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初級魔法師の英雄譚  作者: 藤咲理久
第三章

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第六話(通算第三十六話) 情報共有

「それにしても、クルトさんは【初級魔法詠唱不要】に【初級魔法焦点自在】まで持ってたんだね」


「ギフト三つ持ちというだけでも珍しいのに、全て初級魔法関連なんて、本当にすごいですね」


「珍しいのは間違いないが、それでも下級以上のギフト持ちと違って、魔法関連の仕事には就けなかったがな」


 リーシャとアリーネに応えつつ、王都の街並みを歩く。

 その途中で、ふと思い出したことを話題に上げることにした。


「ギフトといえば、リーシャはギフト二つ持ちでしょ? おそらくは器具神様の」


 そういうと、リーシャは一瞬黙ってしまった。


「なんでそう思ったの?」


「前に護衛依頼で一緒したときもなんとなくそんな気はしてたが、今回で確信した。武器の性能が良すぎる。……しかも、器具神様の神威に近い力を纏ってる。……にもかかわらず、その斧は見る限り、作りも材質も普通だ。ということは、何かしらギフトの影響って考えるのが自然だろ?」


「……正解。私の二つ目のギフトは【共に歩む相棒器】だよ。まさか見破られるとはなー」


「……有名な外れギフトだな。大半の人が相棒に出会えずに人生を終えるって噂の」


 相棒となる武器に出会わないと意味のないギフトでありながら、相棒に出会うことすら無い場合が多い。つまり、それしかギフトを持っていなければ、一生をギフトなしで生きることになるという、有名な外れギフトだ。


「うん。私の場合、ギフトを授かって一年以内に出会ったから、ものすごく運が良かったよ。しかも、もう一個のギフトと相性のいい相棒と出会えたし」


「そりゃすごい幸運だったな。……そのギフト、もう一個有名な話があるよな? 共鳴ってできそうなのか?」


「あー……共鳴ね……たぶん、やろうと思えばできる。でも、怖いかな。……そりゃ、歴史上誰もやってないわけだって納得したよ。ちょっと試そうとしただけで、嫌悪感がすごかったもの。……あれをやったら、たぶん私が私じゃなくなっちゃう」


「あー……それは怖そうだな」


 リーシャの言葉を聞いて、残念に思った。

 おそらく、相棒たる武器と存在を共鳴させる人間というのは、器具神様が理想とする人の在り方の一つだろう。そして、それを成し遂げた人は歴史上まだいないとされている。……つまり、リーシャは到達者になる可能性に手をかけているのだ。


 リーシャの戦士としての実力はまだ発展途上だ。闘気の総量も基礎的な力も足りていない。体捌きなんかも完璧とは言い難い。戦闘勘については下手すると既にリルカのほうが上だ。

 しかし、自身の武器の調子の把握や手入れ、戦闘時非戦闘時を問わずその扱い方、長さや重さの把握、武器への闘気付与とその滑らかさ。そういった武器の扱いに関することについては、いずれの要素もずば抜けている。

 ギフトの性能故というところもあるだろうが、自らの武器と呼吸を合わせるという一点において、おそらくベラルマにすら匹敵……下手すると凌駕するレベルだ。


「うん、だから私はやらないかなー」


 リーシャは仲間になれるかもしれない。その考えは、やはりリーシャの言葉で否定された。

 ……まぁ、人間を辞めることになるかもしれないという恐怖は、なかなか超えられない壁だろう。仕方ない。


 そうこうしている内に、ギルドに到着。扉をくぐる。

 そして、ギルドの受付に歩み寄る。依頼が終わって帰ってきて、依頼品の納品だ。

 ちなみに、アステミリスと関わって、活動の中心が冒険者ではなくなった俺は、ギフトを隠すのをやめた。どうせ、敵にも味方にも既に俺の力は知られているだろうし、それなら実力を周知して等級を上げて冒険者としても認められたほうがいい。


「納品を頼む」


「かしこまりました」


 受付嬢に納品物を渡し、確認や手続きを頼む。……なかなか仕事が出来そうな受付嬢だ。カウンターの上は整理されているし、物の扱いも丁寧。おまけに字もきれいだ。


「にしてもリルカちゃんもセルマちゃんも登録したばかりなのにつよいねー」


「えへへーそうでしょー」

「ありがとうございます」


「今度一緒に依頼やらない?」


「いいの!?」

「そのときはよろしくおねがいします」


 後ろでは弟子ーズと"白竜の爪"が交流していた。仲がよろしくて大変結構。

 ……にしても、俺の周り女性ばっかりだな。

 しかも、軒並み美少女。こりゃ嫉妬されそうだ。


 何となく周りを見渡したが、実際、嫉妬の目を向ける男たちは結構いる。

 ……エッボは今はギルドにいないようだ。まぁ、彼も暇ではあるまい。


「お待たせいたしました」


 受付嬢から報酬を受け取り、皆で分配する。

 正直、この人数で割ったら雀の涙程度の報酬だが、いい具合に交流は出来たから今日のところはいいだろう。


「それで、クルトさん。例の情報共有の件ですけど、いつがいいですか?」


「そうだな……明日か明後日、どっちがいい?」


「それなら明後日かなー……明日はとりあえず生活に必要なもの揃えたりしたいし」


「それじゃ、明後日の昼の鐘のなる頃に、王城の城門前で」


「了解」


 報酬の分配後、"白竜の爪"のリーダーであるミルシーと予定を詰め、その日は解散した。


※※※


 そうして、ミルシーと話した予定の日。

 俺とアステミリスは"白竜の爪"を待っていた。リルカとセルマは俺の家でおもてなしの準備中だ。


 鐘が鳴る時間が近づいてきた頃……地球感覚でいうと十分前ぐらいかな? "白竜の爪"のみんながやってきた。


「クルトさん、聖女様、今日はお世話になります」


「よろしくねー」


 四人から口々に飛んでくる挨拶に、俺達も挨拶を返し、家に案内した。


 俺の家は広い。

 はっきり言って、一人で住むには広すぎる。

 普通に管理も面倒になる広さだが、なんと王城のメイドさんが当番制でハウスキーパーまでしてくれる。……アステミリスの家もそうらしい。というか、この国にある到達者用の家はどれもそうらしい。……俺にも家をくれたんだし、そりゃ、到達者全員に家を渡しているんだろうとは思ったけどさ。

 ちなみに、到達者全員の家をメイドさんに管理させているためか、王城の広さに対してメイドさんの人数は多いらしい。


 王城周囲の竜巣の城壁、その少し外側に、俺の家はある。つまり、この都市国家全体でみるとかなり中央部に近い位置だ。


 俺の家の広さに驚いている四人を招き入れる。


「師匠、言われていた準備できていますよ!」


「ありがとう、セルマ。……それじゃ、まずは食事にするか」


 セルマとリルカが用意してくれていた食卓で、皆で昼食。

 今日の料理は主に俺とセルマで作った。日本人だった頃に好きだった料理を多めに作ったが、この世界でも違和感の無いものだ。たぶん美味しく出来ているはず。


「流石クルトですね。いつも美味しいです」


 アステミリスはいつもどおり、優雅でありながらすごいスピードで食べている。……自分の時間を神秘式で早送りしたりしてないよな?


「クルトさんのご飯は久しぶりー! 美味しい!」


 リーシャも久しぶりに食べた俺の料理を楽しんでくれているようだ。


「セルマちゃんも手伝ったんだよね? 偉いね」


「ありがとうございます」


「ほんと美味いよなー」


 口々に褒めたり、笑ったり。

 和やかに食事の時間が進む。

 ミルシーが「リーシャの胃袋を掴んで引き抜くつもりですね! そうはさせません!」とか言ったり、それにリーシャが「いくら料理が美味しいからってそれだけでパーティ抜けるなんてしないよ」とかツッコんでいたり、なかなか愉快な昼食だった。


 そうして、皆が食べ終わり、一通り食器も片付けて、本題に入った。


 まずは、こちらの情報を開示。到達者周りの情報は伏せつつ、クラーデ王国を襲撃した魔族と戦ったというような話をした。


 到達者の話は誤魔化した。到達者に関する知識は一般には知られていないし、自分は世界を救う使命を帯びているなんて言っても、頭がおかしいと思われるだけだ。……神話や伝説において、到達者が神の使いとか呼ばれていることを考えると……到達者について説明をするということは「俺は世界を救う使命を帯びた神の使いなんだ!」などと言い出すことと変わらない。自分だったらそんなやつとは関わらないようにしようと思うだろう。

 ちなみに、到達者について伏せるのは他の仲間の到達者達も同じ方針らしい。まぁ、各人の信頼できる限られた人物には話すこともあるようだが、それも滅多にない。

 なお、例外的にこの国と、北のルチェアデオム神律国の上層部は、到達者について知っており、支援してくれているそうだ。


 俺達のこれまでについて、驚きつつも、納得した様子で"白竜の爪"の四人は話を聞いてくれた。


「そちらも大変だったんですね。……特に、リルカちゃんとセルマちゃんは」


「大丈夫です。私達自身はミリス様のおかげでなんにも問題がないので」

「ただ、たくさんの人に迷惑をかけちゃったから、償いはしなくちゃなんだけどね」


 リルカとセルマは悲しそうにしている。

 実のところ、未だに二人が夜中に(うな)されるのは治っていない。

 ……もしかすると、一生付き合っていくものなのかもしれない。


「それじゃあ、こっちがどういう状況だったかも話すね。……私達が、冒険者になった理由も関わってくるから、そのあたりも含めて」


 俺達の話を聞き終えたリーシャが、自分たちの状況を話し始めた。


※※※


 セファイルート真王国、王都フェイルート。

 私達は、ついにここに帰ってきた。

 ミルシーにとってもアリーネにとってもキルスにとっても……当然私にとっても、因縁の地だ。


「それじゃ、クルトさんありがとうございました」


「またなークルトー」


「おう。リーシャもミルシーも、アリーネもキルスも、またな」


「うん! また!」


 クルトさんと別れた私達は、まずは宿を取った。

 私達は明日から……この国の神殿を探る。

 最悪の場合、すぐにこの王都から逃げる必要がある。なので、逃亡に良さそうな立地の宿を選んだ。


 三年前、私達が逃げ出した場所。その入口がまだあるのかはわからない。

 その調査は夜に皆で、キルスを中心にやる。


 それまでは情報収集。……神殿の評判を聞き込んだり、貴族の動向を尋ねたり……この王都にある、私達の親が持つ別宅の様子を確認したり。


 色々探って、夕方に皆で合流した。

 それぞれ情報共有をしてわかったのは。私達の家族はいまだに()()だと言うこと。

 神殿の動きが今まで以上に露骨で、きな臭いなんてものじゃないということ。


 それから、神殿のヤバそうなことをしている奴らを断罪していた聖女様が、今日処刑される事になっていたということ。

 さらに、その処刑が乱入者によって妨害され、聖女様とその乱入者が逃亡しているということ。


 それらの情報を共有したところで、私達の部屋の扉が叩かれた。


「はい、なんでしょう?」


 扉を開けると、そこには数人の武装した兵士達が居た。


「貴様らが冒険者パーティ"白竜の爪"だな? 貴様らには元天啓の聖女、罪人アステミリス逃亡幇助の疑いが掛かっている。同行してもらおう」


「……はい?」


 まだ神殿に探りを入れていないというのに、私達には身に覚えのない追手が掛かっていた。

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