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時越想 〜時を越える想い〜  作者: はらぺこワンコ。
第十一章 想輝の婚約
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先読み

-Main story- 11-2

by Sigure

陛下の依頼を受けてから訪れた満月の夜。

先読みの術をつかうため、私は潤清神が住まう湖の前で儀式を取り行っていた。

婚約者候補は、瑞希と麗華の二人。

それぞれの姿絵を水面に浮かべ、湖の前で祈りを捧げていた。


『潤清神様、お教えください。皇子である想輝の妃となるのはどちらでしょうか。』


祈れば湖がパッと光を放った後、宮中の映像が映し出された。

場面は移り変わっていき、とある一室で麗華さんが赤子を抱き、それに寄り添い赤子を見つめる想輝が見えた。

互いに微笑み合い仲睦まじくしている。


どうやら妃となるのは麗華さんの方だった。

私は祈りを終えようとしたが、再び場面が移り変わり、今度は想輝がとある女性に優しい笑顔を向けている場面が写し出されていた。

女性の姿ははっきりと写し出されなかったが、想輝の溢れんばかりの愛情がその人に向けられていた。

それを最後に湖に映し出されていた映像は消えていった。


果たしてこれはどういう意味か。 

確かに妃は麗華さまだった。

ただ想輝には、別に思いを寄せる女性がいるという事になる。

でもその女性の姿ははっきりと映し出されず、誰かまでを特定することはできなかった。

この先読みは余程の事が起こらない限り外れることはない。

潤清の人を慈しむ力で映し出されるものだ。

恋愛や結婚などについてはほぼ確実だ。

素直に全てを皇帝に報告するべきか、今回の依頼である、妃はどちらかだけについて報告をするべきか。

こればかりは仕斗には相談する訳にはいかない。

先読みでみたことは、依頼人以外には他言無用という決まりがあるのだ。


それにしても私からみても羨ましいと思ってしまうぐらいの想輝の想いがその女性に注がれていた。

なぜ彼女を妃としなかったのか、疑問に思う程だった。

そして、その眼差しに映る人物が、私でなかったことが悲しくてしょうがなかった。

私は複雑な思いを抱えたまま、先読みの術を終えたのだった。


その晩…


〝「時雨、愛している。」

想輝に抱きしめられる温もりがとても心地よい。

想輝は私の顎を持ち上げキスをしようとしていた。

私はそれに応えるようにそっと目を閉じた。“


…………。


「時雨、朝だぞ‼︎」


陸の声に驚き目をあける。


(はっ、今のは夢‼︎)


きっと昨夜執り行った先読みの影響だろう。

私の願望がしっかりと表れた夢だった。


「時雨、顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」


火照った私の顔を見て、陸が熱を測ろうと私の額に手をあてる。


「熱はなさそうだな。大丈夫か?」


想輝とキスをする夢をみたからだなんで、とてもじゃないが心配してくれてる陸には言えない。


「だっ大丈夫。ちょーと布団の中に熱がこもって暑かっただけだと思う。」


思ったよりもぎこちない喋り方をしてしまった私を陸が不思議そうに見下ろしていた。


「ふーん。まぁ、体調が悪いわけじゃないならいい。さっさと飯食ってこい。昨夜の報告しに宮中へ向かうんだろ?」


そう言われ、昨夜先読みで見た光景を思い出し、胸がギュッと締め付けられる。

将来、想輝の隣にいるのはやはり私ではなかった。

その現実を思い知らされ、切なさで胸が張り裂けそうだった。

そして、どこまで陛下に報告するべきなのかを決めなければならなかった。

朝食が喉を通らないほどに、私は頭を悩ましていた。

きっとこれが想輝の事じゃなければここまで悩む事はなかったのだろう。


私は想輝が今何を考えているのか知りたかった。

もしかしたら最初から私と婚姻を結ぶ事は考えおらず、私は多くの女性の中の一人というだけで婚約者が決まるまでの遊びだったかもしれない。

どんな状況にせよ、そのうち彼の心は私ではない別の女性に向くことになる。

私はモヤモヤとした思いを抱えたまま、陛下へ結果を報告するために宮中へと向かったのだった。

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