救済
-Main story- 9-9
by Sigure
気がつくと私は宙に浮いていた。
先ほどまで感じていた恐怖はなくなり、とてつもなく大きな愛に包まれている感覚に満たされていた。
あたりは今まで見たこともない無数の呪札が飛び回っていた。
私は私の身体で、私でない誰かが繰り広げる光景をただ眺めていた。
「……君の望む平和な土地を、平和な時を守っていこう。」
その言葉を最後に、呪札に包まれたロイールは光となって、魔族の地へと広がっていった。
ロイを包んだ光は彼の憎しみを浄化し、愛へと姿を変えた。
そして、その愛は彼が振りまいた呪詛を浄化し、再びこの地に平穏を取り戻すものとなり、澱んだ空気は浄化され、清々しいものへと変わっていった。
役目を終えた呪札は私を下ろすと、私から放たれていた光と共に消えていった。
とても不思議な経験だった。
私の中に神が降りてくるとは思ってもいなかった。
満身創痍の私は、その場にヘニャヘニャと座り込み動けず、気を失い倒れ込んだ人達を呆然とながめている事しかできなかった。
そんな私の前に一部始終を見ていたレインがやってきてひざまづいていた。
「シグレ、すまなかった。怖い思いをさせてしまったな。本当にアマネにそっくりだな。」
レインの目から涙が溢れていた。
彼の涙を見て私は確信を持った。
目の前にいる人物が母様の父親であり、私の祖父だということを。
「私がしっかりとアマネの言葉を受け入れるだけの器があればこのような事にはならなかったはずだ。頼りない爺さんで悪かった。ずっと顔を見たかったのだ時雨。時折、アマネから手紙は届いていてな、お前の様子は知っていたのだ。アマネの思った通りの子に育ったな。5年もの間、1人で大変だっただろう。」
レインは私の手をとると、懺悔するかのように泣き続けていた。
その後どれくらいの時間が経ったのだろう。
私とレインは、その場から動くことができす、ただへたり込んでいるだけだった。
すると遠くから私を探し叫ぶ声が聞こえてきた。
「時雨どこにいる。時雨!いったいどうなっているんだ。」
その声をきき、レインが私の方をみる。
「行ってやれ、彼の所に。あやつは誠実で信頼できるいい男だな。大切にするんだぞ、シグレ。」
私は頷き、立ち上がると声のする方へとゆっくりと歩きだす。
疲れ果て声も出すことはできなかった。
ただ彼の顔が見たい、その想いが私の足を前へと動かしていた。
気力を振り絞り声のする方へと向かっていく。
すると、廊下の向こうから私を見つけた想輝様が駆けつけてくれた。
「時雨、大丈夫だったか。」
ガッチリと私は彼の腕に抱かれていた。
暖かな温もりが愛おしく私も彼の背中に手を回す。
(あぁ、私はこの人を愛している。この腕の温もりが私を安心させてくれる。)
私は彼の胸に顔を埋め、そっと目を閉じたのだった。




