通じ合う想い
-Main story- 9-11
by Sigure
目を覚ますと見慣れぬ天井が目に入った。
(あれ?ここどこだっけ?)
まだ頭がぼんやりとしていた。
体は重く、節々が痛んでいた。
「目を覚ましたか。」
陸が私を覗き込んでいた。
(あぁ、そうだった。ここは魔族の地でロイールと対峙したんだっけ。それで確か陸達は…魔物に襲われていてたはずじゃ⁉︎)
ハッと重大なことを思い出し、私は跳ね起きた。
「陸‼︎無事でよかった。ごめんなさい、助けることができなくて。」
「何いってんだよ。お前が解決したんだって魔王様から聞いたぞ。ありがとな。気分はどうだ?」
陸は私の背中に枕をかい、私が少しでも楽な体制を取れるようにしてくれた。
「うん。ちょっと筋肉痛ぽい。閤央や想輝様達は無事なの?」
部屋の中には陸以外、誰もいないようだった。
閤央も魔物に囲まれていたし、私の最後の記憶が確かなら、想輝様が駆けつけてくれていたはずだった。
「ぐるぅー。」 『私なら大丈夫だ。』
ベッドの陰にいて見えなかった閤央が、ぴょんとベッドの上に飛び乗ってきた。
そして私を労るように、身体を寄せてくれていた。
「想輝や越志も心配ない。今は、魔王様と会談中だ。さてと、医師を呼んでくるか。お前、三日間も寝てたんだ。このまま目覚めないんじゃないかってヒヤヒヤしたぜ。」
そういうと陸は医師を呼びに部屋から出ていった。
「ぐるぅー」 『時雨、肝心な時にそばにいてやれなくて悪かったな。ロイールを安寧へと導いたことは賞賛に値するぞ。』
閤央に褒められ、気恥ずかしくなる。
「私がやったんじゃないの。巡地守神が手を貸してくれたから解決できたことだし。」
「それでもだ。お前の心根が主とリンクしていなければあのようなことはできなかった。それに想輝達から聞いたぞ。森で機転を効かせてお前が対応してくれたおかげで魔物達とも対峙できたと。あと、龍虎も感謝していたぞ。魔物達の正気を取り戻してくれてありがとうとな。」
私は、気になっていることを閤央に尋ねた。
「ねぇ、ゴウちゃんは母様のこと知っていたの?魔族の王女だったてこと。」
そういえば、今まで閤央に、両親の事について尋ねたことはなかった。
『あぁ、知っていた。“この娘を預かってくれ。“と潤清から頼まれていてな。私は主の命を受け陰ながら様子を見守っていた。まさかこんな展開になるとは思っていなかったがな。詳しくは、レインも交えて話をするとしよう。あやつも娘の事を色々と知りたいと思っているはずだ。』
閤央と話をしていると、なんだか廊下が騒がしくなり、部屋の扉が勢いよく開かれた。
「シグレ!目が覚めたのか。」
入ってきたのは祖父でもある魔王レインだった。
その後から、レインと同じような年齢の女性と白衣をきた男性、想輝様、越志さん、陸と続いて入ってきた。
「あなた、レディーの部屋にノックもしないで入っちゃいけませんわ。初めましてシグレ、あなたの祖母アクアよ。意識が戻って本当によかった。」
アクアの笑う笑顔は、どことなく母様に似ている気がした。
「お二人とも嬉しいのはわかりますが、そこを開けてください。診察ができません。」
白衣をきた男性は、おそらく医師なのだろう。
二人の後ろから声をかけていた。
「あぁ、すまなかった。」
レインは、医師が私を診れるようにと場所を譲っていた。
医師が、私の容態を確認していく。
「脈は正常で、熱もなさそうですね。こっち見てください。うんうん。大丈夫だね。あとは体力が早く回復するように滋養に富む食事をとるといいですよ。」
「そうね。急いで料理長に伝えに行かなきゃ。」
医師の言葉を受け、アクアがパタパタと部屋から出ていった。
アクアを視線で追っていたら、出入り口付近にいた想輝様と視線がかち合った。
「無事でよかった。」
っと、想輝様が微笑みかけてくれた。
その笑みにドキッとしてしまい、心臓の鼓動が増していく。
そんな私の様子を見たレインは、
「おや。我々はお邪魔なようだな。想輝殿、我々は席を外す。ゆっくり時雨と話すといい。」
っと、医師と陸達、そして閤央さえも連れ出し、部屋の中は、私と想輝様と二人きりの状態になった。
「あの、想輝様、あり…」
〝ありがとうございます。“
そういう前に私は想輝様に抱きしめられていた。
「本当に無事でよかった。ロイールに連れ去られた時、気が気じゃなかった。やっと時雨を見つけたとおもったら、ボロボロの状態で。心臓が止まる思いだったよ。」
私を抱きしめる腕に力がこもる。
「なかなか意識が戻らないし、もう君とこうして話すことができなくなるかもしれないと思ったら、恐ろしかった。…時雨、俺は君が好きだ。こんな時に言うことじゃないとはわかってる。だが、君を失いかけて気づいたんだ。いつまでもモタモタして伝えないと後悔するって。」
私の心臓は高鳴っていた。
(想輝様が私を好き……。)
駆けつけてくれた想輝様に抱きしめられたあの時、私も自分の気持ちがはっきりとわかってしまった。
ならば私も後悔しないように伝えよう。
私も想輝様の背にそっと手を回す。
「私も、想輝様が好きです。」
「時雨…。」
想輝様が腕を緩め私を見つめていた。
視線が絡み合う。
想輝様の顔が近づき、私はそっと目を閉じた。
そして私の唇に暖かく柔らかな感触がふれた。
優しく触れるだけの口付け。
それだけだったが、私の心は幸せに満ちていた。
気恥ずかしさを感じながら、おでことおでこをくっつけ互いに微笑みあう。
気持ちが通じた喜び。
母様も父様もこんな気持ちを抱いていたんだろうか。
人を愛する喜びを。
一方で、妙子やロイールが苦しんでいたのは事実だ。
きっと父と母が妙子やロイールを嫌ったり、蔑ろにしたわけではないのだろう。
二人はきっと色々と悩んだはずだ。
でも、抗いきれない情熱を、愛を、別の人に見つけてしまった。
ただそれだけ。
私はこの想いを大切にしようと思っていた。
この先きっと順風満帆にいく二人ではないはずだ。
何が起こってもこの想いを負の感情に流されることなどしたくない。
ずっと暖かなこの想いを胸に留めていきたい。
私を包み込む温もりは優しくて暖かく、そして、愛しさに満ちていた。
龍虎:魔族の地を見守る金の神・富栄神の聖獣




