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初級魔法師の英雄譚  作者: 藤咲理久
第三章

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第一話(通算第三十一話) 竜伐王との謁見

「久しいな、アステミリス。良くぞ我が国へやってきた。……で、その男が噂の初級魔法師とやらか? そちらの二人はなんだ?」


 玉座に座る男がそういった。

 彼こそがベラルマ・ゼト・ラコニドゥム。この国の王だ。

 この国の建国の王であり、人間でありながら既に四百歳を超えるという。見た目も筋骨隆々で若々しく、とても四百歳には見えない。ちなみにマッチョではあるが、容姿は整っており、イケメンだ。それもオジサン系というよりもっと若さを感じるタイプのイケメン。……だが、それでいて獰猛さも感じる。マッチョな肉食系イケメンだ。それこそ、まさに英雄って感じの印象を受ける。


「お久しぶりですベラルマ陛下。こちらはクルト。おっしゃるとおり、噂の初級魔法師です。こちらの二人はクラーデ王国で保護した者達。二人共、一度マレディエスの力を受けており、定期的に私の浄化が必要なため連れてきました」


「クルトです。以後お見知りおきを」


「リルカです」

「セルマです」


「うむ。覚えておこう。……それにしても、マレディエス、厄介なやつだな。まぁ、やつは今封印されている。しばらくはこれ以上奴の犠牲者は増えんだろう」


「エリスのおかげですね」


「ああ。あやつにも、もう少し余裕をやれればいいのだがな」


 エリス……あいつ、元気にやってるだろうか。

 いつも俺の後ろをトテトテ付いてきていた。俺にはその頃の印象しかない。

 到達者になって、アステミリスやベラルマに仲間と認められているということは、きっと立派にやっているのだろう。


 まぁ、俺は俺で、家を追い出されてから世界最高の初級魔法師になるため頑張った。いずれ再会するときにはその実力を見せてやるとしよう。


「ひとまず、アステミリス以外の三人……いや、違うな。クルトと言ったか、お前を我が国の客人として認めよう。客人である貴様には、すぐに住める場所と客人としての身分証を手配する。そっちの二人については、アステミリスの庇護下にあるものとして扱う。この国にいる間は、アステミリスと共に住むと良い。そちらも、アステミリスの庇護下にあることを示す身分証を渡そう」


「ありがとうございます」


 ま、このままアステミリス一緒に生活、というのはおかしいしな。俺とアステミリスは別に恋人とかでもないし。

 ……うん、ここしばらく一緒にいたけど、出会ってまだ一ヶ月もないしな。

 それにまぁ、セルマには定期的に会いに行くつもりだから、顔も頻繁に合わせることになるだろう。


「ちなみに、クルトよ……お前はこの国にいる間は、どの様に過ごすつもりだ? 我らの仲間としての活動が本格的になるのはまだ少し先だが」


「そうですね……私は元々冒険者なので、冒険者として生活しようかと」


「なるほど、良いな。我が国は冒険者の数も、仕事も多いな」


 ベラルマに納得の頷きを返す。この国は国民皆兵で有名だ。兵士でない者も皆戦う力を身に付けているらしい。それなら、その力を活かす選択肢として冒険者を選ぶ者も多いだろう。……まぁ、兵士という選択肢が堅苦しいと思う者がなる場合が多いだろうが。

 ……また、周囲を魔獣のはびこる山脈で囲まれているこの国は、その仕事が多いのも頷けた。加えて、そういった魔獣と戦い、狩る人材と機会が多いことから、魔獣素材を利用した加工品がこの国の重要産業の一つとなっていたはずだ。


 ひとまずそこまで考えてから、ふと思いつき、リルカとセルマを一度見る。その後アステミリスに視線を送った。

 俺の考えを察したらしいアステミリスが頷く。

 よし、そうしよう。


「ベラルマ陛下、私だけでなく、そちらの二人も冒険者として活動させようと思います」


「ほう? ……そちらの二人は冒険者登録は?」


「していません」


「なるほど……。クルト、貴様が共に活動するのか?」


 少し、考える。俺が一緒に活動するか、二人だけで活動させるか。

 おそらく、二人だけでもすぐに四級、頑張れば三級まで上がれるだろう。

 ただ、この国は出現する魔獣が強いことでも有名だ。……また、トラブルで何日も帰れなかったりしたならば、最悪の場合、二人は呪いの源になるリスクが有る。監視役が必要だろう。


「はい、私が共に活動しようと思います」


「……なら、よい。見た感じ、その二人は将来が楽しみでもある。存分に鍛えてやれ」


「はいっ!」


 ふむ……短くはっきり返事をしたが、疑問があった。なにが「なら、よい」なんだ? 何か懸念をしていたのか?

 ……まぁ、訊ける空気では無いからスルーするが。


「鍛えてやると言えば、クルト……お前は初級魔法を威力上限を越えた威力で撃てるそうだな?」


「はい。一般に威力上限とされている威力を超えることができますね」


「それは到達権能か?」


「いえ、ただの技術ですよ」


 俺の言葉を聞いたベラルマが、口元に嬉しげな笑みを浮かべた。


「そうか、それは素晴らしいな。……すまないが、それについて我が国の魔法兵団に教えてやってくれんか? 我が国は、国民全員が初級魔法を習得しているからなその威力を上げることができるなら、戦力が大幅に増す。……もちろん報酬も支払う。どの程度の威力か次第だが、お前が納得できるだけの報酬を支払おう。どうだ?」


 なるほど。……俺個人としても初級魔法の可能性はもっと広めたいところだ。教えても構わないだろう。

 まぁ、俺が一対一で教えているセルマと違い、この国の人に長期間マンツーマンで指導したりはできない。だから、伝えられる技術にも限度はあるだろうが。


「構いませんよ。……まぁ、威力上限を超えるにはいくつかの条件と、それにかなりの訓練が必要ですが」


「そうか! ありがたい。では、お前の家を手配したら、そこへ今度、都合のいい日時を送る。魔法兵団への教導に都合の良い日を返してくれ。……威力上限を越えられるかどうかはさほど重要じゃないから気にせずともよいぞ。新たな知見を得られることが重要だ」


「わかりました」


 満足気に頷くベラルマに、こちらも頷き返した。


「ああ、それと……」


 話、終わる空気だったのに、まだ何かあるのか……そう思ったところで、この国王陛下、とんでもない事を言いだした。


「今から俺と模擬戦をやろう。お前の実力を知っておきたい」


「……はい?」


 俺の素っ頓狂な疑問の声を無視して、すぐに俺達の模擬戦の準備が開始された。

 アステミリスは諦めたような表情をしていた。


※※※


 模擬戦の場は、王城に隣接した訓練場。

 この国の城は、王の住居ではあるが、あまり「城」という感じじゃない。どちらかと言うと砦に近い。

 王城周囲には歪なカタチの壁があり、その内側に王城と各種行政機関などが集まっている。他にも、壁の内側に籠城することも考慮してか、神殿やら鍛冶設備、櫓、食料庫……その他諸々、必要なものは一通り揃っているらしい。

 この、王城を囲う歪な壁は、かつてベラルマが討伐した邪竜の「巣」を利用して作られている。

 邪竜は強大な魔獣の骨を組み合わせ、それに強力な保存の魔法をかけて「巣」としていたのだそうだ。

 そうして作られた、強固な「巣」を壁に利用しているらしい。その歪な壁が、この国の象徴なのだ。

 ……これだけの建物が入る規模の巨大な「巣」って……ホントでかかったんだな、邪竜。


 そんな歪な壁の中にある訓練場。アステミリス達だけでなく、王城詰めの兵士も見学している中、俺とベラルマが向き合っていた。


「到達権能使ってもいいぞ」


「いえ、使い勝手が悪いので使いません」


「そうか、なら俺も使わん」


 鎧姿のベラルマの威圧感はかなり凄まじい。あの鎧もよほど優れた品なのだろう。

 そして、それ以上に剣がヤバそうだ。なんだあれ? 見た目は、漆黒の刀身を持った幅広の両手剣と言った感じ。前世のフィクションでみたような大剣というほどではない。地球の博物館とかに飾ってあっても、驚きこそすれ、おかしいとまでは思わないような感じだ。装飾もほとんどなく、シンプルでわかりやすい、質実剛健といった感じの剣である。

 その剣、見た目こそシンプルだが、感じる気配がまずい。凝縮された戦意のような物に感じるが……凝縮されすぎて物理的な圧を持っているかのようだ。


 流石に相手も長年到達者として生きている人間。はっきり言って格上。最初から本気で行こう。


 合図もなく構える。

 合図は不要だ。ベラルマも俺もわかっている。


 緊張の糸が少しずつ張り詰めていく。

 少しずつ糸が張り……最大限に張り詰めた空気が──


──俺の"弾丸型(バレットタイプ)"と、ベラルマの常軌を逸した踏み込み、二つの轟音によって弾けた。

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