時雨の戦略
8-3 -Sigure side-
私は、叔母から出されたお茶を口に含んだ。
独特の香りと苦味が口の中いっぱいに広がっていた。
「えぇ、確かに苦味が強いですね。どんな種類の茶葉なのですか?」
そう言った途端、私の心臓が激しく脈打った。
身体中が沸騰した様に熱いく、胸が苦しくなる。
苦しみに耐えながら、私は必死に頭を働かしていた。
(二人を助けなきゃ。)
私は妙子に気づかれないように胸元から呪札を取り出した。
想輝様の怒った声が聞こえている。
私は近くにいた想輝様に手を伸ばしそっと呪札を貼り付け、心配して身体を支えてくれていた陸にも呪札を貼り付けた。
呪札には、お茶の効能を代わりに吸い取り身代わりになるよう念じてあった。
妙子が愉快そうに話していたが、彼女の思う様にはさせない。
一か八かの賭けだった。
〝聖獣の耳“
閤央と私が念を通して会話ができるなら、私の念が二人にも届くと思ったのだ。
私は二人へ念をおくる。
(二人とも呪札を身代わりにさせたから身体に影響は出ないはず。二人はこのまま薬にやられたふりをして、このまま叔母に語らせて何を企んでいるにか聞き出しましょう。)
私は、様子を伺いながらタイミングを測っていた。
しかし、陸が苦しみだし、想輝様まで倒れ込んでしまった。
呪札が効いていなかったのか、それとも念が届いて二人とも私の作戦に乗ってくれているのかどちらかわからなかった。
でも、今ここで取り乱してはいけない。
逆転のチャンスはきっとくるはずだ。
妙子が私の髪を掴み引っ張りあげた。
妙子の顔は煌々としており、満ち足りた表情を浮かべていた。
私は徐々に感情の制御ができなくなってきた。
妙子の言葉に湧き上がる怒り、そして息もできないほどの痛みが胸を貫いた。
「……力を持っているとか持たないとかそんなの関係ないの‼︎」
両親の無念を胸に抱き、きっと妙子を睨みつけるが、妙子は動じていない様だった。
仕上げだとパチンと手を叩く妙子の後ろに、剣を構える想輝様の姿が見えた。
やはり二人には私の念が届いていたようだ。
ならば今がチャンスだ。
「私をみくびるな。私は導神族の長だ。時義と雨音の血を引く娘だ!」
私は妙子の手を振り払い、剣を構えた想輝様の方へと突き飛ばすした。
剣に貫かれた妙子は、術は解けないと息も絶え絶えにつぶやいていたが、私には全てが見えるようになっていた。
「あなたもいっていたけど私は雨音の血を引いているのよ。あなたが私に狂瘴草のお茶を飲ませてくれたおかげで、廉時の姿もバッチリ見える様になったわよ。」
私は廉時の息の根を止めるため、陸が投げた剣を受け取ると、取り苦しみに耐えながら必死に走った。
驚き抵抗することもできなかった廉時は、私の剣に貫かれそのまま死んでいった。
廉時が死んだことにより、術は解け、ありのままの景色がそこには広がっていた。
びっしりと生える狂瘴草が黒い煙をあげモクモクと燃えていた。
炎に巻かれる前に私達は急いで屋敷から脱出した。
閤央は私を通じて成り行きを見守っていたようで、狼鷲と共に屋敷の周りに結界を張り、煙が村に広がらないようにしてくれていた。
私は複雑な思いを抱えながら、燃えていく屋敷を眺めていたのだった。




