


私は、土と水でやっていた。


ルナは、木でやっていた。


やり方は違うが、同じことだった。


全部つながっていた。


本当に、全部つながっていた。

二十三話目、書きました。


ゴルからの三行の手紙。「受け取った」「泉に伝えた」「ありがとう」。それだけですが、この三行の重さが、ゴルという人物を表しています。特に「泉に伝えた」という部分。言葉が通じるかどうかに関係なく、精霊に伝えに行った。それがゴルの誠実さです。


ガルが「正直に、感謝を伝えること」を練習したいと言った場面。百年間、本当のことを言うと危なかった。だから言えなくなっていた。それが、少しずつ変わっている。凪がいたから、というより、場所が安全になったから、言えるようになった。場所の安全さが、言葉の安全さになる。


「一緒に作った、じゃないですかね」という凪の言い方。いつも「私がやった」とは言わない。でも、謙遜しているわけでもなくて、本当にそう思っている。その感覚が、この物語全体に流れているテーマです。


次話では、集落の状態がもう少し動く話と、少し遠くから人が来る気配があります。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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