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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第一部  作者: マスター


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22/24

第二十二話「久しぶりの集落は、少し変わっていた」

二十二話目です。


森の集落に戻る話です。凪がいない間に、ルナとガルが続けていたこと。その結果が、少しずつ形になっていた。


変化というのは、見ている間には分かりにくい。離れて、戻ってきたときに、初めて分かることがある。


では、どうぞ。

森の中を歩いていたら、シロが急に止まった。


「どうした」


シロが鼻を動かした。


何かの匂いを嗅いでいた。


それから、尻尾を振った。


「分かるのか」


シロが前を向いて、また歩き始めた。


集落の方向に、まっすぐ向かった。


匂いで、帰り道が分かるのかもしれなかった。


私には、匂いでは分からなかった。でも、木の感触が分かった。


来たときより、土が少し柔らかかった。


水の流れが、来たときより少し多かった。


「変わってる」


シロが耳を動かした。


「ルナが、続けてたんだな」



集落が見えてきたとき、声がかかった。


「ナギ、おかえり」


ルナだった。


今回は、集落の中から走ってきた。


集落の外まで走ってくるのではなく、集落の中からだった。


「遅かったね」とルナは言った。


「雨で少し遅れた」


「知ってた。東の方から雨が来るって、朝から分かってた」


「天気が分かるようになったの」


「なんとなく。木の感じが違うから」


「木の感じで、天気が分かる」


「うん。雨が来る前は、葉がちょっと違う動きをする。前より、分かるようになった」


「それは、すごいな」


ルナが少し照れた顔をした。


「ナギがいない間、毎日歩いてたから」


「何か、他にも変わった」


「うん。クロとキョロが言うことを聞くようになった」


「言うことを聞く」


「前は、ご飯のときしか来なかったけど、今は散歩にもついてくる」


「それは、ルナと仲良くなったんだな」


「仲良くなった。あと、北の池に毎日行ってた」


「精霊に会えてた?」


「毎日、会えた」とルナは言った。嬉しそうな顔だった。「最初は来たり来なかったりだったけど、毎日行ったら、毎日来てくれるようになった」


「精霊も、慣れたんだな」


「友達になった」


「友達」


「そう言った、私」とルナは言った。「全部、友達になれるって」


「覚えてた」


「当たり前じゃん」



集落に入ると、様子が前と少し違った。


木が、前より元気そうに見えた。


葉の色が濃かった。


前回、根元に水を送った大きな木を見たら、葉が増えていた。


それだけじゃなかった。


集落の端の方に、前はなかった植物が生えていた。


「これ、誰が植えたの」


「私」とルナは言った。「北の池の近くにあったやつを、ここに移した。合うかなと思って」


「合ってるな」


「うん。根付いてくれた」


「どこで植え方を覚えたの」


「ガルじいちゃんに聞いた。あと、失敗しながら覚えた」


「失敗もした」


「した。三回くらい枯らした。でも、四回目は大丈夫だった」


三回失敗して、四回目に成功した。


「失敗しながらやったことは、次に生きる」


「そう思う」とルナは言った。「枯らした理由が、失敗するたびに少し分かったから」



ガルが出てきた。


「お帰りなさい、凪様」


「ただいまです」


「山は、どうでしたか」


「色々ありました。後で話します。集落が、変わってましたね」


「ルナが、よく動いていました」とガルは言った。「毎朝、木に触って回って、池に行って、集落に戻って来て、また夕方に外を歩く。それを毎日、続けていました」


「ルナが自分でやったんですね」


「私は、何も言いませんでした。ただ、見ていました」


ガルが、少し目を細めた。


「見ていて、思ったことがあります」


「なんですか」


「凪様がやっていることと、ルナがやっていることは、同じではないです。でも、似ている」


「似ている、どういう意味ですか」


「凪様は、ずれているところを感じ取って、直す。ルナは、変化に気づいて、関わる。やり方は違いますが、どちらも、自然に向き合っている」


「そうですね」


「凪様が来る前は、ルナは木に触るという発想が、なかったと思います。それが今は、毎日やっている」


「変わりましたね」


「変わりました。凪様が、きっかけを作った」


「ルナが、やり続けたんです」


「どちらも、必要だったと思います」とガルは静かに言った。



夕食の前に、集落の周りを歩いた。


一本一本、木に触った。


状態を確認した。


来たときより、全体的に良くなっていた。


乾いていた木が、水を取り戻していた。


色の薄かった葉が、濃くなっていた。


一本だけ、状態が悪い木があった。


根元に手を当てた。


水は来ていたが、土の中に何かが詰まっていた。


古い根が、水の流れをふさいでいた。


「ここだけ、まだ元気がないな」


少し力を使った。


古い根をほぐすように、力を送った。


詰まりが取れた。


水が、木全体に届き始めた。


「これで、しばらくしたら元気になる」


ルナが横で見ていた。


「それ、なんで分かるの」


「触ったら、詰まってる感じがしたので」


「詰まってる感じ」


「水の流れが、途中で止まってた。古い根が邪魔してた」


「私も、触ってみていい?」


「どうぞ」


ルナが、木の根元に手を当てた。


目を閉じた。


しばらく、じっとしていた。


「なんか、さっきより、流れてる感じがする」


「直したから、流れるようになった」


「直す前は、詰まってたの、分かった?」


「分かった」


ルナが目を開けた。


「私には、分からなかった。毎日触ってたのに」


「分からなくて当然です。詰まりを感じ取るには、慣れが要る」


「いつか分かるようになる?」


「なると思う。ルナは、天気が分かるようになった。葉の動きで、変化に気づけるようになった。次のステップとして、木の内側の変化に気づけるようになる」


「いつ」


「分からないけど、続ければ、なる」


「続けるよ」とルナは言った。迷いのない声だった。



夕食の席で、ガルが言った。


「一つ、報告があります」


「なんですか」


「三日前に、ベルクから使いが来ました」


「使いが」


「採掘の件です。暫定停止が、正式な停止に変わったそうです。鉱山局が、調査結果を受けて、この区域の採掘を正式に中止することを決定した、と」


私は、少し驚いた。


「正式に、中止になったんですか」


「そうです。それと、停止の期間は、調査部門と農務局が定期的に評価する、とのことでした」


「完全に終わりではないけど、止まった」


「止まりました」


私は、石のことを思った。


レナが渡してくれた、川に磨かれた石。


「ゴルさんに、伝えないといけない」


「使いを出せますか」とガルに聞いた。


「ラグル族に頼めます。昨日も、山と森の間を動いた子がいました」


「お願いできますか。採掘が正式に止まったことを、ゴルさんに伝えてほしいと」


「伝えます」


ルナが、横で聞いていた。


「ゴルって、山の人?」


「そうです。岩人の集落の長」


「大きいの?」


「大きいです。私より、頭二つ分くらい大きい」


「すごいな。岩みたいな人?」


「岩みたいな人です」


「名前も、ゴルって、なんか岩みたい」


「そうですね」


ルナが少し考えた。


「ゴルも、採掘が止まって、嬉しいかな」


「嬉しい、というより、ほっとする感じだと思います」


「泉の水、戻るかな」


「戻るかどうかは、まだ分からない。でも、止まれば可能性が上がる」


「ゴルに会ってみたい」とルナは言った。


「いつか、機会があるかもしれない」


「ゴルも、木に触る?」


「触らないと思います。岩に触ります」


「岩に触るの?」


「岩の感触で、山の状態が分かるみたいです」


「木と岩、どっちがいいんだろう」


「場所によって違うと思います。山には岩、森には木」


「じゃあ、ゴルは山の方が合ってるんだね」とルナは言った。「私は、森の方が合ってる」


「そうだな」


「合ってる場所で、合ってることをする」


「それが、一番いいと思う」


ルナが頷いた。


「なんか、全部そういうことなんだね」


「どういう意味ですか」


「木は森に合ってて、岩は山に合ってて、精霊は水に合ってて、ゴルは岩に合ってて、私は森に合ってる。みんな、合ってる場所がある」


「そうですね」


「ナギは、どこに合ってる?」


少し考えた。


「ずれているところ、かな」


「ずれてるところ?」


「合っていない場所に、気づける。だから、そういう場所に行く。逆に言うと、ずれているところがなければ、やることがない」


ルナが、また考えた。


「じゃあ、ナギが必要じゃなくなる場所が、一番いい場所ってこと」


「そうですね」


「ここが、そうなったら、ナギはいなくなるの」


「そうなる前に、別のずれているところに行くかもしれないです」


「帰ってこなくなる?」


「来られる間は、来ます」


ルナが、少し考えた。


「来られる間、か」


「できる限りは来ます」


「できる限り、じゃなくて、来る、にして」


「来ます」


「よし」


ルナが満足した顔をした。


また、言葉を変えさせられた。


でも、悪くなかった。



夜、一人で北の池に行った。


夜の池は、初めてだった。


暗くて、静かだった。


水面が、星を映していた。


青い光が、水の中で動いていた。


精霊だった。


「久しぶり」


精霊が水面に近づいてきた。


前より、光が強かった。


元気になっていた。


「ルナが、毎日来てたそうだね」


精霊が水面を叩いた。


「友達になったそうで」


また叩いた。


「ルナは、いい子だから」


光がまた強くなった。


分かってる、という感じだった。


「採掘が、正式に止まった。山の泉の水が戻るかどうかは、まだ分からない。でも、可能性は上がった」


精霊が、水の中をゆっくり動いた。


「山の精霊に、伝わるといいな」


精霊が、また光った。


つながっている、ということかもしれなかった。


池の水面に、星が映っていた。


ルナが言っていた、全部つながってる、という言葉を思った。


木も、池も、精霊も、山も、人も。


全部が、一つの大きな流れの中にある。


その流れが、少しずつ、良い方向に動き始めていた。


まだ、解決していないことが多かった。


でも、方向が変わっていた。


それで、十分だった。


池の水が、静かに揺れた。


精霊が、水草の間に沈んでいった。


星が、池の中でゆっくり動いた。


空の星と、池の星が、どちらも光っていた。


どちらが本物か、ということは、あまり意味がなかった。


どちらも、そこにあった。


それで、十分だった。

二十二話目、書きました。


採掘が正式に停止した、という知らせが届きました。ゴルとレナに伝えたい、という凪の動きが、次へのつながりになります。


ルナが「合ってる場所で、合ってることをする」と言った場面。子どもがまとめると、難しいことがシンプルになります。十八話でルナが「全部、友達になれる」と言ったのと同じで、ルナは本質を一言で言えてしまう。


「ナギが必要じゃなくなる場所が、一番いい場所」というルナの言葉は、凪がずっとやってきたことの核心を、ルナが言い当てた場面です。魔王エターナルが、理が整うと消えるように、凪も、必要じゃなくなれば、次に行く。


夜の池に一人で行く場面は、少し静かな時間として書きました。精霊との会話は言葉がないけれど、伝わるものがある。


次話では、ゴルへの知らせが山に届いた後のことが、少し見えてくる予定です。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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