祝言
-Main story- 10-4
by Sigure
共存協定も軌道に乗り落ち着いてきた頃、結婚を約束していた颯真と奈々美のためにささやかな祝言をあげることになった。
参加者は限られた人達だけだったが、皆二人を祝福するため集まってくれていた。
もちろん祝言を取り仕切るのは私で、社の前で二人の為に祝詞をあげていた。
『我々を見守る巡地守神様。御前にて導神族の奈々美とその伴侶となる颯真の婚儀を始めさせていただきます。』
式は滞りなく進んでいき、いよいよ二人が声を合わせて誓いを立てる場面へと移っていた。
「「病める時も健やかなる時も共に手を取りこの人生を歩んでいくことをここに誓います。」」
二人の想いを受け取った巡地守神は風をそよそよと吹かせて二人を祝福していた。
〝おめでとう“そんな巡地守神様の声を聞き届けた私は二人へとその想いを届ける。
『神の御前にて二人が夫婦となることを認めます。』
これで二人は正式な夫婦となった。
客席からは二人を祝福する声が上がっていた。
「姉ちゃん、にいちゃんおめでとう!僕、嬉しいよ。姉ちゃんが幸せそうで。」
弟の瑛太くんは泣きながら二人の結婚を喜んでいた。
「何泣いてるのよ。これからも一緒に暮らしていくんでしょ!ほら、笑ってちょうだい。」
奈々美は、瑛太くんの涙を拭きながら微笑んでいた。
「おめでとう。二人とも。颯真。しっかり奥さんを守るんだぞ。」
「想輝様に祝ってもらえるとは俺は幸せものです。ありがとうございます。ありがとうございます。」
颯真は想輝様から祝いの言葉をかけてもらえて、嬉しくてオウオウと泣いていた。
「颯真そんなに泣いていると、奥さんに呆れられちゃうぞ。」
っと、越志さんがすかさず茶々を入れていた。
「大丈夫ですよ。この人が涙もろいのは知っていますから。」
っと、奈々美さんは幸せそうに微笑むと颯真にハンカチを渡していた。
そんな彼らを見て、私は羨ましさを感じていた。
私もこんなふうに想輝様と祝言をあげたい。
だが、想輝様は皇子で、私は一族を守っていかなければいけない長なのだ。
それぞれに守るべきものがある二人が、そもそも婚姻を結べるかどうかも怪しかった。
(そんなことは初めからわかっていたことよね。)
二人とも無謀な恋愛だとわかっている。
きっと私達のことを諸手を挙げて祝ってくれる人などいない。
そんなことはわかっていたが、互いに相手を想う気持に嘘はつけず始めた恋だ。
でも、目の前で幸せそうな二人を見ていると、つい羨ましいと思う邪な気持ちが頭をもたげてしまう。
(想輝様はどう思っているんだろう?)
気になった私は想輝様をチラッと盗み見た。
しかし、彼の様子はいつも通りで、素直に二人を祝福しているようにみえた。
ならば私も今は余計なことを考えず、二人を素直に祝福するべき時だ。
私は邪念を追い払うと、再度、巡地守神に二人の幸せを祈ったのだった。
【おまけ話 by Souki】
颯真が祝言をあげるという連絡を受け、俺と越志も一緒に祝うために導神族の里を訪れていた。
儀式のために正装をして準備をしている時雨を見て、俺の心は浮ついていた。
(あぁ、やっぱり可愛いな。今すぐ抱きしめたい。)
そんな気持ちで彼女を眺めていると、越志が話かけてきた。
「浮かれてんな、想輝。顔が緩んでるぞ。」
越志がいつものように絡んでくる。
だが、俺は越志の前では時雨への思いを隠すのをやめていた。
「何がいけない。時雨がいるんだ。嬉しいに決まっているだろう。」
「すっかり開きなおちゃって。うっとうしがってくれないといじりがいがないじゃないか。」
「それもわかっててこの態度だ。」
越志はつまらなそうな顔をしていた。
「今回の主役は颯真と奈々美さんだ。そこは忘れるなよ越志。」
自分にも言い聞かせるように越志を諭す。
今回は祝言をあげる二人を祝いに来たのだ。
時雨に目を奪われている場合ではない。
そう思いつつも、つい俺は時雨の姿を追ってしまっていた。
「そんなこと鼻の下伸ばしてる想輝よりもちゃんとわかってますよーだ。」
珍しくまともな指摘をしてくる越志に、俺は苦笑するしかなかった。
「それにしても、颯真が俺より先に結婚するとは。くぅー羨ましい。俺にも早く可愛い奥さんができないかなぁ。」
俺は、越志に結婚願望があったという事を知り驚いた。
だが…。
「ちゃらけたお前では無理だろう。」
「あぁー自分には時雨がいるからってそういう態度なのか想輝。ひどいなぁ。俺が色々と焚き付けてやったから二人は想いが通じあったんだろ?もっと感謝してもいいんだぞ。ほら、想輝。越志ありがとう。お前のおかげだ!って言ってもいいんだぞ!」
「はいはい、ありがとな。」
「全然気持ちがこもってないぞ!」
っと適当に越志をあしらいながら、俺は祝言が始まるのを待っていたのだった。




