降臨
-Main story- 9-8
by Rain
魔王という立場は、王の証である腕輪との契約で成り立っている。
腕輪は身につける者に力を与えるが、契約を反故にすると、その者に死を与え、その者が束ねる民達にも呪いがかかり苦しみを与える。
そして、定められた手順に従わずに王が変われば、その地には災いが降りかかり国が滅亡する。
そんな決まりがある中で、私の孫娘であるシグレが王座を奪うための脅迫材料にされていた。
「レイン王座を譲れ。さもないとこの娘は殺すぞ。」
ロイは、余裕たっぷりで私のことを脅してきた。
「好きにすればいいと言ったら?」
そんな事には動じないと、私は強気な態度でロイと対峙していた。
しかし、内面では王の座などどうでも良かった。
今すぐ孫娘を助けたい。
しかし、ここで王座を譲ってしまえば、ロイは戦争を起こしアマネが望んだ平和を壊してしまうだろう。
そんな葛藤が私の中で渦巻いていた。
「そうか、ならお前の前でこの娘を可愛がってやろう。嫌がり泣き叫ぶ姿をそこでみてるがいい。」
そういうなり、ロイはシグレの服を短剣で割き、あらわになった彼女の肌に手を滑らせていた。
シグレはこれから起こることに恐怖を感じ暴れていた。
「嫌だやめて。触らないで。」
しかし、拘束され、抵抗する術もないシグレはただ泣き叫ぶ事しかできず、どれだけ彼女が暴れて声をあげようとも、ロイはその手を止めようとはしなかった。
そのロイの非道な行為に耐えきれず、私はロイに王座を譲る事を決めた時、あれだけ泣き叫んでいたシグレが急に大人しくなった。
そして、シグレの雰囲気や声色がガラリと変わり何やら呟き始めていた。
『私の中に眠りしちからよ。目覚めよ。今我を護り我を生かす為に今この時、禁術を解放する。木神、火神、金神、水神。今ここに集いたまへ。』
そう告げたシグレの周りに、四つの光の球が現れた。
『四神の力を得た私は、最高神巡地守神となる。』
すると、その四つの光の球が時雨の体の中に入っていった。
「何をほざいている。導神族の力などここでは使えぬぞ。悪あがきというものだ。」
ロイが言い終わるや否や、シグレの身体が光り、無数の札が飛び出し、宙に渦を巻くように飛んでいた。
「なんだ何が起きている。」
ロイが驚き拘束していたシグレから手を離した。
それがチャンスだというように札がシグレをさらい彼女を宙へと押し上げる。
そして、ロイを見下ろすように再びシグレが話し出す。
『愛しさのあまり自我を失った、可哀想な其方をその憎しみの渦から解放しよう。人は憎みたくて人を憎むものではない。行き場のない想いが気を触れさせ、己を悪き者へと変えるのだ。我は其方に愛を送ろう。再びその胸に安らぎがおとづれ、其方の望む未来が手に入る。』
そう言い終えると、ロイめがけ札が飛んでいき、彼の身体は札に覆われてしまった。
「なんだ!そこにいるのは誰だ。⁉︎ もしかして、アマネ?アマネなのか⁉︎」
あの中で何が起こっているのだろうか、彼は幻覚でも見せられているのだろうか。
私は、札に覆われたロイの姿を茫然と眺めることしかできなかった。
「あぁ、アマネ。やっと帰ってきてくれた。私が間違っていた。人間の地などどうでもいいのだ。君が居てくれるだけで私は幸せなのだ。アマネ、これから私達はずっと一緒だ。共に幸せに暮らそう。そして共にこの地を守って行こう。君の望む平和な地を、平和な時を守っていこう。」
その言葉と共に札に包まれたロイールの身体はキラキラとした光となり、役目を終えたであろう札と共に魔族の地一帯へと広がっていった。




