横転
あー…
もー…
ねー…
…………はぁ…
毎度暑いハウス作業中。
きゅうりをカゴいっぱいに収穫していました。
カゴはもうほぼ満杯でしたが
後少しで終わります。
カゴを変えに行くのは面倒だったので
最後まで全部収穫して
終わったら別のカゴに分けようと、
そう考えて突き進んでいました。
そう。
そう思ったのが…
間違いでした。
私は今、
横転した『ハウスカー愛菜号』を見て
絶望しています。
『愛菜号』
可愛い名前ですね。
愛する菜葉なのでしょうか。
それとも菜葉を愛するでしょうか。
どちらにしても
愛しい野菜のために進むイメージですかね。
車輪は四つ
軽くて丈夫
カゴを乗せられる手押し車です。
地面が少し凸凹していても
まぁなんとなく進んでくれるので
いつも腰のあたりでトンッと押しながら進みます。
本当は両手で押すのですが、
両手両目はきゅうりに集中しているので
お暇な足腰で代用している感じですね。
まっすぐな畝に沿って
まっすぐ進めば良いだけなので
普段はこんなことは起こらないんです。
ですが…
満杯のカゴの時は重心が変わるので
私がきゅうりを見ている間に
トンっと押した『愛菜号』は
カラカラ…カラ…と50センチほど進んだあと
小さな石に車輪が乗り上げ
少し斜めになり
そのまま
ゆー ーーーーっくりと左へ傾き
畝の上へガターンと倒れてしまったんです。
「なーーーーーっ!!!」
口をあんぐり開けて叫ぶことしかできません。
やってしまったのは自分です。
救いだったのは
地面ではなくマルチの上へ倒れてくれた事です。
拾えば、まだどうにかなるでしょう。
でも…
今日は…
もう…
これ以上の大惨事が…
目の前で…
起こっています…。
「どこから…手をつければ……」
汗がポツポツと吹き出る中、
倒れた『愛菜号』
バラけたきゅうり
そして
その上にバッサバサと
落ちてきた
きゅうりのつる6本を
黙って見つめます。
止めていた洗濯バサミが
衝撃で外れたんです。
外れたら、
落ちてきます。
落ちてきたんです。
『愛菜号』の上に。
きゅうりのつるが。
6本も………っ。
もう終わると思っていたのに
とんでもない状況になってしまって
頭が回りません。
どうにかしなければと
大惨事現場を見ますが
つるから直すか
『愛菜号』を起こすか
そこでもう躓いています。
ぬぁ〜〜〜〜〜〜………ふぅ…
落ち着け娘。
つるが大事。
つるが折れちゃダメ。
つるを直そうね。
よしよしつるから直そう。
呻いた末、つるに手をかけましたが
微妙に『愛菜号』に挟み込まれています。
ふぅ〜……
よし。
『愛菜号』から起こそうね。
もう
仕方がないよ。
「仕方ない。なるようになれー」
きゅうりの重さもしっかり残る『愛菜号』を
よいしょーっと起こします。
成功です!
嬉しいです!
やっと進みました!
最初の一歩が出たので
後はとりあえず元に戻すだけです。
つるを戻して
きゅうりを拾って
今度は慎重に
『愛菜号』を押して帰ります。
「倒してしまったー」
「倒したか〜」
「倒したところに、つるがバサーって落ちてきて、もう、どうにもならなくなってた」
「あははは〜やったな〜」
娘を叱るどころか
娘の苦しんだ話でケラケラ笑う父。
父も
経験済みのようです。
「なーーーーーーーんっ!!!」
別の日は…
きゅうりを止めていた
赤い洗濯バサミ(大量)を入れたカゴを
『愛菜号』ごとひっくり返し
叫びました。
赤い洗濯バサミが
何百個もバラけてしまい
かがみ込んで拾いました。
……油断しては…いかんですね。




