依頼
-Main story- 11-1
by Sigure
夏も真っ盛り。
ジリジリと太陽の日差しが照り付けるなか、畑にはピチピチとした夏野菜が立派に実り、子供達は外で元気に水遊びをしていた。
クラウドと颯真はすっかり仲良くなり里の仕事を手伝ってくれていて、奈々美は私の片腕となり里を支えてくれていた。
奈々美が私の片腕となり過ごす様になってから、私がやっていた手仕事や畑仕事など、私でなくてもできることは、奈々美が里のみんなと一緒にやってくれるようになっていった。
おかげで、私は長としての仕事にしっかりと集中できるようになっていた。
そして、想輝との関係もより親密なものとなっていた。
クラウドは里で暮らしているので、必然的に接点が多くなる。
たまに様子を見に訪ねてくる想輝は、私とクラウドが仲良くしているが面白くないようで、嫉妬心から、〝二人でいるときは想輝と呼べ。様がつくと他人行儀で気に食わん。“と、私の前で拗ねる姿を見せる様になっていた。
そんなある日、宮中から使者が来た。
陛下が想輝の婚約者について話がしたいという内容だった。
私はドキリとした。
想輝が私達のことを陛下に話しをしたという事は聞いていなかった。
私たちが親しくしている事をどこかで知り、それを咎める話かもしれなかった。
陛下直々の呼び出しだ。
私に拒否権はない。
私は囚人が連行されるような思いで、宮中へと向かった。
ドキドキしながら陛下に謁見をする。
しかし、私を待っていた陛下の態度はいつものように穏やかだった。
「時雨、来てくれたか。折り入って頼みがあってな。そろそろ想輝も身を固める時だ。婚約者候補を二人ほどに絞ったのだが。本人が誰でもいいといって決めないのでな、どちらの女性が想輝の相手なのか〝先読み“でみてもらいたいのだ。」
「婚約者…ですか…。」
先読みとは、未来を断片的に見ることのできる術だった。
それは安易にしてはならないものであり、誰でもできる術ではなかった。
従者が私の元へ姿絵と名前の書かれた紙を持ってきた。
「候補はこの二人だ。時雨、お前も〝先読み“はできるだろう?頼まれてくれるか。」
陛下は私達の事を知っているのだろうか。
私達の事を知ってこの話を進めようとしているのか、それとも、知らずに婚約者をなかなか決めない想輝に贄を切らして強引に婚姻の話を進めているのか。
陛下の態度が穏やかな分、私はその心情を見抜くことができなかった。
「時雨、どうなのだ?」
考え込んでいる私に陛下が再び問うていた。
「あっ、はい。もちろん、先読みはできます。しかし、次の満月の晩までお時間をいただけますでしょうか。先読みは、いつでもできるというわけではないのです。満月の夜、潤清神の住まう湖でないと行うことはできません。」
「かまわん。最短で儀式を行い、結果を報告しなさい。では、よろしく頼んだぞ。」
「はい、受け賜りました。では失礼いたします。」
本当はこんなお願いを聞きたくはなかった。
想輝には私だけを見ていて欲しいし、他の女性と親しくなんてして欲しくなかった。
だが、私情を挟んではいけない。
これが私の役目なのだから。
そのまま私は宮中を後にすることになった。
いつもなら、ゆっくりしていけと滞在を許されていたが、今回は要件が済むなり追い出すように帰された。
やはり、陛下は私達の事を知っていて想輝に合わせない様にしたのかもしれない。
(やはり想輝との婚姻は叶わぬ願いなのか。)
私は、渡された姿絵を見る。
どちらも可愛らしく想輝に似合いそうな女性だった。
想輝はこの件について知っているのだろうか。
陛下の独断か。想輝も同意の上で進んでいる話なのか。
どちらにせよ、私の心は沈んでいた。
自分の愛する人の婚約者を決める手助けをするのだ。
私の心は切なさでどうにかなっていまいそうだった。




