多く入っていることはない
ハウスへ行く途中
朝採れの野菜がビニール袋に入れられて
年季の入った手作りの木箱の棚に並んでいます。
良心市ですね。
大体一袋100円でしょうか。
傷がついていたり
少し規格外な野菜というだけなので
食べれば普通に美味しい新鮮野菜が
とても手頃に手に入ります。
「父は、良心市しないの?」
日銭を稼ぐにはとても良い方法なのでは、と
何気なく質問した娘に
なんだか歯切れ悪く唸っている父。
「良心市はね〜昔はしてたぞ?」
していたのか
知らなかったな
「今はどうしてしてないの?」
していたのだったら
娘も手伝えるのだしすればいいのに、と
言ってみたのですが
一向に乗り気にはならない父。
娘は
野菜が売れて
小銭がチャリンチャリンと
料金ボックスの中に入っていく場面が想像できて
とてもワクワクしているというのに
父は「うーーーん」と気分が乗らないままです。
めんどくさいのかな?
そう勝手に納得して
話を終わらせようとしていましたが
父は笑いながらサラリと
良心市のことを話始めました。
話すというより
暴露に近いですね。
「良心市はな〜、盗られるからしない!」
「?!盗られる!?」
「盗られるよ〜みんな盗られてるぞ?」
「みんな盗られてる?!」
「あぁ、あそこのトマトのところは、ひっ捕まえたって言ってたな〜」
「ひっ捕まえた?!」
「100円でも、その日お金忘れてて、次まとめて入れよ〜とか思うヤツも居るけどな〜、大体それが積もり積もって払わなくなったり、当たり前になってくるみたいぞ〜?」
「当たり前に?!」
「いちいち側にも居れないから、もうしないの!
面倒だしね!忙しい!」
「なーるほど。盗られるなら、なんのために手間暇かけて袋に詰めてるのか分からなくなるね。忙しい合間に用意してくれてるのに…それはダメですね〜」
「そうそう〜多く入るなら、やっても良いけどなぁ」
「ん?多く入る?何が?」
「お金よ!いっつも出した野菜の数よりお金が少ない。たまには多く入れてくれてても良いのになぁ〜」
「あーそういうことか。そうか、絶対に少ないのか。確かに…良心市なんだから、多く入れてくれても良いのにね」
「それよ〜!多く入ってることはね、ない!」
「ふふ。良心市とは?だね」
「ホント、馬鹿らしいぞ」
最後は冗談混じりに話が終わりましたが
娘には衝撃的でしたね
そうか
そんな現実もあるのかと
でも
いろんな方がいますから
良心市での出来事は
仕方がないといえば
仕方がないのでしょうね
良心市
ん〜
どこへこの良心を向ければ良いのか
父の話を聞いた後は少し考えましたね
最初にこの言葉を考えた人は
どこに良心を向けたんでしょうね?
娘の最初の印象は
良識のある人が買いに来て
野菜とお金をきちんと交換する
このイメージでしたが
そこを外れてしまうことも
あるんですね
いや
でも
盗っちゃうのはダメですね
作るの
結構大変ですから
用意するのも
きっと大変でしょう
チャリンと入れて
それから
美味しく食べていただきたい
そうすると
うん
いいのではないでしょうか




