魔王城
-Main story- 9-3
ついに、魔族への地へ向かう日が訪れた。
この島は、魔族と人間族を隔てるように大きな川が流れている。
川の途中には、互いの領土を行き来するための橋が一本だけあり、そこには安全を確保するための検閲場が設けられていた。
人間族側には、神ノ護帝国の優れた兵士が配置され、魔族側にも、魔王が認めた優秀な人材が警備に当たっていた。
私達はイロハさん先導で魔族の地へと足を踏み入れていた。
そこには馬車が準備されており、それに乗って魔王城へと向かうようだった。
魔王城までは距離があるらしいが、城まで続く道は綺麗に舗装されており、馬車は軽快に走っていく。
道中、何匹かの魔物と遭遇したがその都度対処していくことができ、大事にはならなかった。
城が近づくにつれ、田や畑は少なくなり、道の両サイドには店が並ぶようになっていった。
しかし、営業している店は数えるほどしかなく、イロハさん曰く、魔物が暴れ回るため、商売が成り立たず、店を閉めてい者がほどんどらしい。
パッと見た感じ町の中に魔物がうろついている様子は伺えないが、魔物は夜行性のものが多く、昼間は比較的安全なのだそうだ。
そんなこんなで、馬車に揺られ、私達は魔王城へと辿り着いた。
イロハさんに案内され、長く続く廊下を歩いていくと、一際華やかな部屋へと案内された。
そこには赤い絨毯が敷かれており、その先には、この国の王が王座に座って私たちを待っていた。
「よく来たな、ソウキ殿。シグレ殿。それに共の者達よ。初目にかかる。我はこの地を治める魔王レインだ。」
重厚な声が室内に響く。
「して、ソウキ殿は、何用で我が元にわざわざ訪ねにきたのだ。文には話を伺いたく謁見を望むと書いてあったが。」
レインは威圧感たっぷりに、王座から想輝様を見下ろしていた。
そんな態度に怯むことなく、想輝様は皇子らしく堂々とした態度でレインと向かい合っていた。
「我々人間の地に狂瘴草が持ち込まれました。それにより、一部の人間が魔人化し、魔物まで出現する騒ぎとなりました。また、その騒ぎが起こる前から、魔物の動きが活発になっていると報告を受けていまして、何か関係性があるのではないかと思い話を伺いたくやってきました。」
レインは、自分に対して怯むことのない想輝様の態度に感心しているようだった。
次にレインは私へと視線を移した。
「導神族の長シグレ殿。イロハから話は聞いているだろう。貴殿には、祠の様子を見に行ってもらいたいのだ。管理をしていた王妃が体調を崩していてな、しばらく放置した状態になっているのだ。王妃が寝込む様になった頃から、魔物が活発になり始めている。だから、原因はそこにあるんじゃないかと我は考えている。」
私に語りかけるレインの口調は友好的で優しく、想輝様の時とは違っていた。
「イロハ、シグレ殿を部屋に案内しろ。シグレ殿、今日は部屋で休み明日、様子をみにいってもらいたい。祠までは別のものが案内するよう手筈を整えてある。」
「お心遣いありがとうございます。導神族の役目を全うすべく、祠の様子を見に行ってまいります。」
服の裾を持ち上げ礼をする。
「頼もしい言葉だな。よろしく頼む。」
レインは視線を再び想輝様に戻すと、先ほどの様に威圧的な態度で話を進めていく。
「ソウキ殿、貴殿は人間側のトップとして議論ができるという解釈でいいのだな。」
「はい。その様な解釈で構いません。」
「では、貴殿とは場所を移して、トップ同士でゆっくり話をするとしよう。」
っと、レインは想輝様を連れ別室へと移動していき、そして、私と陸は用意された客室へと案内された。
私たちに用意されていた部屋には、簡単な料理ができそうなキッチンにお風呂、トイレがあり、共有スペースを挟みベットルームが左右に分けられていた。
「立派だなぁ。」
陸は客室を見渡していた。
「なんで魔王は俺たちには友好的な態度をとっていたんだ?想輝と態度が全然違ったよな。」
私もそれは気になっていた。
レインは私を通して別の誰かを見ているように感じていた。
「まぁ、好意的に受け入れられているようだし、今日はお言葉に甘えてゆっくりしましょう。」
「そうだな。遊びに来たわけじゃないし、外には魔物がいる。土地勘のない俺たちが歩きまわるにはちょっと都合が悪いな。」
陸はソファに腰を下ろし伸びをしていた。
「それにしても、ゴウちゃんはどこまで行ったんだろう。」
窓の外を眺めるがそこには鬱蒼と覆い茂った森しか見えなかった。
聖獣の閤央でも、結界を越えて魔族側へと入り込むことはできず、我々とおなじように検閲場を通り魔族の地へと渡っていた。
閤央は魔人に悟られないようにいくといい、ウサギに変化し私の荷物の中に紛れ隠れていた。
そして、我々が馬車に乗り込む隙を見て、閤央は荷物から抜け出すと、今度は鷹の姿で何処かへ飛んで行ってしまったのだ。
「閤央の事は心配ないだろう。あいつは聖獣だしな。」
陸はすでにソファに横になりくつろいでいた。
しかし、いくら待っていても閤央が戻る気配はなく、朝になっても私達の所へ戻ってくることはなかった。
何事もなければいいと心配しながらも、私と陸は祠へと向かう為、待ち合わせ場所の玄関ホールへと向かったのだった。




