憎しみに囚われた男
Introduction 9-7
ベッドの上で、ロイは憎しみの渦に囚われていた。
(アマネはなぜ別の男を選んだのだ。
憎い。にくい、にくい!にくい‼︎
共にこの地を繁栄させていこうと語り合ったではないか。
何が私では駄目だったというのだ。
私が神の子孫に負けるなんて。
おかしい。おかしいだろ‼︎
私は貴方と共に過ごす事を夢みて、この地位まで登り積めたのだ。
ただ貴方に愛されたかっただけなんだ。)
ロイの強い思いは、愛から憎しみへと形をかえ、彼を悪に染めていった。
(導神族の女を洗脳までして手なづけたというのに。
アマネまで殺め、その上、小娘さえも始末できずにいる。
導神族といえどその程度なのに。
なのに、なのに‼︎
何故アマネは、あやつを選んだのだ‼︎)
彼は長年、同じ問答をくり返し続け、憎しみという沼から抜け出せずにいた。
どうしたらこの沼から抜け出せるのか、もがき苦しんでいたのだ。
(あの男の娘を殺せば俺は救われるのか。
しかし、それはアマネの子を殺すことになる。
そんな事が俺にできるのか。
いや、できるできないじゃない。やるしかない。
あの男の血が混ざっている以上生かしておいてはいけない。
そして、あの男が守り続けてきた導神族も、神にすがることしか出来ない人間達も殺さなければ俺の憎しみは晴れない。
そして、私がやはり1番だったのだと、あの世のアマネに後悔させてやる。
私を捨て、他の男を選んだことを後悔しながら眺めているといいんだ‼︎)
「ロイさま、大丈夫ですか。」
彼の腕の中には猫撫で声で囁くイロハがいた。
ロイはイロハの好意を逆手に取り、彼女を計画を成功させるためのコマとして扱っていた。
「あぁ、大丈夫だ。何故そんな事を聞く。」
「苦しそうな表情をしていたので、お身体の調子でも悪いのかと。」
(本当に察しの悪い女だ。
アマネなら、私の心情を察しそっと心に寄り添ってくれていたのに。)
再びロイの憎しみが増幅する。
「あぁ…ロイさま…。」
彼は沸き続ける憎しみをぶつけるようにイロハを鳴せ続けてきた。
しかし、彼の心が満たされることは一度としてなかった。
彼は心の底では気づいていた。
アマネがいれば人間の土地、地位や名誉など、何の価値もなくどうでもいいものだと。
しかし、憎しみに染まり切っていた彼は、負の感情なしに生きることができなくなってしまっていた。
彼の心を満たし救うことができるのは、今は亡きアマネ。
ただ一人だけなのだ。




