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じゅんけいさん。に。  作者: ジョウビタキ子


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8/13

せーのっ!


「せーのっ!であげるぞ。せーのっで」


「わかった」



父に呼び出されました。


古くなった機械を

軽トラに乗せようとしています。


パッと見た感じ

部室のロッカーくらいの大きさで

中に機械が詰まっていますね。


絶対重いです。


重いから

娘は呼ばれたのでしょう。


一緒に抱えて上げようという作戦ですね。


娘の筋力が役に立つのか

不安しかありません。


それでもやるしかないと覚悟を決めて

グッと腰を落とします。






「いくぞー」

「いいよー」





父の声に耳を傾けます。


「せーのっ!」が聞こえたので全力を込める娘。


ところが


うまく持ち上がりません。


本当に一瞬のタイミングですが


父側の力を全く感じなかったんです。


1人で押し上げても上がるはずがないのに。



どうして?!



っと困惑した次の瞬間、


ぐわんっと父の力が伝わってきました。


でも


娘は全力を出した後なので


うまく支えられません。


大慌ててもう一度力を込めて


どうにかこうにか軽トラに積みました。





全力を出し切った娘の横で、


「上がったな〜」と


満足そうな父を見て


娘は息を切らしながら


一言、言ってやりました。









「ホイってなに?!ホイって!!」









力は


タイミングを合わせないと


意味がないでしょう!









心の中のツッコミが溢れます。



父の声に耳を傾けたあの一瞬、

娘はちゃんと「せーのっ」の

「のっ」のタイミングで力を込めたんです。


「せー」で力を貯めて

「のっ!」で解放したんですよ。


父が「せーのっ」で上げると言ったので。




なのに聞こえてきたのは


「せーのっ、ホイ!」


父は「ホイ!」で、持ち上げたんです。


「せーのっ」で力を貯めて

「ホイ!」で解放ですね。







そんなアレンジを効かせたら、


力を込めるタイミングは


ズレます。







「せーのっ!で上げるって言ったよね?!」


「ん〜?せーのっ!であげたよ〜?」


「ホイって言ったよね?!」


「ホイ〜??はは。言った〜かもね〜?」






ヘラヘラヘラリと笑いながら

軽トラに乗り込む父。


待ってくださいな?


娘は若干

腹が立っていますが?


ワーワー言う娘は気にも止めず

軽トラのエンジンをかける父。




「んじゃ、休憩してて〜」




そう片手をあげて

言い逃げて行ってしまいました。











「………もぉ!」











ポツリと残されて


誰もいない畑に向かって


喚くしかない娘。













そういえば


母はよく


父が作業を始める前に



「どっちからするの?」

「どっちに上げるの?」

「こうね?こうね?」

「せーのであげるのよ!せーので!一緒にね!」



と、呪文のように言っていましたね。



聞き流していました。



いつもの会話だったので

母が何か言っているな、と

気にもとめていなかった…あの確認の山。









コレのことだったんだ。









だから

毎回毎回聞いてたんだ。


そんなに聞く?って思ってましたが

父と2人で作業をして

あの呪文の大切さに

ようやく気付きました。


父の力には合わせられなくても

タイミングを合わせられるように

母は頑張っていたんですね。


あぁ〜。

納得しかありません。












次から


重いものを持つ時は


言葉のどこで力を込めるのか


しつこく


しつこく


確認してから


実行したいと思います。



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